第6話:ミイラと魔女狩り

 ヴィクトリアさんとの出撃から帰還した俺。

 出迎えてくれたメイドさん達に頼んで、お清めの塩を撒いてもらった。

 敵は倒したが、後味の悪い事件だったよ。


 「か~~~っ! あの魔女ババア、お坊ちゃまの精神衛生を!」

 「ギチギチギチ、許せないねえハーベストの奴ら!」

 「ええ、許せませんわ! 私達のお坊ちゃまの御心を曇らせるなんて!」

 「ハーベストの連中は、キッチリお掃除しましょうメイドらしく!」


 アネットさんは狼に、クーネさんは顔が雲に泣て歯ぎしり。

 ヴィクトリアさんは怒りを燃やし、マミーラさんはドロドロと。

 俺の事を想って敵に対して怒りや怨みを吐き出す。


 「皆ありがとう、遅くなったけど飯にしよう」


 俺達は時間帯的には夕食と言うより夜食を取り、犠牲者達を偲んだ。

 警察に引き渡した事は手順的には正しかったが、悔しかった。

 たらればを言えばキリがないが、心が痛い。

 部屋のベッドで寝そべると、ネガティブな気持ちがじわじわと出てくる。


 「大丈夫でちゅか、お坊ちゃま~~~!」

 「心の嘆きが聞こえました我がファラオ!」

 「お一人で抱え込まないで下さいませ!」

 「少年の心を救いに来た女、ピンクアルケニー!」


 部屋のドアをダイナミックに開け、雪崩れ込んで来るメイドさん達。


 「いや、俺のプライバシーはどこ行った!」


 流石に驚いてツッコんだ、落ち込んでる暇がねえ。


 「緊急事態ですのでご容赦を♪」


 ヴィクトリアさんがしれっと抜かす。


 「ヘイへ~イ、寝る為のミルクもって来まちたよ~♪」


 アネットさんが、銀のポットとグラスを見せる。


 「飲んだ後の歯磨きなら、蜘蛛のお姉さんに任せて♪」


 クーネさんが千手観音の如く背中から蜘蛛腕と歯ブラシなどを取り出す。


 「怨霊などはこのマミーラが、ラーの力を借りて近づけさせません♪」


 マミーラさんが何か金のメダルを取り出して見せる。


 「私の子守歌は、よく眠れますわ♪」


 ヴィクトリアさんはフォークギターを取り出す、余計寝れないよ。


 「ありがとう皆、じゃあお世話になります♪」

 「「お任せあれ♪」」


 モンスター娘からは逃げられないと悟った俺。

 厚意に甘えて、彼女達のお世話になり夜を過ごた。


 次の日、教室に入ったら皆から騒がれた。


 「勇太、お前やるじゃねえか♪」

 「いや、何だよこの騒ぎは?」

 「お前、ニュース見てないのか?」

 「まさか、あの事件か?」


 近づいて来た武がスマホを見せると、ニュースの動画が流れる。

 そこには、変身した俺とヴィクトリアさんが戦う様子が撮影されていた。

 あいつヤバいよとかざわつく声が聞こえる。


 「ああ、現場が荒れてたから見られてたとはな」

 「街灯の監視カメラだよ、お手柄じゃん♪」

 「いや、犠牲者出ちまったし喜べねえよ」

 「まあな、でもあいつを倒して未来の被害を止めた事は誇って良いんだぜ♪」

 「ありがとう、武は良い奴だな」


 友の言葉に少し気が楽になった、金田君と御子神さんは微笑んでいた。

 俺は周りに恵まれてる、皆のお陰で俺は折れずに戦える。

 ありがたい限りだった、この学校に入れて良かった。


 「晴間君、すまないが職員室に来てもらえないかな?」

 「え? 俺、何かやらかしてしまいましたか?」


 昼休み、皇帝のテラスで弁当を食おうと教室を出たら先生に声をかけられた。


 「違うよ、二年時からのコースの希望用紙を渡してなかったんだ」

 「ああ、そうでしたかどうもっす」

 「そうそう、ヒーロー活動の報告書は単位になるから学校に出してくれよ?」

 「やばい、忘れてた!」


 俺は鷹倉先生について行く。

 先生達が休憩したり仕事する職員室にて、専攻コースの希望用紙とレポート用紙を貰った。


 「専攻コースか、オカルトヒーロークラス一択だよな」


 テラスのベンチに座り用紙を見る。

 超科学クラスや宇宙クラスに魔法少女クラス、国際忍者クラス。

 様々な選択肢が並ぶが、オカルトヒーローコースに決めた。

 いや、能力とか血筋で実質一本道だよ。

 事件のレポートは、帰宅後に纏めよう。


 学校を終えて帰宅すると、夕食前に軽くレッスンだ。

 地下の基地内にある訓練ルームで、マミーラさんと二人きりになる。

 

