第12話:部活で模擬戦

 アネットさんとスーパーでの買い物中、同級生の御子神さんに出会った俺。

 タイムセールス前の肉売り場で、アネットさんと御子神さんが睨み合う。


「あ、御子神さんも買い物?」

「こんばんわ、そちらは晴間君のお家の方?」

「そうだよ、俺のパートナーのアネットさん」

「初めまして、勇太様がお世話になっております♪」

「いや、アネットさんは俺の同級生にメンチ切らないで!」

「もう、勇太様ったら♪ 買い物は真剣勝負なんですよ♪」

 「ええ、そろそろ値引きシールが張られる時間帯だから。 買い物は戦争なの!」


 御子神さんもアネットさんも、やる気だ。

 鐘がなり、値引きシールが張られてセールが始まる。

 すると、他のお客さんも修羅となって肉の特売に突撃し出した。


 激しい争奪戦の果てにアネットさんも御子神さんも、特売牛肉を勝ち取っていた。


 「中々ですね」

 「そちらこそ」

 「いや、何お前やるじゃんみたいな空気!」

 「いえ、流石は勇太様のご学友ですね♪」

 「アネットさんも、面白い人ですね」

 「はいはい、それじゃあ俺達はこれで!」

 「また会いましょう、アネットさん♪」


 御子神さんは、お菓子の御売り場へと去って行った。


 「お坊ちゃま~♪ アネット、やりまちた~~~♪」

 「うん、良い子良い子♪」

 「えへへ~♪ これで今夜は楽しいすき焼きパーティーでちゅよ~♪」

 「うん、それはマジで楽しみだよ」


 上機嫌のアネットさんと腕を組み、レジに向かう俺達。

 だが、ちょっと苦手な学友と生活圏が重なるとは思わなかったぜ。

 魔物を倒す巫女さんと魔族のヒーローは戦いでの相性が悪い。

 スーパーを出て屋敷に帰り、皆で鍋を囲みながら話をする。


 「まあ、お坊ちゃまの友達だから良いんじゃない? 私らの敵じゃないでしょ♪」

 「ええ。クーネさんのおっしゃる通りですわ♪」

 「お坊ちゃまは、我ら魔族の花婿にして未来の魔王様です~♪」

 「皆、油断大敵でちゅよ? はい、お肉どうぞ~♪」

 「ありがとう、アネットさん」

 「いえいえ、パートナーでちゅから~♪」

 

