プロローグ2/4

俺は自分の家に着き、インターホンを鳴らす。

 するとインターホンから声が聞こえてくる。


 「あっ!ようやく帰ってきた~」


 おそらくインターホンのカメラで俺の顔を見たのだろう。優しい声がインターホン越しに聞こえてくる。その声を聞いた途端に疲れでだらけきった心が浄化されていくのを感じる。

 ガチャっという音と共にドアが開かれて、その姿を見ると思わず笑みがこぼれてしまう。


 「お帰り兄さ〜ん」

 

 まるで静かな空間を甘くて華やかな空間にするかのような透き通った声。世界基準で見てもトップクラスの整った顔立ちに、それを引き立てるような無駄のない綺麗なロングヘアは男女ともに魅了するだろう。


 このかわいらしい子は俺の妹であり、同じ高校の1年生だ。


入学早々に、同じクラスの男子だけではなく、女子をも魅了し、その優しい性格でクラスの地位を確立した生粋の陽キャで成績も常に学年トップを維持している。

まさに才色兼備という言葉が似合う人物だろう。


 俺との関係はただの兄と妹ということだけである。


 しかし、実の妹ではない。


 どういう事かと言うと、俺は小さい頃に父が母と離婚をして父親一人に育てられてきた。

 そのまま月日が流れて、丁度二週間前に父親が、ある一人の女性を紹介してきた。話を聞くに父親はその女性と結婚することになったらしい。

 その時に女性が連れてきた一人の女の子が彼女というわけである。


 つまりは義妹だ。義妹なのだ。ラノベ好きが一度は夢見たであろう義妹との共同生活。本っ当に最高だ。


「――さん。」 

「――さんってば」 

「ねぇ兄さん!」


 彼女の問いかけに俺はハッとして意識を戻す。どうやら何回も声をかけられていたらしい。こんなに可愛い妹の問いかけを無視するなんて、俺は大きい罪を犯してしまった。そう自分を葛藤していると、もう一度声をかけられた。

 

「兄さんってば…何考えてたの?」


怪訝そうな顔でこちらの顔を覗いてくる。そんな顔も可愛いが今は質問に答えなければいけない。


 「いやちょっとな?今日の学校生活を振り返ってたんだ」


 そんなもん家の中でやれとツッコまれそうな言い訳だが、今はこれでいくしかない。


 (今日も可愛いなとか思ってたって言ったら怒られそうだしな)


 「ふーん、そうなんだ」

 「まぁいいや。後でお話聞かせてね」


 義妹特有の最初は兄と仲が悪いといったお決まりの展開は無く、俺たちの関係は良好だ。しかも俺の事を本当の兄として接してくれている。本当は今すぐにでも嫁にしたいぐらいだが、義妹とはいえ、兄妹なので手を出すことはできない。


 「兄さんはお風呂に入っちゃってね」


 俺がかなり汗をかいているのを感じ取ったのだろう、帰ってきて早々にお風呂に入るのを勧めてくる姿はまるで、新婚または、熟年夫婦のようだと思う。

まぁ、あいつはそうは思っていないだろうがな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る