第二章:ヒーローと日常編
第11話:学業と営業
「ふう、悪の組織があんなレイドバトルイベントするとはヤバいな」
先日のキョンシーパニックを思い出して溜め息をつく。
あの事件の後、屋敷で余ったもち米をついて餅にして近所に配った。
「もしかして、立川でもち米乱射したのって晴間君達なの?」
「勇太、ヒロチューブのこのMMCチャンネルってお前の所か?」
「ああ、家の公式チャンネルだ」
「君達、活動が手広いな?」
「俺も配信する側に回ってから感じたけど、ヒーローも動画配信する時代だよ」
教室でへばっていたら、武達が声をかけて来たので返事を返す。
話題は先日のキョンシーパニックの動画配信。
資金稼ぎとして俺達モンスターメイドコマンドーズも、いくつかの動画サイトにも公式チャンネルを作り配信業に手を出していた。
マミーラさんが撮影と編集の担当だ。
「そうか、僕もチャンネル登録をしよう」
「うん、私も協力するね♪」
「俺も登録するぜ♪」
「おお、皆ありがとう♪」
「俺らのチャンネルも、登録宜しくな♪」
「ああ、助け合いだよなこういう時は♪」
武や金田君、御子神さんのチャンネルに俺も登録する。
コラボ動画とかいずれはやれると良いな。
「ねえねえ、この配信どうかな♪」
「え、何か怪人達がもち米ばら撒いてる~♪」
「いや、米でキョンシー倒すってうっそ!」
「これ、晴間君だよね? 怪人と一緒ってヤバくない?」
「みこっち、イロモノ好きだよね~♪」
御子神さんが俺らから離れて行き、自分のスマホを女子達に見せて家のチャンネルを宣伝してくれた。
女子にこっちを見られて俺も相手を見るが、目をそらされる。
イロモノでも良いよ、家の動画見てPV回してくれ。
動画見て広告の品物を買ってくれれば、なお良い。
動画の広告収入も、今どきのヒーローにとっては大事なシノギだ。
社会が政治と経済で回る以上、何をするにも金が要る。
腹が減っては戦はできぬのだ。
学校の授業で、ヒーロー業界の世知辛い話とか聞かされると肝が冷える。
昼飯時になり、友人達と教室で弁当を広げる。
「勇太、重箱の中身全部餅じゃね?」
「水筒の中身は雑煮だ、我が家は暫く餅尽くしだよ」
武がハンバーグ弁当を食う手を止め、俺の弁当を見て呟く。
俺の今日の弁当が入った四段の重箱の中身はこうだ。
最上段が全部、磯辺焼き。
二段目は、トマトソースのサラダ。
三段目はカレー餅で、四段目はあんこ餅と餅が多い。
「相当、もち米買ったんだね?」
「まだ配る程伸し餅があるけど、御子神さんはいる?」
「ごめん、カロリーが怖いから遠慮するね♪」
「ですよね~~」
御子神さんの返事は納得だった。
金田君と武は呆れていた。
あんこ餅は、放課後に食おうと思った。
一般教科の合間に射撃や格闘術と実技が入る時間割をこなして放課後。
部活やら下校やらで人が少なくなった教室。
俺が残していたあんこ餅をおやつに食おうと思った所でイベントが発生した。
「失礼しま~~~す♪ 噂の魔王君、発見っ♪」
「いや、あんた誰だよ!」
何か、テンションの高い眼鏡美少女が現れた。
紫色の長い髪、表情はぐふふと酷い笑顔だ。
俺の女難除けが効かないのか、ズケズケとこちらに近づいてくる。
「初めましてだね、二年オカルトヒーロークラスの花果ちゃんでっす♪」
「ああ、同い年の先輩ですね? 魔法使いかなんかで?」
「そだよ♪ 君の防護魔法が効かないのは、こっちも魔法使ってるからさ♪」
「あの、お話なら他所で聞きますよ?」
「うん、そうしよっか♪ んじゃ、部室へ案内するよ♪」
俺は花果先輩について荷物を持て、教室を出る。
思念通話でクーネさんに、部活勧誘で帰りが遅くなると連絡する。
「今、思念魔法使った? 私もヒーローだから安心してよ」
「わかるんかい! いや、そりゃ家に帰りの時間が変わる位は連絡しますよね?」
「家のパパの会社、君の所チャンネルに広告出してるんだけど?」
「大変、失礼いたしました!」
先輩と言うだけでなく、スポンサー様の関係者だった!
いや、油断していたぜ!
