第5話:夜のお散歩は魔女退治

 あの後は、クーネさんことピンクアルケニーに引きずり回された。

 ビルの谷間の裏闇で悪を探して飛び回らされ、路地裏で悪さをする輩を蜘蛛糸を使い殺さずにCQCでシバキ倒して拘束する路地裏パトロール。

 アメリカだけじゃなく日本も結構、路地裏で事件が起きてたのは驚いたよ。


 帰宅してみると、待っていたのは残る三人のモンスターメイド達。

 三人とも笑顔に怒気が張り付いていた。


 「お坊ちゃまを夜まで連れ回すとは羨ましい、どういう了見でちゅか!」

 「私がお料理当番の時に、何かの嫌がらせですかクーネさん?」

 「クーネさん、ずるいですよ? 乾燥肌になるように、呪っちゃいますよ?」


 屋敷の地下の基地でアネットさん、ヴィクトリアさん、マミーラさんがクーネさんを正座させてから膝の上に石畳の刑で問い詰める。


 「いや、連絡したじゃん? ヴィクトリアは睨まないで! お坊っちゃまの裏社会勉強だって~! 隠密行動も探偵術もレクチャーしないとさ~?」

 

 被告人であるクーネさんが、わかるだろうと同意を求めるように言い訳する。

 まあ、彼女の言うようにヒーローたる者は事件があれば夜も動かねばならんよな。

 三人のメイド達は頷いて溜息を吐く、気持ちはわかるらしい。


 「労基は守ったでしょ~? 二十一時までには帰って来たし~!」

 「まあ、今度は夕食後に夜のインストラクターを頼むよ」

 「よっし、流石お坊ちゃま♪ じゃあ、土曜の夜にデートっと♪」

 「ずるいです! 私ももっとお坊ちゃまとの時間を!」

 「ミートウーでちゅ!」

 「クーネさん、恐ろしい方ですわ!」


 反省タイムは終わりだと、クーネさんは石をどかして去って行った。

 俺はやきもちを焼いたアネットさん達に噛み付かれて、血とエナジーを吸われた。

 体力回復の為に、ヴィクトリアさんの作った鰻のおかゆなどを食べたが疲れた。


 「勇太、お前大丈夫か?」

 「貧血気味のようだな?」

 「食事と睡眠は取れてる?」

 「ああ、逆に取られてるかな?」


 翌朝の学校では、仲の良くなった武達に心配された。


 他のクラスの面々とも、挨拶とか軽い雑談はするようになってきた。

 御子神さん以外の女子とは挨拶はするようにはなった。

 だが、メイド達による女難よけの呪いのお陰か避けられてる。

 

 昔から人間の女子とは、知り合い以上の関係になれない。

 いじめられはしなかったが、友達にもなれないのは空しいな。

 男子の友達はいたが、前の高校まで女子の友達なんていなかった。

 まあ、モンスター娘の方が元から好きだったし今更構わないか?

 御子神さんが、人生で初の女子の友人になれそうではあるかな?

