第7話:狼と金曜デスロードショー

 魔女ドロドーロを倒した翌日、屋敷に祖母ちゃんが現れた。

 祖父ちゃんの隣でどんぶり飯を豪快に食らう。

 家は朝からチキンソテーやら、カツオのたたきが食卓に並んでいた。


 「祖母ちゃん、朝から豪快だな?」

 「うん、ルビーは元気にご飯を食べる姿が素敵だよ♪」


 祖父ちゃんは惚気ていた、二人共若い姿だから十代のカップルにしか見えない。


 「マミーラ、お替り! 勇太もしっかり食べなさい♪」

 「おっす、いただきます」


 物言いは優しいし外見は角生えた美少女ではあるが、魔王の圧が感じられた。

 父さん達は魔界でイチャイチャしてるらしい。

 なんだかなと思う中、祖母ちゃんが光る目で俺を見つめてふむふむと唸る。


 「勇太のステータス見たけど、育成は順調ね♪」

 「え、祖母ちゃん? 俺、ステータスとかあったの?」

 「誰にでもあるわよ? メイド達の誰かから教わりなさい♪」

 「うん、ルビーの特訓はハードだからね勇太のレベルだとまだキツイかな?」

 「うん、特訓を越えられるようにレベル上げ頑張るよ」


 今朝の朝食は、ゲームのリザルト発表みたいだった。


 「それじゃあお坊ちゃま、魔界での御召し物は私が仕立てましょう♪」


 クーネさんが両手をくねらせ、ギザギザの牙を微笑む。


 「魔法と行儀作法や社交知識やダンスは私が♪」

 「えっと、頑張ります」


 ヴィクトリアさんも牙を見せて笑う。


 「魔界の騎乗動物と射撃は私が教えまちゅ♪」

 「お手柔らかに」


 アネットさんも乗り気だ。


 「水泳も格闘も白兵武器もこれまで通り私が担当します~♪」

 「思ったんだけど、俺は近代五種競技でもやらされるの?」


 乗馬に水泳に戦闘にと、近代五種みたいな稽古内湯尾があるんだが?

 魔界って、他にはどんなモンスター娘がいるんだろ?

 そんな事を想うと、メイド達がこちらを睨む。


 「お坊ちゃま、魔界では目移りしちゃ駄目ですよ♪」

 「ええ、魔界にはいろいろな危険がありますからね」

 「魔界でも私達がしっかりと、お守りいたしまちゅよ」

 「四六時中、決して離れませんからね?」


 メイド達から黒いオーラが出る、嫉妬心だ。


 「勇太、魔界に来るなら気を付けなさいよ? ヤバい奴らが多いから」

 「下手に社交界とか行くと、あっちのお姫様とか怖いからね?」


 祖父ちゃんがやんわりと注意して来る。

 いや、お姫様とか知らないからわからんけど?


 「そうよ、進三郎だって狙われたんだから!」

 「俺が魔族に好かれるのは、祖父ちゃんの遺伝?」

 「それもあるわね、後は家の色欲王の系譜の魔力とかで以下省略!」

 「いや、略さないでよ!」

 「特訓の時にでも教えるから、さっさとごはん食べて支度して学校へ行く!」 


 もしかして、俺の異能って魔界に行ったら騒動の素では?

 魔界の女子って、モンスター娘ばかりなんだろうし。

 まあ、異能があるからとはいえそうそう魔物ホイホイにはならないと思いたい。


 「お坊ちゃま、魔王様のお言葉はガチでちゅからね?」

 「魔界デビューまでに、レベルを上げて自衛できるようにいたしましょう」

 「ゴートマン王国の中だけなら良いけど、国外はヤバいですから!」

 「今は人間界で、ヒーローする事だけを考えましょう」


 メイド達が、念押しして来た。

 これはガチでヤバいんだなと言うのは感じられたので、鍛えようと思った。


 「人間界の朝ドラ、どんなのかしら?」

 「祖母ちゃん、朝ドラ見るんだ!」


 念動力で器用にテレビのスイッチを入れる祖母ちゃん。

 国営放送ではドラマではなくニュースが流れた。


 「緊急ニュースです、ハーベストの魔女達が首都高に現れ暴走を始めました!」

 「朝っぱらから事件かよ!」

 「勇太、アネットを連れて行きなさい。暴走には暴走よ!」

 「オッス、魔界レディース麵麭賦金パンプキン五代目総長の走り、見せてやります!」

 「いや、どういう繋がり?」

 「昔、国の令嬢達を集めてレディースやってたのよ♪ アネットは後輩♪」

 「祖母ちゃん、俺の中で令嬢の概念が壊れたよ!」

 「おっしゃ、ラブラブタンデムで出発だぜ~~~♪」

 「あ、狡いよアネット~~! 私だって、副総長だよ?」」

 「飛行スピードなら私も負けておりませんわ!」

 「アネットさん、羨ましいです~!」


 俺はアネットさんに背負われて、緊急出動する事になった。


 「ヒャッホ~~~♪ 最高でちゅ~~♪」

 「マジか、街や一般人に被害出さず青梅街道を爆走してる!」

 「マイロードの御心のままに、高速料金はETC払いでちゅ!」

 「いや、この馬バイク高性能だな!」

 「マシンカンケツバー、フルスロットルでちゅ♪」


 変身した俺達は、メタリックルージュな馬型バイクに乗り現場へ。

 どうやって高速道路まで入ったのか、俺には全くわからなかった!

