第3話 冷たい春 下


アキそれどないしたん?


あれ?免許って来年しか取れへんよね?


「ゆーやの兄貴から借りてきた、ドライブ行こーぜ」


言葉は顔に書いてあったかのようで、それに完結に返事を返して、ヘルメットを渡してくるアキ


「練習したし大丈夫やわ」


なんだろその自信


でも



戸惑うこと無く、ヘルメットを被って後ろに乗ったあたし


「ちゃんと安全運転だから大丈夫やで」


安全運転の前に無免許がだいじょばないでって


かみかけのツッコミが出そうになった


夜風が心地よい


街を抜けて山道へ、峠に向かい、どんどん上がってく


見晴らしの良い所で停まって一息ついた


うわー


語彙力の低い言葉が出てしまった


山道の上から見える街並みは凄く綺麗だった


SNSで景色なんて散々見てるけど


やっぱり自分の目で見ると違うのかな


ほいよ


アキはポケットから冷たくなったミルクティーを寄越した


背伸びしたビジュアルにしてるのに、まだまだ味覚は年相応


やっぱりアキはアキやな


当たり前だけど、普段と違う場所や状況だからかな


改めて思った


甘い甘いミルクティーに、アキ、ずっと退屈と言ってるこの街並み


横目でアキを見ると


今は何も不満などないかのように、頬を綻ばせていた


こうして、定期的に少しずつドライブの範囲を広げながら、中学3年の日々は過ぎていった


(終わりの1へ続く)

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