第2話 簡単なお仕事です

「みんな揃ったか!じゃあ出発!」

ギルド事務所スタッフの見送りを受けて、

私たちS級パーティ:レッドストームは出発しました。

アルベルトが御者となり、私・ローザ・マルガレーテが馬車内に、

ラインハルトはアルベルトの隣で周囲を警戒しています。


「のどかねぇ・・・」

「そうね、何もなく終われば良いんだけどさ」

「戦わなければ、それに越したことは無いし」


草原の中の一本道を進む一行。

「どうだ?ラインハルト、なんか変なもの見えるか?」

「うーん何も見えないよ!あ、あそこ!大きな樹の下に小さな家があるよ」

「おお、じゃああそこで休憩するか」


大きな木に馬をつなぎ。

馬車から降りてきた3人と騎乗の2人。

「おやおや、これはギルドパーティのみなさんですかな?」

家から老夫婦が出てきた。

「あ、そうですS級パーティ、レッドストームの者です」

「カニンミラムまであとどの位ですか?」

「馬車であれば、もうあと1,2時間と言ったところですよ」

「そうですか」

「少し、休んでいきなされ。おい婆さん。この方々にお茶を」

「はいはい、どうぞ」


木陰で休む一行。

おばあさんの淹れた紅茶はほんのり、甘く疲れた体を十分癒してくれたのです。

老夫婦のいろいろな話を聞きながら・・・

「マジックボアが出るという話を聞きましたが」

「ああ、あれね、農作物を荒らしてねぇ。困ってるんですよ。

 カニンミラムの周辺の村や集落では被害がかなり出ていましてね、うちもこないだ

 やられたんですけどね、他のパーティの方々に退治してもらいましてね」

そう、カニンミラム周辺の集落では被害が出ていると言うことで、私たちが来た訳で



「どうも、ありがとうございました」

「お気を付けて行きなさいよ!」



やがて教会を中心にしたこじんまりとした街が見えてきた。

ここがカニンミラムという街のようですが、帝都エーデケリアに比べる程でもなく

地方に存在する、極々普通の小さな町と言ったところです。


「じゃあ、この街のギルド事務所へ行ってみよう」


「いらっしゃいませ」

「帝都エーデケリアから来ましたS級パーティ【レッドストーム】のものです」

「あ!帝都から!ご苦労さまです、今日はひとまずお宿の方へ」

「マジックボアのことで来たのですが。状況はどうなんですか?」

「その事でお出でなのですね、はい、マジックボアの被害は大きくて

 今年の麦の収穫がいつもの半分以下程度になってしまいまして・・・」

「なるほど、最近も出没していますか?」「はい」

「ここから東に少し行ったところに、ホキと言う集落がありまして、そこが被害の

 大きなところで、昨夜も20頭ほどのマジックボアが出たと言うことです」

「20頭・・・」

案外数は多いなぁって思ったのです。その時は、でも実際には・・・


「じゃあ明日からマジックボア退治に行きましょう!今日は宿の方へ行きます」

「よろしくお願いします」


「静かね」

「マルガレーテもそう思う?」

「そう、エーデケリアに比べればね」

「食事も美味しいし、ここにずっといても良いかも」

「そうだね、ローザは?」

「うーん良いとこだけど、あたしは帝都の方がいいな。何て言っても・・・

 美味しいパフェが食べられないんだもん!!!!」

「結局食欲なのねwwwww」


部屋の片隅でアルベルトは盾と大鉈の手入れに余念がない。

パーティリーダーの彼に、メンバーみんなが全幅の信頼を寄せているの。

この人の為なら死んでもいいって思う。それはみんなそう思っているくらいよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おはようございます」

宿屋の主人が起こしに来たんだけど、まだ眠いよぉ・・・

ローザもマルガレーテもベットの中で、もぞもぞ動いているんだよねぇ。


「さぁ起きろ!食事だ!」

アルベルトが無理やり布団を引きはがす。

「いやぁぁぁぁ・・・・アルベルトのエッチ!」

「早く起きろ!食事出来てるぞ!」


着替えて食堂に降りると、美味しそうな香りがプゥ~~~~ンとする訳ですよ。

「朝からこんなに!」

イノシシ肉のステーキに、香味野菜のサラダ。パンと紅茶は飲み放題!!!