 アネットさんが俺の取り皿に肉を入れてくれる。


 「むむ~~? 今度は皆で買い物に行きましょう!」

 「マミーラさんに同意です、私達も好感度を上げませんと」

 「そうだね、私らのダーリンだとアピールしないと」

 「クーネはそんな事良いつつ、肉ばっか取るなでちゅ!」

 「お坊ちゃま、包帯みたいな白滝をどうぞ~♪」

 「お野菜もお食べ下さいませ♪」

 「アネット~♪ お肉追加して~♪」

 「クーネはストップ、鍋は私が仕切りまちゅ!」


 モンスター娘達と囲む鍋、アネットさんは鍋奉行だった。


 翌日、授業が終わり部室に行くと部員達が揃っていた。


 「やっほ~♪ イカしたメンバーを紹介するぜ~♪」

 「先輩、テンション高いです」


 花果先輩はテンションが高かった。


 「いや、七村殿! ハードル上げ過ぎだぞ!」

 「どしたん? カンナっち、緊張してる?」

 「ふう、そうだな。 我が名は足利カンナ、魔眼もちだ♪」


 右目を右手で抑えるポーズで名乗ったのは短い髪の美少女。

 活発な中二病っぽい小柄な外見の足利先輩だ。


 「おいおい二人共、新入部員が逃げたらどうするんだよ?」


 溜息を吐くのは短い髪にキリッとした目の男子だ。


 「俺は刀塚英治なたづか・えいじ、剣道部と掛け持ちだがよろしくな♪」

 「いかにも剣士な風貌ですね、先輩?」

 「いや、同い年だろ? 事情はあるみたいだが?」

 「まあ、学年は学年なんで先輩で」


 常識人枠がかけ持ちなのは、ちょっと不安だ。


 「どうも、一年C組の丸山蜜柑まるやま・みかんですよろしく」


 三人目はの丸山さんは、何と言うか落ち着いた感じだった。

 奇妙な集まりだが、全員ヒーロー免許持ちと腕は立つ様子だった。


 「顧問の先生は、古文の文野先生だけど文芸部に行っちゃてるかな?」

 「いや、先生もですか? 掛け持ち多いな!」

 「まだまだ実績が足りないからね、だから晴間君が期待の戦力だよ♪」

 「不安だけど頑張ります」


 取り敢えず一年の間はこの部に籍を置こう。

 部活の体だが、花果先輩が集めたヒーローチームって感じだな。

 RPGのパーティーとも言える。


 「ではでは、面子も揃ったし部活動を開始しま~す♪」

 「マジカルヒーロー部の活動、やっぱ事件の解決ですか?」

 「ううん、今回は模擬戦だよ♪」

 「意外と真面目だった!」


 花果先輩の発言に驚く、部室が趣味部屋みたいだったので油断していた。

 俺達は先輩が魔法で虚空から召喚したヘッドホン付きゴーグルを受け取る。


 「ヒーロー協会と私のパパの会社が作った、フルダイブシミュレーター♪」

 「いや、先輩は本当にお嬢様だたんだ?」

 「ああ、部長は本当にセブンフラワーゲームスの社長令嬢だ」

 「流石は七村殿だ、すごいぞ♪」

 「これ、お値段高めの奴ですよ?」


 皆が手に取ったVRゴーグルを見て思い思い呟く。

 全員が席に着いてからゴーグルを装着し、電脳空間へダイブする。


 気が付くと俺達は、模擬戦道場と書かれた看板の板張りの場所にいた。


 「ようこそ模擬戦道場へ♪ それじゃあゲーム感覚で楽しく練習しよう♪」


 白いドレスを纏いピンクの仮面を被った花果先輩が、審判役のようだった。


 「これ、変身できるのか?」

 「試してみないとわからない事だらけだな?」


 俺の呟きに刀塚先輩が答えてくれる。

 現実では体が動いていないが、何故か電脳世界で体は自由に動かせた。

 デジタル世界とは思えないリアルさだった。


 「できるよ~♪ 私もマジカルハナカに変身してるでしょ♪」

 「部長は審判の立ち位置ですか? 私も変身は、ってコマンドが出ました!」

 「うん、ゲームだからね♪ リアルと違ってコマンド一発で変身できるよ♪」


 ハナカ先輩の解説に従い俺達は変身した。

 コマンドを見てみたが、メイド達由来の技や武器は使用不可になっていた。


 「よし、じゃあ行こうか?」

 「んじゃ、男同士で行きますか!」


 俺は刀塚先輩が変身した白い鎧武者と向き合い、いざ勝負。

 格闘ゲームみたいに頭上にゲージと時間が浮かぶ。


 「そりゃ、二刀連牙!」

 「うおっ! ガードしても当たってるからゲージが削れるのか!」


 先輩が刀を振って飛ばして来た光の斬撃を喰らい、俺の体力ゲージが減る。


 「このまま削り切らせてもらうぞ!」

 「こっちもやられっぱなしじゃいられませんよ、マカイザーショット!」

 「ぐはっ!」


 突っ込んできた先輩にベルトから火の玉をぶっ放す!

 直撃により先輩のゲージも減ったが、勝負はここからだ。

 青白く光る刀の二刀流で斬りつけて来た先輩の斬撃を躱す。

 こっちもリアルで、メイド達から剣や銃に格闘と戦闘訓練を受けているのだ。


 「意外とやるな、こいつはどうだ! 昇降龍牙!」

 「うおっと、切り上げと切り下ろしか! マカイザーウイング!」


 蝙蝠の翼を出して飛び、相手の攻撃を避けるがそろそろ時間が切れる。


 「お返しのマカイザーキック!」

 「ぐわ~~っ!」


 上空からの必殺キックで先輩のゲージを削りきり、勝ちを得た。


 試合モードが終わったのか、ゲージも時間表示も消えた。


 「お前さん、やるな♪ 次はリアルでやろう」

 「どういたしまして、了解っす」


 俺と先輩は握手を交わしてログアウトした。

 部活動を終えて帰宅し、屋敷の地下でメイド達に出来事を話す。


 「ほうほう、つまり私らもログインすれば行けると♪」

 「セブンフラワーゲームスのVRゴーグル、お高いですわね?」


 クーネさんは興味ありげ、ヴィクトリアさんはスマホ検索で見た値段に訝しげだ。

 

 「取り敢えず、資金稼ぎでちゅね?」

 「VRでもお坊ちゃまとご一緒したいです♪」


 アネットさんとマミーラさんは買う気になったようだ。

 VR空間でも、モンスターメイドコマンドコマンドーズが活動する日も近いな。

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