きちんとコネを結ばねば、お金になる♪
「君、目がお金になってるけど正直だね?」
「はい、金は大事ですから♪」
「そこはもうちょっと、ヒーローらしくしてよね?」
「はい、改善させていただきます!」
「わかりやすいのは良いね♪ ここが部室だよ~♪」
やってきたのは、部室棟にあるプレハブ小屋の一つ。
「ようこそ、マジカルヒーロー部へ♪」
「アニメ同好会っすか? 棚のフィギュアとかDVDは?」
「何その実家に帰って来た感じ?」
「いや、実家の様な安心感がするなあ♪」
案内された室内には、ホワイトボードに机と文化部らしい物。
棚には漫画やアニメのDVDにフィギュア、落ち着く。
「TVモニターとDVDデッキにゲーム機、楽しい趣味空間ですね」
「勧誘する前から馴染んでるね、じゃあ入部届書いて♪」
「おっす、入部します♪ 特撮物もあるんですね?」
「はい、宜しく♪ 君、同類? オタ仲間だったんだね♪」
「まあ、アニメとかゲームとか好きっす」
「噂のメイドさん達から君を取ったりしないから、窓にいる動物さん達に言ってくれないかな?」
「窓、うお! もしかして、皆の使い魔か?」
窓の外には、蝙蝠に犬に蜘蛛にコブラ。
我が家のメイド達の眷属が張り付いていた。
四匹とも、どす黒いオーラを出しながら花果先輩を睨んでいる。
「皆、花果先輩はスポンサー様のお嬢様だから!」
「いや、そう営業モードされると悲しいんだけど?」
「俺は友好的に行きたいんですが、メイド達を納得させないと」
「花果ちゃん、敵じゃないなりよ~♪」
眷属達は納得したのか去って行った。
「まあ、家の部は魔法の力で学校内外のお役に立とうと言う部活なのだよ♪」
「活動自体は、良い事っすね?」
「他の部員達とは今度顔合わせするから、また来てね♪」
「はい、それでは今日は帰らせていただきます」
俺は部室から出ると、急いで帰宅した。
「「おかえりなさいませ~~~っ!」」
「ただいま、皆スポンサー様のお嬢様に粗相しちゃだめだよ?」
帰宅したらメイド達に泣きつかれた。
「いやです、人間にお坊ちゃまを取られるわけには行きませんから!」
「お坊ちゃまは私達の四人の物です!」
「他のモンスター娘にも渡さないです~~~!」
「私達も学校に行きまちゅ!」
「いや、心配ないってば♪」
なんとかモンスター娘達を宥めた。
夜はマミーラさんこと、プリンセスマミーをお供にハーベストの魔女退治。
「お菓子の家は違法建築だ!」
「ファラオ権限で破壊します! マミーケペシュをどうぞ♪」
「おう、って刀と剣が混ざった感じだな?」
剣の先の方が鎌のように曲がり、刀に似た剣を借りる。
夜の森に現れるお菓子の家の調査依に来たら、ハーベストの仕業だった。
板チョコの壁に浮かぶのは人の顔、行方不明者か!
「イ~ッヒッヒ、ショコラーヌ様のアートをわからん愚か者達は私ね!」
「わかりたくねえよ!」
敵の見た目は、チョコレート色のローブを纏った人の良さそうなお婆さん。
だがその正体は、人間をチョコレートに閉じ込めて建材にする悪党だ!
「ファラオ、人々は私が助られますので魔女の討伐を!」
「任せろ、フォームっチェンジなしで倒してやる!」
お菓子の家から犠牲者を助けるのは仲間に任せる。
「イヒヒ、妹のカラメールの仇討さあ♪」
「お門違いだよ、マカイザーラーブレード!」
「ヒャッハ~♪ チョコレートフェンシングをくらいな!」
ケペシュに太陽神の力を纏わせ光らせる。
敵は巨大なパラソルチョコの剣を生みだし突進して来た。
「踏み込みが甘いぜ、マカイザースラッシュ!」
「うぎゃ~~っ!」
敵の剣を弾き上げた勢いで袈裟斬りでぶった切る!
斜めから切り下ろされた魔女の体は燃え上がり消滅した。
お菓子の家は消え、人々が解放される。
倒れた人達はマミーが掌から光を当てて回復させていく。
「皆さん、魔界勇者マカイザーとモンスターメイドコマンドーズがお助けに上がり案した♪ ご安心下さいませ♪五」
変身を解いたマミーラさんが、人々にポストカードを配る。
地道だが口コミも利用しつつ俺達は、営業して行くのであった。
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