 池袋の看板が見えた所で、出くわしたのは大惨事。


 「マカイザー参上! パレードなら遊園地でやってろ!」

 「マイロード、奴ら首都高に魔法陣描くつもりでちゅ!」

 「ヒャッハ~! 出たね、マカイザー! パラリーラ様の邪魔はさせないよ!」


 今日の敵はピンクの特攻服着て、魔女のとんがり帽子被った強面のお姉さん。

 乗ってるのは箒じゃなくて、ジェットバイクだ。

 敵の戦闘員が何かヤバそうな色のスプレーで道路にアスキーアートしてやがる。

 一般人にも被害が出てるし、これ以上はやらせねえ!


 「ブラッディ、ケンタウロスフォームで行くぜ!」

 「イエス、マイロード!」


 俺とブラッディが相乗りしたマシンカンケツバーが炎に包まれる。


 「ああん? いきなり自爆か?」

 「ふざけんな~~っ!」


 炎の中から、全身が真紅のケンタウロス状態になった俺達が飛び出した。


 胴鎧は狼の頭、下半身は馬のように四つ足のフォームだ。

 怒りを燃やして後足で跳び、前足で蹴りをかます!


 「まだまだ行くぜ! マカイザーライオット!」

 「ざけんな! バリヤッ!」


 蹴りはかすったが、空中で振り向きざまに魔女に対してショットガンから火炎弾をぶっ放す!

 相手はバリヤーを張るも、こっちの火炎弾に吹き飛ばされて道路に墜落する。


 『見たか、私は狙いを外さねえ!』

 「補正ありがとう、ブラッディ」

 『ク~~~ン♪』


 俺は胴鎧になったブラッディウルフの頬を撫でる。

 ワンワン成分が可愛い。


 「化け物野郎、パラリーラ様を舐めんな!」

 「ブラッディの熱が俺の勇気を燃やしてくれる、お前なんか怖くない!」


 敵が懐からタクトを出してエネルギー弾を放つ、こっちも銃撃で迎え撃つ。

 救助活動や片付けが待ってるんだ、終わらせてやる。


 ジェットバイクを操って空を駆け巡り飛び道具で攻撃してくるパラリーラ。

 こっちは、敵の戦闘員も倒しつつパラリーラの攻撃を蹴りで打ち返して守る。


 そろそろ敵を仕留めようと、俺は前足を打ち鳴らして火を付け駆け出す。

 馬に蹴られてなんとやらだ。


 「必殺、ブーストマカイザーキック!」


 炎の蹴りで敵をさらに上空へと蹴り飛ばし、爆散させる。

 落ちて来る敵の破片は、マカイザーライオットで残さず粉砕し無害化。

 大気圏外まで蹴り飛ばせばよかったが、キック力を鍛えねば。



 「良し、こっちは片付いたな?」

 『魔力反応なし、多分他の所に行ったヒーローも焼てくれてまちゅ♪』

 「だな、葛西やらのポイントは法華のヒーローに任せよう」


 地上に戻ると、手分けして作業をするべく俺達は合体を解除。

 同時に良いタイミングで、銀色のドラゴン型の装甲車がやって来た。


 「モンスターメイドコマンドーズ、到着~♪」

 「救助作業に撤去作業の開始ですわ~♪」

 「ブラッディさんだけに、良い顔はさせません」

 「ちょ、せっかっく二人きりだったのに!」


 ブラッディウルフが悔しがるが、今は仕事時間。

 メイド達と力を合わせて。消火や事故車両の除去。

 救急車も呼びつつ、怪我人の救助と応急処置を施す。


 「大丈夫ですか、我々はヒーローです信じて下さい!」

 「私達は正義のモンスターですわ♪」

 「モンスターにも、良いモンスターはいるんですよ~♪」

 「私らは人間の味方だよ~♪」

 「我らは魔界のヒーローMMC、マカイザー様のお共モンスターでちゅ♪」


 一般市民の皆さんに、敵ではないと声掛けする。

 まだまだヒーローとしての知名度は低いが、助けの手は受け入れて貰えた。

 やがて、救急車やレッカー車などが到着したので引き継ぐ。


 「よっし、皆お疲れ様♪」

 「それじゃあ、私達は池袋デートにレッツゴーでちゅ♪」


 俺はアネットさんに鎖で巻き付けられてメットを被せられる。

 アネットさんもヘルメットを被っていて、俺を後ろに乗せるとマシンカンケツバーを走らせた。


 「な! 逃がしませんわ!」

 「クーネさん、追いかけましょう!」 

 「合点、アネット~~! そこはグループデートだろ~~!」


 俺達の後ろを仲間が装甲車で追いかけて来る。

 事件は終わったが、新たなデッドヒートが始まってしまった。

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