 彼女はスポーツブラに短パン、手足には包帯。

 俺も同じく手足に包帯を巻き、スパッツ姿で格闘技の指導を受けていた。


 「古代エジプトの時代から、ミイラ族は格闘技が得意なんですよ♪」

 「ピラミッドにそう言う壁画があったな」


 マミーラさんと対面で、彼女に合わせてパンチやキックの出し方を教わる。

 彼女から伸びた包帯がこちらの手足を縛り、姿勢やらタイミングやらを矯正する。


 「ハイキックの足の高さはこの位置ですよ」

 「足が、股関節が!」

 「柔軟も一緒に頑張りましょう♪」

 「ぎゃ~~っ!」


 フォームの矯正として、手足をあちこちに包帯で引っ張られる。

 怪人形態やマカイザーではなく、人間の姿ではハードな稽古だった。

 仲間の力を借りる以外にも地の力を身に着けたいから頑張る。

 彼女達と守り守られ、支え合えるようになりたい。


 夕食後、今夜のパトロールはマミーラさんと同伴だ。

 クレオパトラカットのミイラメイドと夜の散歩、我ながらニッチな嗜好だ。

 マミーラさんと二人、包帯を使ったワイヤーアクションで飛び回る。


 「そういや、家はハーベストの魔女をよく狩るけど魔界絡み?」

 「ええ、奴らは悪い魔族と結託してるので魔界でも人間と友好的に付き合いたい我々にとっては優先的に叩くべき邪魔者なんです」

 「確かに、お前らも奴らと同類だろってなるよな」

 「はい、一緒くたにされたくないです」


 黒ローブ姿の魔女が、多摩川に異物を流そうとするのを発見した俺達。


 「よし、行くぜ!」

 「ええ、マイファラオ♪」


 俺達は魔女の前に飛び出した。


 「ゲゲっ! お前らはマカイザーの一味!」

 「邪悪な魔女め、多摩川を汚させはせん!」

 「東京にとってナイルの如き大事な川は、我らMMCが守ります!」

 「ち、ならばまずはお前らを倒してから儀式だ!」


 魔女が呪文を唱えると、その姿を泥人形の怪人へと変身した。


 「大地の魔女、ドロドーロ様が相手だ~~♪」

 「ならばこっちも、魔界チェンジ!」

 「変身です!」


 俺達も変身する。

 マミーラさんは、虚空から女性型の黄金の棺を召喚して入ると棺が変形する。

 黄金の鎧とファラオの頭巾を被った女性型のミイラ怪人に変身した。


 「魔界勇者マカイザー、参上!」

 「魔界メイド、プリンセスマミーも推参です」

 「ミイラがプリンセスとは片腹痛いわ♪」

 「俺の大事な人への侮辱、許さん!」

 「そのお気持ち、ありがとうございます♪」

 「戦いだってのに、惚気るんじゃないよ!」


 ドロドーロが泥の弾丸を俺達に乱射する。


 「危ない、ぐはっ!」

 「そんな、マカイザー様!」


 俺はマミーを庇い、敵の攻撃を身に受ける。

 衝撃がガンガン来る上に全身が泥で包まれ動きが鈍る。

 だが、自分に愛をくれる人を守る為の痛みなら耐えられる。


 「イッヒッヒ、化け物に誑かされた愚か者が♪」

 「貴様、我がファラオを侮辱するな! 出でよナイルワニ!」

 「ば、馬鹿な! ワニだって!」


 マミーが呼んだワニが俺にぶつかり、泥を落として新たな力を授けてくれる。


 「サンキュー、マミー♪ マカイザーセべクフォームだ!」


 鎧が緑色のワニの頭、尻にワニの尻尾手足も緑のワニを模したグローブとブーツに変わった。


 「おのれ、見掛け倒しよ!」

 「そんなわけあるか、マカイザーデスロール!」


 俺は全身を緑のメカっぽいワニ形態に変形させ飛び掛かり、魔女に噛み付くと多摩川へダイブ!

 水中で超高層く回転を行い、ドロドーロをぶん回しから空中へ投げ飛ばす。

 同時にこちらも川から飛び出して飛翔!


 「止めはこいつだ、ラーブレイザー!」


 太陽ビームの正式名称を叫び、金色の光で魔女を焼き尽くす。

 地上に戻ると、マミーが抱き着いて来た。


 「我がファラオ! 申し訳ございませんでした」

 「いや、俺も守りたかったからな?」

 「ありがとうございます、あなたで良かった♪」

 「どういたしまして、帰ろうぜ」

 「はい、我がファラオ♪」


 変身を解いた俺達は、月明かりの下屋敷へと帰ったのであった。

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