まあ、神職のお家の子だしこっちが浄化されないように気を付けないと怖い。


 授業で消費したカロリーを補う昼飯時。


 弁当は、牛に羊に山羊にマグロにと赤身尽くしだった。

 教室で弁当を開けたら、御子神さんにお祓いされそうだとかんじたので弁当の重箱を抱えて外で食った。

 肉のパワーで午後の授業を乗り切る。


 「さあ、授業を始めるぞ変身だ!」


 午後の実技でグラウンドに集った、俺達D組。

 ジャージ姿の鷹倉先生が左右の腕を回して姿を変える。


 「飛空戦士、ホークラー!」


 変身した先生が、ビシッと鳥が羽ばたくポーズを取る。

 鷹をモチーフにしたマスクと、肩甲骨周りから翼の生えた赤いヒーロースーツだ。


 「模擬戦用のショックブレードを使っての訓練だ、スイッチを入れた状態でも切れないが刀身が当たるとエネルギーが弾けるので扱いには注意しよう」


 ホークラー先生が出したのは玩具の剣みたいな、白い棒に黒いナックルガードと引き金と赤いボタンが付いた器具だった。

 ナックルガードの脇の赤いボタンを押すとエネルギーがチャージ。

 柄についた引き金を引けば刀身全体がバチバチと帯電する。


 カートに入ったショックブレードを取って行き、全員に行き渡れば開始。


 「よし、初心者もいるだろうから基本から行くぞ!」


 ホークラー先生の掛け声のもと先生の前に横一列で並ぶ俺達。

 皆に合わせて中段に構えて素振りから始める。

 上中下段の受け防御や払い、小手、面、銅に突きに脛と攻撃技の素振り。


 「よし、出席番号順で先生と打ち込みだ!」

 「一番、フェザーレッド赤羽武! せりゃあっ!」


 自前の戦隊レッドスーツになった武が帯電させたブレードで打ち込む。

 先生もブレードを帯電させているので、打ち合えばバチバチと電気が弾ける。

 打ち込みが終われば対戦。


 「行くぜ、マカイザー!」

 「勝負だフェザーレッド!」


 俺は武と対戦。


 相手は武器を放電モードにしてから突進。

 対してこちらも放電モードで受け放電で弾き返した所を相手の背中に回り込む。

 背後からの攻撃はルールで有りと先生から聞いていた。


 「バックアタックで行くぜ、足っ!」

 「あばばっ! 足がしびれた!」

 「足有り、一本だ」


 許せ武、足有りなら足狙って取るのが早く終わる。

 ポイント取る競技は取りやすい所を狙え。

 メイド達と家で訓練してるのが役に立ったぜ。

 クラスメートや先生からはジト目されたが、勝負は勝負だ。


 「勇太、ヒーロー歴短いのにやるな♪」

 「放課後は毎日、家で特訓してるおかげだよ」


 立ち上がった武と変身を解いて握手する。


 帰宅後は学校の課題をしたり、スマホでSNSのチェックする。

 ついエゴサをしてしまうも、ヒットがなかったのが逆にちょっとへこんだ。

 そろそろ、愛すべきモンスター娘のメイドさん達との夕食の前に事件が起きた。


 「お坊ちゃま、スクランブルですわ!」

 「いや、何があったのさ!」

 「お坊ちゃまが捕らえた魔女、カラメールが脱走ですの!」


 部屋に来たヴィクトリアさんがスマホを見せるとライブ中継が流れる。

 警察署とその周囲が、地面から溢れ出たキャラメルで包まれていた。

 これ、犠牲者出過ぎだろ?

 中にいた人達、助からねえぞ?


 「くっそ、あの時に仕留めてりゃ!」

 「お坊ちゃま達の所為ではございませんわ!」

 「何の救いにもならないが始末を手伝ってくれ、飯は遅れる」

 「イエス、マイロード♪ では早速、参りましょう♪」

 「え、何でお姫様抱っこ!」


 ヴィクトリアさんが俺を抱き上げ、開いてていた窓へとダッシュし飛び立つ。

 彼女は空中で、金色の蝙蝠を模した外骨格を纏った怪人になる。

 自慢の六連縦ロールは、なぜか知らないがジェットブースターに変形していた。

 俺も空中でマカイザーに変身する。


 「ヒャ~ッハッハ♪ 娑婆に出た記念のティーパーティーだよ♪」


 邪悪なキャラメルの塔となった警察署の屋上で高笑いをする魔女。


 「カラメール、お前にお茶会を楽しむ資格はない!」

 「月の名の下に、断罪させていただきますわ!」

 「出たな、マカイザーと蝙蝠の化け物!」

 「魔界メイド、ゴールデンヴァンパイアですわ!」

 「彼女は素敵なお嬢様だよ、魔界勇者マカイザー見参!」

 「あらあらまあまあ、私昂って参りました♪」

 「惚気るんじゃないよ、バカップル!」


 問答を終えて戦闘開始。


 「私の縄張りに来た時点で負けさ、キャラメルウェ~ブ!」


 カラメールが微笑むと同時に屋上のキャラメルが波となって襲い来る。

 だが、相性が悪かったのは敵の方だ。


 「ラ~~ララ~♪」

 「ラ~ラ~~~!」

 「ギャ~~~ッ!」


 俺とゴールデンヴァンパイアの合唱による魔力を込めた超音波ソングで跳ね返す。

 カラメールに殺された人達へのレクイエムだ。


 「ベテランの魔女を舐めんじゃないよ! キャラメルランサー!」


 カラメールが白兵戦だと、キャラメルで槍を作り襲い来る。


 「そっちこそ舐めるなよ、バットトマホークを貸してくれ!」

 「どうぞ、マイロード♪」


 俺はゴールデンから金色の蝙蝠の翼型の刃をした戦斧を受け取り迎え撃つ!

 相手の刺突を超音波を纏ったスイングで打ち返して、槍を砕く。


「畜生め、回復した分の魔力が切れちまった! 出したキャラメルを食って魔力を取り戻さないと!」


 カラメールが悔しがり背を向けて、周囲のキャラメルを食いに行こうとする、

 そうはさせるか、もう許さねえ!


 「もう容赦はしない、マカイザークラッシュ!」


 空から降ってきた漆黒の稲妻を斧に纏わせ、大上段から振り下ろす。

 カラメールは両断されつつ稲妻で燃えた。


 その後は、対怪人警察が来て事後処理を始める。

 俺達は桜田さんに事の次第を報告してから帰還した。

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