第11話  奇跡の力

 奇跡の力といっても使い方は分からない。

 あれ以来、銀の森で腫れもの扱いされる一方で、心臓に取り付いた『グレシャス』は「願いを聞いてやろう」と何度も囁いてきていた。


「「うるさーーい!!心を読まないでよ! 変態!!」」


<風の精霊のことを、心配してるのだろう? リザベータ、風の騎士をここへ>


『グレシャス』は、半透明のリカルドをエリサの前に呼び寄せた。


 リカルドは、神に一時、人間の器をもらって、神の願いを叶えた。その後で天界にエリサを連れ去ろうとする神に大激怒した。持っていた風の魔法で大暴れをしたのだ。結果、人間の身体は回収され、精霊の最下位のまで落とされて、未だに意識が戻っていなかった。


 一度は見捨てたが、赤ん坊のころからいっしょだった精霊だ。

 

<この精霊は、変わり変わり種だ。人としての生よりも精霊として生きることを望んだ者だ。癒してやるが良い>


「リカルドの力を復活できるの?」


<そうだ、風の騎士を抱いて、魔力を注いでやるのだ>


 エリサは、言われた通りにリカルドを抱き起した。それだけでも驚きだ。

 普通は、精霊に触れるものなどいないはずだ。

 その後、エリサは自分の力が、銀色に発光していることに気付いた。

 ――――と同時に、消え入る寸前んだったリカルドが、だんだんと半透明の精霊らしさをと戻した。


「まさしく聖女の力だ」


 光の神の子孫たる、エル・ロイル家の当主、ミルドランは大真面目な顔でエリサにこう言った。


「光の精霊は、我が家に伝わる物である」


「え……?」


「我が家に、返還を求める」


 

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