第二.二五話 マコト、お気に入りのコンビニエンスストアー

「マコト、お疲れェっ!」

「うん!じゃあね!」

 深夜の〇二時過ぎ、勤務先の居酒屋から出て来たマコト、同じく一緒に勤務して居た同僚に、情を込めた感の在る台詞を掛け合い、別れる。だが一切の情も無い。あくまでも仕事仲間、奴が生きようが死のうがマコトには全く如何でも良い存在。向こうも同じ気持ちに違い無い。

 (て云うか、地球人の全てが如何でも良い存在)

 家路に向かうマコトは呟く。

 誰も居ない家に帰っても食料が何も無い。要は一人暮らしのマコト、自分が気合を入れて居ないとウッカリ餓死してしまう程、食事の事は如何でも良い。マコトが勤務して居る居酒屋、賄いは在るがソレは働いて居る時の話。勤務外の時の食事はマコトの担当となる。一度、家に帰ってしまうと、仕事以外でアパートメントの外に出るのはチトかったるい(嗚呼、人間って面倒臭い..)。

 家から充分に徒歩圏内に在る勤務先の居酒屋から、其の中間点に在る行き付けのコンビニエンスストアーに寄って、明日の食料を購入しようと思ったマコト。自炊はしないマコト、貧乏臭い真似はしたく無い。自炊する位ならば餓死した方がマシのマコトの哲学。

 

「ピンポぉン..」

「いらっしゃいませェ..」

 これがコンビニエンスストアー入店の序曲。此処の店の店員は愉快で、何時もサングラスを掛けて接客をして居る。マコト自身も接客業で生計を立てて居るから、この店に限らず、無意識の内に働く従業員達の仕事振りを採点してしまう癖が付いた。サングラスには深刻な何かの身体的な理由が在るのだろう、苦情を言おうとは思わない、只の色眼鏡だ。

 そして接客具合だが、〇。0点では無くて合格点の“〇”。狭い店内、店内カウンター越しからとは云え、付かず離れずの意気込みを感じさせる対応振り。店内の何処に居ようが、背中を見られてるゾクゾクとした感じがする。行き過ぎた愛を感じるマコト。

 どんな店でも、店員の気持ちで店内の空気が「グッ」と変わる。何時も深夜帯のコノ時間に居る、性別年齢不詳オカッパ店員の印象は「グット!」良きのマコト。

 (今日は、賄いじゃ食べれない中華丼とぉ..後ソレとカレーパンにしよっかなァ..)

「いらっしゃいませ、コチラの中華丼、温めますか?」

 シノブが聞いた。

「あ、イエ、大丈夫です。」

 マコトは即答した。どうせ家の電子レンジで温めるのだ、此処でワザワザ温める必要は無いし、店員に無駄な仕事を与えたくも無い。

「有難う御座いましたァ..」

 サングラス越しの鋭いシノブの両眼は、マコトの両眼を確実に捉えて挨拶をした。両眼の眼圧が増した感が在ったマコト、

 (疲れてるのかしら、)

 カウンター挟んだシノブの目の前で、思わず右手で両方のコメカミを「ぎゅっ」握った。

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