第4話 新たなお仕事です!

帝国軍第一騎士師団司令部へ出頭せよとの手紙を貰ったので

とりあえず正装して、ジョナサン小父さんと私・フェリーチェは出掛けたのですが。

「よく来てくれたな!フェリーチェ。

 そしてわが師ジョナサン・マルロー殿!ご無沙汰しております!

 あの時同様、変わらぬご様子、このエミーリアも嬉しゅう存じます」

「いやいや、わしゃあもう年寄りですよ。エミーリア大佐!」

「お戯れを!あの時のように”じゃじゃ馬!”とお呼びください!」

「ハハハハ!大佐殿はあの時と変わらないですな!結構結構!そう言えば大佐殿は

 あの時の様に酒はいまでも嗜んでおられるのかな?」

「はっ!時折ではありますが」

「そうか、ではこれを」

ジョナサン小父さんは何時の間にか、最高級ワインを持ってきてたんですよねぇ・・

「おお!これは!!」

そうエミーリア大佐のような超絶エリート軍人でも知っている、このワイン。

ジョナサン小父さんの親類が作っているんだって!知らなかったんですよ私も。


「では、尊敬するわが師、ジョナサン・マルロー殿のご健康を祝して。乾杯!」


「うううう~~~~~ん、この芳醇にしてまろやかな味わい・・・

 この国作られる最高水準のワインを頂けるとは。

 今日はわざわざ来てもらった甲斐があるというものですぞ!」

「そうですかな、喜んでいただけるとは、この老体も持って来た甲斐が有ります」


私も実はワインが好きなので、ご相伴。

これは今まで飲んできたものとは別物と思うレベルの美味しさですね。

ワインとごちそうを頂きつつ、歓談していました。

エミーリア大佐は話の引き出しが多い人で、軍事、政治から昨今の流行りもの、

帝都でのグルメなどなどいろいろな話をしてくれました。


「では、私どもはこの辺で」

「これからも先生、お体に気を付けられて、後進の指導を頼みます。

 フェリーチェ、貴様も精進せよ!ギルドの仕事も軍の仕事も根は一緒だ。

 頼むぞ!」

「はっ!もったいなきお言葉。今後もS級騎士として精進します!」

「うむ!ではまた!先生もお元気で」



司令部から馬車に乗って帰り道。

「小父さん?エミーリアさんてカッコいいですね!」

「そうじゃろ!わしが教えた中では一番の槍遣いじゃ!そして皇帝陛下のお側に

 使えている。わしの教え子から、そんな人物が出るとは思わなかったんじゃ」

「そうなんだ、じゃあ私もエミーリアさんみたいになれるように頑張ろっと!」



ギルド事務所近く。

「じゃあ事務所に行ってくるから、私はここで」

「ああ、遅くならないうちに帰ってお出で」


今日は弓使いのローザだけ。

「フェリーチェじゃん!どこ行ってたの?」

「さぁどこでしょう?この正装みれば解ると思うけど」

「うーん、解らんなぁ・・・」

「第一騎士師団司令部に行ってたのよ」

「なんでまた?」

「S級騎士に昇格したときに、師団長閣下から勲章貰った話したでしょ」

「ん、聞いたよ。それだけでも凄いけどね」

「その後閣下から来てくれ!ってジョナサンに手紙が来たんだ」

「それで行ったってこと?」

「そう、その帰り道にここへ寄ったってこと」

「師団長閣下っていかついおっさん?」

「いやぁ・・・まだ25歳のモデルみたいな女性よ」

「へぇ凄い人がいるもんだねぇ・・・一度お目にかかってみたいもんだわ」


やがておやつ時。

「ねぇパフェ食べに行かない?」

「あ!いいね、行こうか」


大通りに面した一角に、その店「カフェ・ジョイ」があるのだ。

コーヒーの美味さもさることながら、この店のウリはパフェ。

アイスクリーム主体に、小さく切られたカステラをクリームでコーティングし

その季節に合わせたフルーツが乗っているのです。

この時期だとリンゴ・オレンジ、ブルーベリーがふんだんに使われていて、

でもしつこくなく、比較的あっさりしているから、大き目のグラスであっても

女子が普通に食べきることが出来るのに、比較的安いので人気なのです。


二人でパフェを食べながら、喋っていると、

わたしの幼馴染、マリアンヌが入ってくるのが見えたので「マリ!」って

声かけたんですけど、こっちは見ずカウンターの奥にちょこんと座ったのです。

何だか表情が暗いんですよねぇ・・・


「ちょっとローザ、外すね」「あいよ」


