第14話:月下の魔女狩り
「は~い、マシュマロ焼け待ちたよ~♪」
「ありがとう、アネットさん♪」
「ココアもできましたわ~♪」
「ヴィクトリアさんも、どうもっす」
「いや~~~♪ 山でお坊ちゃまとキャンプ、最高だね~♪」
「クーネさん、コーヒーで出来あがってやがる!」
「マミーラのエジプト風カレーもそろそろできますよ~♪」
モンスター娘メイド達と山でキャンプに興じる俺。
本来の目的は、雲取山で起きている宇宙人による誘拐事件の調査だ。
しかし、メイド達は浮かれていた。
いや、俺も楽しいけどね? 名目上は仕事だよね?
テント村には他にもヒーローが来てるんだが、知り合いとかいたら引かれないかと言う俺の気持ちにはお構いなしに俺の世話を焼いてくれる。
「メイドだ、キャンプ場にメイドがいる!」
「馬鹿、あれは人外メイドだぞ! 近づくな!」
「おい、何か少年が囲まれてるが助けなくて良いのか?」
「待て、近頃噂になっているモンスター娘使いの少年かも知れんぞ?」
いや、何か同業者っぽいお兄さんやお姉さんがヒソヒソ話してる。
大丈夫ですよ、俺達もヒーローですからと言いたい。
「あら嫌ですわお坊ちゃま、外野の声はお気になさらず♪」
「そうですよ~~♪ 私らがお坊ちゃまの一番の味方なんですから♪」
「私達、桃太郎のお共並みに忠実で勇敢でちゅよ♪」
「ピラミッドよりも固い絆で結ばれてますから~♪」
「うん、わかってるし皆の事は頼りにしてるから♪」
頑張らねば、俺が彼女達を制御しないとヒーローさん達が危ない。
米軍放出品の大型テントの前でカレー鍋を囲み食事を取る俺達。
「しかし、全然一般人がいなくないかこのキャンプ場?」
「ああ、もうヒーローの陣地でちゅね。 このテント村」
「我々も狙っておりますが、UFO狩りですわね」
「UFOは宇宙技術に素材の塊、まるごと拾えれば億は固いですよ♪」
「でも、何だかんだで買い取りの時に値引かれちゃいますよね」
「無傷なら億、損壊度合いで引かれて破片で一万円ほどに」
「ああ、あれこれ言って安く買い叩かれるのか」
稼いでも儲からない税制度は駄目だな。
そして俺たちもだが一攫千金狙いのヒーロー達による、UFO狩りか。
俺は夜空の下でカレーを食いつつ、世知辛さを感じた。
食べ終わり片付けると、山小屋の方から友達が出てきた。
「晴間君じゃないか、こんばんわ♪」
「こんばんわ、委員長」
青いダウンジャケットや白いアウトドアパンツ姿の金田君だった。
メイド達も彼に一礼する。
「そちらはお家の方かな?」
「そ、俺のチームのモンスターメイドコマンドーズだ♪」
「そうか、お互い頑張ろう♪ 御子神さんは、三峰神社の方で修行中らしい」
「ああ、そっちもな♪ そっか、まあ巫女さんならそうだろうな」
金田君は山小屋へと戻って行った。
「真面目そうな人でちたね?」
「気配が何か違いましたね、宇宙人?」
「お坊ちゃまに立派なお友達が出来て嬉しい限りですわ♪」
「男子なら、外敵判定しなくて良いですね♪」
「いや外敵って、変な事考えないでくれよ?」
武も金田君も御子神さんも、良い奴だ。
俺のような微妙な奴にも、普通に友達付き合いしてくれるんだから大事にせねば。
八時を過ぎると、ヒーローの皆さん達が動き出す。
「さて、私達も行きましょうかね♪」
クーネさんがニヤリと、目を複数出して笑う。
「月は満月、絶好調でちゅ!」
アネットさんは、満月でテンションが上がっていた。
「私も力が漲りますわ♪」
ヴィクトリアさん、メイド服が筋肉でパンパンです。
「夜は魔族の時間です~~~♪」
マミーラさんも手首の包帯が蛇みたいに蠢く。
「うん、何か俺も臍の下が温かい? うおっ、ベルトが出てきた!」
仲間達とリンクしているからか、本格的に魔族に覚醒しつつあるのか?