「もうこんな御馳走なんて帝都で食べたら・・・10000ガンズくらいはするかしら」

「うーん美味い!うますぎる!」


部屋に戻って、装備を確認してから出発「お世話になりました」


ギルド事務所へ行くと見慣れない人物がいた。

「あ、おはようございます。こちらはマジックボアの出没場所に近いところに

 お住まいの方です。詳しいお話しは彼から聞いてください」

「ビジーカと言います、麦作農家でして・・・」

彼の話ではマジックボアの出没は夜が多く、寝ているうちにやられてしまうらしい。

「近所の農家も、ほとんど奴らの所為で収穫量が、

 いつもの5分の1くらいになってしまって困ってます。どうか退治して下さい」


実際、襲われた場所へ出向いて様子を見ることになって。

「あらぁ・・・もうこれは収穫できないわねぇ」

「これでは・・・パンも値段が上がるのかしら?いろんなものが値上げしてるのに」

その足跡を見ると、想像していたモノより、少し大きくないか?

「だよな、俺もそう思う。足跡を追ってみよう」

その足跡は複数あって、森の方から着ているようだから、その中に巣というか

そんな場所があるのだろうか。


やがて森の中央と思われる場所にたどり着くと、岩山のふもとにある洞窟から

どうやら、そいつらが出てきているようだ。

「うん、場所は特定できた」

「他にもあるかもしれない、少し周りを見てみよう」と言うアルベルトに従い歩くと

同じような洞窟が複数あるのが解った。そこにも若干の足跡が見つけられた。


「とりあえず場所は特定できた。後はどうやって退治するかだな」

「ボクの魔術でマジックボアを早く動かないようにして、やっつけるというのは?」

「で私の弓で射殺する」とローザ

私は「槍を使って突き殺します」

「じゃあ俺も鉈で真っ二つにするか」


「マジックボアの出没は夜だ。それまでここで野営する。では準備にかかれ!」

アルベルトの号令一下、メンバー全員でキャンプ設営が始まりまして・・・


「よし、これで良い。しばらくここで休憩を取る。夜まではゆっくり休むように」



やがて夜になり

遠くでオオカミの遠吠えが聞こえるのですが、あれって不気味でイヤですよね。


「そろそろ起きろ出動だ」


今夜は星が見えないほどの暗闇。

でも私たちの鎧には暗闇でも光る、特殊なマークがしてるのでわかるんです。


うううううーーーーーーなんか吠える声が聞こえます。


「ラインハルト、そろそろ魔術師の出番だ!」

「了解しました」


森の中にポツンと佇む岩の上に立ち、ラインハルトが詠唱を始めると・・・

ぞろぞろとマジックボアが洞窟から出てきたのだけれど。

その動きは本来のマジックボアのものではなく、ずいぶんのっそりとしたもので。

「よし!攻撃開始!ローザ頼むぞ!」

「了解!」

ローザは後方から次々に弓を放つ。その弓は百発百中。

取り逃がした奴らを今度は、私フェリーチェが槍で突き殺し、

アルベルトは大鉈で真っ二つにしていたのです。


でも現れるマジックボアが、次々に洞窟から出てくるので・・・

「えー!まだいるの?」

「そんなにいるんかい!」


戦闘開始から約1時間ほど、「はぁはぁ・・・やっと終わったかな?」

「じゃあ俺は洞窟の中を見てくる」「気を付けてアルベルト!」「おう!」

ランプの明かりを頼りにアルベルトとラインハルトが洞窟へ入っていく。


ものの15分もすると、二人が洞窟から出てきた。

「中はもぬけの殻だ。もう出てこないはず」

「でもどうする?これだけマジックボアの死体が有るんだけど」


マジックボアの肉はジューシーで美味いし、皮はバックやブーツの資材に使える。

「みんなで解体するか?」「は~~~い」

メンバーみんなで30体ほどのマジックボアの死体を解体するのです。


「これだけあってもなぁ、持ち帰るのは大変だぞ」

「肉は地元の市場で売っちゃいましょうよ」

「そうだな、じゃあローザとフェリーチェ、マルガレーテは市場へ行って売ってきてくれるか?」「いいですよ!じゃあお二人は持ってきてくれます?」「OK!」


「じゃあ朝まで休憩!」



回りが明るくなってきて、チュンチュンと小鳥が鳴いています。

精一杯背伸びをして起き上がると、すでにアルベルトとラインハルトは出発準備。

「ローザ!マルガレーテ!起きろ!そろそろ行くぞ!!」

「ふぁ~~~い!」


マジックボアの肉と皮を馬車の屋根に乗せて街へ戻る一行は市場で肉を売ることに。

「新鮮取れたてのマジックボアの肉だよ!今日は特別価格でご提供するよ!」

「おおこれは、なかなか素晴らしい肉ですね!買います!」

「私も」「ウチにも」あれだけあった肉も、あっという間に売り切れ!

「ずいぶん稼いだな。いくらくらいある?」

「ざっと数えても20万ガンズがあるようですよ」

「20万!すげぇな。それだけあればしばらく仕事しなくても・・・」

「だめ!そんなことしちゃダメよラインハルト。ボケちゃうから」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ただいま!」

帝都エーデケリアに戻って来た私たち【レッドストーム】

ギルドマスターのレオニードとナターシャが待っていた。

「おつかれさまでした!みなさん。話は後で。さぁさぁ、こちらへどうぞ!!」

とレオニードに連れられてやってきたのは

「ここです!」

見ると大きな池から湯気が立っている。

「これは異世界の二ホンと言う国にある“オンセン”というものです。

 裸でこの中に入ると、疲れがスーッと抜けて行きま、温かいので血行もよくなり

 身体の不調も、すっきり取れるのですので、どうぞお入りください」


はだかで入る???

女子は、見ている前で裸になるのはちょっと・・・

「女性と男性で入る時間を変えます、あとまわりを塀で囲ってますので

 外からは見られないようになっています」


ローザもマルガレーテも、そして私。

「みんなの前で裸は、ちょっと・・・」

「そう?わたし行くわ!」と言うなりローザは、あっさり裸になってお湯の池へ!

「おおおおおおおおおおおお!!!!気持ちいいいいいい!!!!みんなも早く!」

「じゃあ、い、行くよ!」

意を決して素っ裸になるマルガレーテとわたし

「あああああ!!!!気持ちいいいいいい!!!!これは良いわ疲れが取れる!」

「このお湯の池を作ってって言う異世界の二ホンと言うところは凄いな!

 こんなの作るとか、なんか一度行ってみたくなったよ」


お湯の池から出たり入ったり。ホントに気持ちが良かったんですもの。

それに作った場所がいいですよ、お湯の池のすぐ横を小川が流れていて、

水の流れる音で、癒されるんですよねぇ・・・気持ちよすぎです。


「じゃあそろそろ男子入れるんで、出てくださいね」

男子2人がそろって脱ぎ始めるんですよねぇ・・・レディの前で!ダメですよ・・・


中から、おおおおおお!!!!!とか気持ちいイイイイイイイとか聞こえてきます。そりゃあ気持ちいいですよね。


「他のパーティにも使わせてやってくれよな」

「解りました。では今日はこれまでですね」

「ああ、おつかれさん!」


第2話 完


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