「久しぶり、マリアンヌ」

「あ、ああああ、フェリーチェ?うん・・・久しぶりだね」

「どうしたの?なんか表情が」

「そう見える?」

「見えるよ」

いつも明るい笑顔のマリアンヌだけど、今日はどんよりした顔でカウンター席に。

「なにか有ったね?」

「実は・・・」と話し出したマリアンヌ、

何時の間にかローザが食べかけのパフェをもって隣に座っていたの。

マリアンヌは帝国軍参謀本部で騎士団の管理をしている部署に勤務していて、

エミーリア大佐とはまた別の第四騎士師団に勤務する、

A級騎士ロドルフォ=ラインヴァルト・マイアーと交際しているのだけど・・・

「マイヤーが地方師団に転勤になっちゃうって。ねぇどうしたら良いと思う?」

「仕事であれば仕方ないよねぇ、ずっとなの?」

「それが・・・」

マイヤーってなかなか第四師団長からも一目置かれている騎士だそうで。

「地方で経験を積んでくるっていうことみたいなんだけどね」

「それは、彼が今後師団幹部とか軍司令部幹部へ昇進するための足掛かり。

 そんなことじゃないのかな?そのため経験を積んで来い!ってことでしょ?」

「そんな彼がいるなんて羨ましいっすよ!うちらからすれば」

「そんなものかなぁ・・・」「そうよ」「そうっす!」

マリアンヌの表情にも、ようやく安堵の色が見えたので・・・

「マリもパフェ食べない?せっかくだし」

「そう疲れたときは甘いものっすよ」

「じゃあ、いただこうかしら」


マリアンヌの前に「さぁめしあがれ!」と店のオーナーシェフが置いたのは

綺麗な色をしたサクランボが乗っていた・・・「サービスですよ」

「あーいいんだ!ローザにも下さいな」

「だーめ!これは心がつかれた女の子のためだよ」

「うーん、ローザもつかれてんだけど・・・」

「ははは!そんな風には見えないよw」


しばらく3人でパフェを食べながら近況など話していると。

「そうなの、仕事は書き物が多くて、目がつかれるのよ」

帝国軍参謀本部騎士団管理室というのは多くの騎士団や王宮を相手に書類を作ったり

手紙を書いたりといろいろ書くことが多いんだって。


「目に良いくだものとかないかしら」

ようやく普段の明るい笑顔のマリアンヌに戻って来たので一安心。

するとカフェのオーナーシェフが

「そう言えば、目に良いとされる果物がこの先の山の中に沢山自生しているらしい」

カフェの看板娘アリーネが「ギルドに依頼してたよね、シェフ?」

「ああ、そうだった。ギルド事務所に依頼してたよ。うちの店で出したいからね」

「ローザ、事務所行ってみようよ。まだ依頼中かもよ」

「あーね!」

「じゃあいっぱい取ってくるよ!」

マリアンヌもオーナーシェフもアリーネも笑顔で見送ってくれました。




「あーこれかな?」

ギルド事務所の依頼掲示板には【ミヤスミレの採取、謝礼1,000,000ガル】

「1,000,000ガル!これはすごいな、しばらくは遊んで暮らせる金額だよ」

「ちょっとまって、先を読むよ」

【ただし当地アルトザルミアには魔物多数目撃情報あり】だそうだ

「だから、どこのパーティも行ってないのかな?」

ちょうど事務所へ来ていたアルベルトも依頼を見てそう言った。

「俺たちのパーティで行ってみるか?」

「行きましょう!」


【あすギルド事務所へ集合!】と連絡してっと

「ナターリア、この依頼の事だが」

「これですか?うーん・・・この魔物のことですけど・・・

 それほど強力ではないのですが、とにかく数が多いのです。

 なのでどこのパーティも引き受けたがらないのです。

 レッドストームのみなさんなら瞬殺だと思いますが」

しばし考え込むアルベルトだが、

「その代わり報酬はそれなりに・・・」

「解った、じゃあ明日にでも出発するよ」

報酬はそれなりにと言う言葉を聞いてアルベルトは即答した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「じゃあ出発!」

ギルド事務所のスタッフに見送られて、

アルベルト・ラインハルト・マルガレーテ・ローザ、そしてフェリーチェ。

5人が馬車に乗ってアルトザルミアに向けて出発していった。



第4話 完



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