第10話:全員出動、キョンシーパニックを鎮圧せよ!

 「やれやれ、とんでもない日曜だったぜ」

 「誤解が解けて良かったですわ♪」


 月曜の朝、屋敷の食卓にて語らう俺達。

 話題は昨日遊びに行った、奥多摩湖での事件。

 解決したは良いが、変身後の見た目から悪い魔族と誤解されてしまいダムに所属する他のヒーロー達に包囲された。

誤解を解く為の事情を説明するのが疲れたよ。


 「しかし二人共、無事に帰って来れて良かったでちゅねえ♪」


 アネットさんが俺の隣に来て茶碗に飯を盛り付けてくれる。


 「そうですよ、私ら魔族は社会戦は弱いんですから」


 クーネさんが呆れた顔で溜息を吐く。

 うん、身を持って知ったよ。


 「魔界で倒しちゃったから、お金が入らないのも辛いですよね」


 マミーラさんは俺の戦いの結果が、無報酬に終わった事を残念がる。

 いや、貯水池汚せないとか諸々でごめん。


 「ヒーローも暮らしの為にお金は稼がないといけないでちゅからね」

 「うん、これからは稼ごう」


 ヒーローも生活費に加えて活動費など、お金はかかる。

 企業ヒーローとか公務員ヒーローは、天引きの月給で変則労働らしい。

 芸能界やスポーツしてるヒーローは稼いでるっぽい。


 家の事業形態は自営業のヒーローチーム。

俺の加入前までは、悪の組織を相手に戦う他に企業から新兵器のテストを請け負って稼いでいたらしい。

 これからは、ちょくちょく冒険者ギルドならぬヒーロー協会で依頼を探して受けるかな?


 いつも通りの支度で学校へ行こうとしたら、胸ポケットのスマホが鳴り響いた。

相手は友人の武。

 スピーカーにして、仲間達にも聞かせる。


 「勇太、今日は予定変更で免許なしは休校でヒーロー免許持ちは現場実習だ!」

 「武、マジか!」

 「マジだ、俺も所属チームの奴らと出動する! 詳しくはテレビでも見ろ!」


 武が通話を切り、アネットさんがテレビのスイッチを入れると緊急ニュースが流れていた。


 「うげ、首都圏各地でキョンシーの群れが出現でちゅ!」


 アネットさんがげんなりする。

 キョンシー、授業で聞いた範囲だと中華ゾンビらしい。

と言うことは、邪仙同盟が黒幕か?


 「あちゃ~? こりゃヤバいですよ、お坊ちゃま~?」

 「クーネさんの言う通りだな、今回は皆で行こう」


 クーネさんの言葉に俺が答える。


 「それは宜しいのですが、キョンシーなのが嫌らしいですわね?」


 ヴィクトリアさんが牙を剥き怒りの表情を見せる。


 「同感です、キョンシーは犠牲者を助ける手段があるのが逆に厄介ですね」

 「いや、助ける方法があるのは良い事だよね?」


 マミーラさんに問いかける。

 ゾンビや吸血鬼みたいに嚙まれたり感染したら、普通はアウトだ。

 助けられるなら、助けたいのが人情だよ。


 「お坊ちゃま、助けるにはもち米やら鶏の血やらの特殊なグッズがいるんですよ?」

 「クーネさん、マジで?」


 クーネさんが頷く。

それは面倒だが、用意するしかねえ。


 「良し、備蓄分以外は現地調達でモンスターメイドコマンドーズ出動!」

 「「イエス、マイロード!」」


 俺達は、地下基地へと移動しモンスタートレーラーに乗って出撃した。


 「タンクからホースを伝ってもち米が飛び出す銃か、何処で売ってるの?」

 「日本のエアガンメーカーです、米軍でも正式採用されてますわ」


 車内で、ヴィクトリアさんから新兵器のもち米ライフルの説明を受ける。

 俺の人命優先の方針に乗ってくれた彼女達と、近い現場の立川市へ向かう。


 「皆さん、もち米はタンクに満タンですね?」

 「領収書もバッチリだよ、マミーラ♪」

 「残ったお米は、お料理に使いますわ♪」

 「モニターから見た外の様子はカオスだ、行こう!」


 敵の組織は、首都圏でも人気が高い所でキョンシー事件を起こしていた。


 車から飛び出した俺達は、変身してライフルを構えて突撃!