普段は体内に隠している変身ベルトが勝手に出現した。
「よし、モンスターメイドコマンドーズ・ゴー!」
「「イエス、マイロ~~~ドッ♪」
俺達は一斉に変身し、キャンプ場を後にする。
赤い狼怪人、ピンクの蜘蛛怪人、金の吸血蝙蝠怪人にファラオ風ミイラ怪人。
四人の怪人メイドを引き連れた俺は山道を駆ける。
「ちいっ! 別の獲物、ハーベストの魔女の臭いでちゅ!」
「あらら~~♪ 奴らもUFO狩りかな?」
「他の所では、クラッカーの怪人達とヒーローの皆様が交戦されてますわ!」
「悪の組織も退治しちゃいましょ~~♪」
「良し、まずは怨敵ハーベストの魔女から潰しに行くぞ!」
「「ラジャ~~~ッ♪」」
川苔山方面に向かっていた俺達だが、ブラッディウルフの先導に従い方向転換。
三峰神社のある和名倉山の方へ向かう。
一攫千金は諦めて普通に悪を退治しよう。
草木を掻き分け進むと、日本だと言うのに木々の上からゴブリン達が襲って来た!
「雑魚モンスターがなめんな!」
クーネさんが変身したアルケニーが、口から糸球を吐きまくり撃ち落とす。
紫色の毒の糸球に巻き付かれたゴブリン達は地上に落ちると同時に溶けて消えた。
「私の歌を聞きなさい!」
ヴィクトリアさんが変身したゴールデンヴァンパイアが超音波で隠れていたゴブリン達の動きを止める。
「森は狼の縄張りでちゅ~~~っ!」
アネットさんことブラッディウルフが、鋭い爪で動きの止まったゴブリン達を切り裂いて行く。
「魔界の悪者は、同じく魔界のヒーローが退治ですよ~♪」
マミーラさんこと、プリンセスマミーのくねくねとした不思議な踊りを見たゴブリン達が混乱する。
「よし、マカイザーショット!」
マカイザーに変身した俺が、ベルトのバックルから火炎弾を発射して仕留める。
敵の戦闘員らしきゴブリン達は片づけた。
「キ~~~~~ッ! 良くも私の手下達をやってくれたなマカイザー!」
「当たり前だ、お前らハーベストに一切の容赦はしねえ!」
悪党に手加減したら一般の人達が犠牲になる、そんなのはもう御免だ。
現れた魔女は衣装は紫のローブと帽子、武器は杖と魔導書。
緑の肌にとがった耳と伸びた鼻、ゴブリンの同族か?
「我が名はゴブリーナ、忌々しい魔族共め覚悟しな!」
「覚悟するのはお前の方だ! 皆行くぞ!」
ボス怪人であるゴブリーナとの対決が始まる。
「さあ皆、マイロードとあの魔女の周囲に結界を張るよ♪」
「ち、大将同士の一騎打ちなら邪魔できないでちゅね!」
「内助の功をいたしましょう、あの程度ならお一人で勝てます」
「あんなのと二人きりにさせたくはないですけど、我慢します~~!」
メイド達が四方に離れて俺とゴブリーナの周りにバリヤーを張る。
周囲の環境に被害を出さない配慮技、魔界フィールドだ。
「おのれ舐め腐りおって、ゴブリンサンダー!」
「あぶね! マカイザーパンチ!」
「シールドカット!」
タイマンをする事になった俺、相手の電撃魔法を回避しパンチを打つ。
だが、相手のバリヤーとこちらのパンチが相殺される。
「くそ! こっちの魔法が割れるとは何て魔力だい!」
「これでも一応魔王候補なんでな、人間界と魔界の平和の邪魔はさせん!」
「何が平和だい、傲慢な王族め! くたばっちまいな!」
ブチぎれた魔女が、トロールのように巨大化する。
「傲慢上等、俺は人と魔族が楽しく暮らせる世界を掴む!」
相手の剛腕パンチをガードしつつ敢えて一発は受ける。
衝撃は結構来るが、踏ん張って耐えられないほどじゃない。
月の光を吸い込み体にチャージし、円で囲まれた山羊の頭の紋章を描く。
「げげっ! その紋章はもしや七罪王家の一つ、色欲王の血統か!」
「うるせえ! 断罪の一撃、エンブレムスマッシュ!」
俺はパンチと共に、紋章をゴブリーナのボディに叩きつける。
「うぎゃ~~~~っ!」
叩き付けられた紋章が燃え上がり、ゴブリーナは黒い炎に包まれて消滅した。
「やべえ、魔力が切れた!」
変身が解け、倒れかけた所でメイド達が駆けつけて受け止めてくれた。
「お疲れ様でしたお坊ちゃま♪」
「お見事でしたわ、流石は我らが王子殿下♪」
「さあさあ、テントに帰っておやすみしまちゅよ♪」
「お世話いたします~♪」
「ああ、ありがとう皆」
魔女を倒した俺達は、テントに帰りキャンプをしてから帰ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます