第3話 昇格試験を受けましょう

「フェリーチェ、そろそろ試験を受けてみてはどうか?」

わたしの槍の師匠、ジョナサンから言われたのだのですが。

「おぬしはまだA級ではないか?他のパーティメンバーはどうなんだ?」

「えー・・・っと、A級は私だけかな?みんなはS級だったかな?」

「だったかな?ではいかんぞ!おぬしがパーティの足を引っ張らないように

 昇級試験を受けてみてはどうか?と言うことなのだが」


S級パーティにいるのにA級騎士では確かにダメだよなぁとは思うけれど。

「師匠?でも今のままでも十分、クエストやギルド仕事には対応できてます」

「それはな、他のメンバーがおぬしを助けているからじゃよ」

「そうかなぁ・・・前衛のアルベルトに助けられていることもあるけど・・・」

「それ見なさい!それは足を引っ張っていると言うことじゃぞ!」

「わ!わ、わかりました!考えてみます」


騎士の昇格試験は年2回、帝都エーケデリアにある【帝国騎士養成学校】で行われる

この国では騎士(重騎士)・弓師・魔術師・魔法師の職種養成学校があり貴族階級は

かならず職種ごとの養成学校に入学することが義務になっているけれど、

平民階級でも選抜試験を受けることで入学が許されることになっているのです。

そして優秀は生徒は軍士官として帝国軍に入るため【帝国軍士官学校】に入学する

ことが義務なのね。


でもそれは貴族階級だけで平民階級は、士官にはなれないから、そのまま帝国軍の

一般兵として入るか、私たちの様に冒険者としてギルドに所属するかってことね。


平民階級で養成学校を出た場合の多くは

帝国軍一般兵として戦闘に従事する人が多いみたいです。

だから養成学校から冒険者になる人は、思いのほか少ないのです。

冒険者になるのは簡単で、腕に覚えがあればギルドに登録するって言う至極簡単な

方法で、既存のパーティに加わったり、ソロで活動したり、新たにパーティを組む人も居たりします。

最近はギルドの仕事の方が稼ぎが良いようで、冒険者登録する人が増えています。

稼ぎもさることながら、ギルドへの貢献度が高ければ、その人のレベルが上がり、

場合によっては貴族階級への編入もあり有るので、レベルに合わない貢献度の高い

依頼を受けて死んでしまう人も居たりします。


わたしの場合は、平民階級なので騎士養成学校の選抜試験を受けて勉強して来たの。

そこの先生が、今の師匠であるジョナサンで、それからずっと槍遣いを教えてくれているのです。


なんで騎士にって?


だって・・・カッコいいじゃないですか!

パーティの先頭に立って魔物と戦うとか、もっともパパもお姉ちゃんの騎士だったの

だから、憧れでもあるんですよね。でも二人とも、もう騎士は引退しちゃったけど。


「じゃあ行ってきます」

「がんばるのじゃよ!」


騎士養成学校に行くのはしばらくぶり。

ここで1週間の研修をうけてから試験があるんです。学科と実技。

学科は普通に研修を受けて勉強すれば合格しますけど、実技がねぇ・・・

指導教官相手に勝つことが、いかに難しいか。


今回指導教官を務めるのはエミーリア大佐。

まだ若干25歳ながら帝国軍第1騎士師団長を務めるエリート貴族。

「では学科試験を始める!用意!開始!」


「終わりだ!回答用紙を回収する!」と言うとエミーリア大佐の従兵たちが

回答用紙を集めて大佐へ提出していた。「結果は明日、合格者のみ実技試験だ!」


私は運よくというか、それなりに勉強したので学科試験は合格したのです

「合格者はこれだけか?」100名くらい受験して合格したのは20名・・・

「ではこれから騎士実技試験を始める!名前を呼ばれた者は前へ!」

ほとんどが男性でどうみても20歳以上のようで、私の様に16歳と言うのはいない。


「次!フェリーチェ・ミストラル」

「はい!」

「貴様何歳だ!」「16歳であります!」

「ずいぶん若いな、誰に槍を教わったのだ」

「ジョナサン・マルロー師であります!」

「おお!ジョナサン師か!懐かしい名前だ。師はお元気か?」

「はい!毎日槍を磨いているようであります!」

「そうか!ではジョナサン師へよろしく伝えてくれたまえ!」「はっ!」


一通り槍遣いを指定された通りに大佐の前で実際に行って・・・

「うん、さすがはジョナサン師だ、貴様の槍遣いは師と寸分たがわぬものだな」

「ありがとうございます」

「では下がって判定を待て!」

「はっ!」


暫く教室で待機していると、エミーリア大佐が従兵と共に入って来た。

「では合格者を発表する」


何人かの名前が呼ばれ「フェリーチェ・ミストラル」私の名前が呼ばれた!

合格ってことね。

「貴様はS級騎士に昇格だ!これからも精進せよ!」

「はっ!ありがたき幸せに存じます!」

S級騎士に合格したのは、今回私だけのようです。

あとはA級が2名、B級が10名の合格者でした。


「フェリーチェは後で私の部屋に来るように」

なんだろう・・・何かあるのかな?それとも・・・帝国騎士師団にってことかしら?


「フェリーチェ・ミストラル入ります!」「入れ!」


窓際の大きな執務机で仕事中の大佐は私が入ると、顔を上げて、こう言った。

「貴様の槍遣い、大変すばらしかった。帝国騎士師団に入団してはどうだ?」

「あ・・(やっぱりその話か)・・・えーっと・・

 私、冒険者パーティに所属していまして。有難いお話しなのですが・・・」

「そうだったのか、しかしその槍遣いを帝国のためにとは思わんか?」

「はぁ・・・大切な仲間がいますし、折角のお話しなのですが」

大佐は暫く考えて

「解った。では貴様はパーティメンバーとして今後も活躍してほしい。

 たまにはここへ来てジョナサン師のことを話してもらえないか?」

「そういうお話しならいつでも」

「そうか、では頼むぞ。それとS級騎士にのみ付与する勲章を授与する」

私は姿勢を正して「有難き幸せ」と言うと大佐自ら勲章をつけてくれたのです。

金色に輝く丸い勲章は赤と白のリボンで彩られていて、つけられた瞬間背が伸びた

気がしました。


エミーリア・エルリーヌ・カリエ大佐

帝国軍第一騎士師団長をつとめる、超エリート軍人である。まだ25歳なのにだ。

美しいブロンドのロングヘア、大きな青い瞳、高い鼻、薄い唇と白い肌に

モデルの様な抜群のスタイル。なのに騎士として常に第一線に立ち、

その槍捌きは、まるでダンサーのようだと例えられるんです。


第一騎士師団は皇帝陛下を直接お守りする部隊であり、常に精鋭騎士が集まっている

そういう部隊なので、この国の騎士であれば、一度は入団を夢見るのです。

わたしですか?そう思ったことも過去には有りました。

まぁ私は平民階級ですからね。無理だと考えましたから、止めました。



「ただいま帰りました!」

「おお!どうだった?」「合格です!」

「これを見てください!」

「おおお!これはS級騎士勲章ではないか!すばらしい!よくやったぞ!」

「ありがとうございます!それとエミーリア大佐が懐かしかっていましたよ」

「エミーリアがか?そうかそうか・・じゃじゃ馬だったあの子がか・・・うんうん」

ジョナサンおじさんは、それからエミーリア大佐との思いで話をえんえんと・・・


S級騎士に昇格できたわけだし、これで難易度の高い依頼が熟せそうな気がします。


そんなある日

「ジョナサン居るかい?」

「ほいほい、なんじゃいな」

「帝国軍第一騎士師団長閣下から手紙が来ているよ」

手紙配達人のエルガが持って来たのを見ると、たしかにエミーリアの名前があった。

「こんな偉い人知ってるのかい?」

「おお知っとるとも、わしの教え子じゃ!」

「そうかい、すごいな。手紙はここへ置いていくよ!じゃあ」


ジョナサンが手紙を読むとその内容は。

【S級騎士に昇格したフェリーチェと共に師団司令部へ出頭せよ】と書かれていたの

「何事だろうね、ジョナサン小父さん」

「うーんエミーリアは知っとるが・・・なにごとじゃろうな」


なにやら不穏な予感が・・・


第3話 完

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