 「魔界のヒーロー、モンスターメイドコマンドーズのおでましだ!」


 俺がチーム名を叫びライフルを撃てば、もち米が当たった敵はド派手に爆散した。


 「ヒャッハ~~~♪ キョンシーども、成仏しやがれ~~っ♪」


 ブラッディウルフがご機嫌でもち米ライフルを乱射し、迫り来るキョンシー達を葬り去る。


 「キョンシー狩りのチャンピオン、ピンクアルケニー!」


 ピンクアルケニーは身を伏せるポーズを取りつつ、ライフルからもち米をばら撒く。


 「生者を苦しめず、安らかに旅立って下さい!」

 「吸血鬼の如く優雅でありなさいな!」


 プリンセスマミーとゴールデンヴァンパイアも、キョンシーを退治する。

 一般市民は事件慣れしているのか、現場周辺にはいなかった。


 「こいつら、獲物を探して回ってたみたいだな?」

 「犠牲者がいなくてなによりですよ、マイロード♪」


 俺の呟きにピンクアルケニーがレスポンスする。


 「よっしゃ、移動するでちゅよ♪」

 「こういう時は、原因となる敵を叩きましょう」

 「残ったお米は夕食に使いましょう、コシャリです♪」

 「炭水化物モリモリだな、カロリー使うぜ皆♪」

 「「オ~~~~♪」」


 再びモンスタートレーラーに乗り込み、索敵をしながら移動する。

 一緒に動いてくれる仲間がいるって、ありがたいぜ。


 ブラッディが運転でアルケニーが助手席。

 二人はドラテクも射撃の腕も確かだから心配ないな。


 「むむむ、次の信号を左でお願いします」

 「いや、索敵って水晶玉占いかよ!」


 マミーが青い水晶玉を見て唸りながら行き先を指示しているのにツッコんだ。

 こういう手法を見ると、改めてオカルトチームだな家は。


 「マミーの探査魔法は間違いなしですわ」

 「ネルネールの時も、この水晶玉であなたを見つけましたよ♪」

 「マジか、なら信じるわ!」


 俺のピンチを救ってくれた方法なら、信じるしかないな。


 「しかし、邪仙同盟も何を企んでいるのやら?」

 「いや、仙人って確か漫画とかで殺業さつごうとか言う反抗期みたいなシーズンがあるらしいからそれじゃね?」

 「ずっと囲碁を遊んでるとかしているなら、平和なんですけどね」

 「まあ、悪い仙人は俺達で倒そう」


 シンプルイズチェスト、悪い奴はぶっ飛ばすで良い。


 俺達はマミーの占いに従い、立川市と昭島市にまたがる巨大公園に乗り込んだ。

 駐車場にいたキョンシー達をもち米ライフルで倒し、ボスの所へ急ぐ。


 「げげ! 何だ化け物共、ハーベストのケツもちか!」


 原っぱにいたのは灰色の髪に、陰気そうな顔の黒服の少年キョンシー。


 「魔界勇者マカイザーとモンスターメイドコマンドーズ、ヒーローだ!」


 ビシッと相手にヒーローらしく名乗る。


「魔族がヒーローだあ? お前ら、頭沸いてんのか!」

 「やかましい、人間と友好的に暮らしたい魔族もいるんだよ!」

 「人間と仲良くだ、気持ち悪い! 行け、キョンシーども!」


 黒キョンシーがハンドベルを鳴らせば、公園の地面からボコボコと出てきたキョンシー達。

 土壌汚染も甚だしい行為だ、公園に死体を埋めるな!


 「マイロード、こいつらは私達が!」

 「しっかりボスを叩いて下さいませ♪」

 「マイロードの格好良い所を見てみたいです♪」

 「大将首をお取り下さいませ♪」

 「ああ、任せてくれ!」


 メイド達にボスを任される。


 「舐めんなよ怪物頭! 喰らえ、爆雷符!」

 「ワーウルフの力、マカイザーダッシュ!」


 黒キョンシーが放った空飛ぶ呪符の群れを潜り抜けて奴に近づく。

 背後で避けた呪符が爆発した。


 「呪符ならエジプトにもあるぜ、パピルスバインド!」

 「うげ、包帯が伸びてきただと? 気持ち悪い、瘴気爪!」


 こっちはお返しだと、両腕から呪いの呪文が刻まれた包帯を射出。

 だが相手も手から紫色のオーラを出して手刀を振るい、俺の包帯攻撃を弾く。


 「なら中二病魂全開、タランチュラストリング!」


 今度はアラクネの力で、ワイヤーカッターばりの糸を射出して敵を切りつける。


 「くそったれ! 次から次に!」

 「手数は大事だよな吸血鬼の力、イービルアイ!」


 俺は胴体の蝙蝠頭の目を赤く光らせる。


 「しまった! 動けねえ!」


 牽制の糸攻撃は黒キョンシーに切り傷を与えた、止めの為の拘束だ。


 「これで終わりだ、ベークドマカイザーキック!」


 俺は足元に魔法陣を生み、召喚した緑色の炎を自らを焼くように纏う。


 炎に包まれた状態で跳躍し、敵に蹴りをかまして突き抜け着地する。


 魔界の炎に包まれた黒キョンシーは、断末魔の叫びを上げながら爆散した。


 「これにて状況終了だな、邪仙同盟も厄介な敵だったぜ」

 「お疲れ様でしたわ、マイロード♪」

 「よ、流石私達のスーパーダーリン♪」

 「こちらも掃討完了ですよ~♪」

 「今回は、ばっちり賞金も貰えまちゅよ~♪」


 集まってきた仲間達とハイタッチで勝利を喜び、車へと戻り撤収する。

 こうして俺は、モンスター娘メイド達とチーム全員での仕事を終えたのであった。

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