鴉
昨地球日のコト、コトコト。
この宇宙店主が、地元で在るシマをトコトコと散歩して居ると、歩道の隅っこにカラスの死骸を発見した。
両目が無い状態。
恐らく御目目の部位が一番美味しいから、美食家の他のケモノに喰われたのか?ゼラティン質で構成されて居るから、家主が憤死した余波で其の形を保つ事を出来なくなり、ホロホロと地球時間を掛けて溶けてしまったのか?
理由は分からない。
道行く地球人達は、一応はカラスの死骸に視線の照準を合わせるモノの、皆一様に自前の黒電話を弄ったり、黒電話の受話器越しに誰かと会話をしたり。我関せずの姿勢を貫き、黒電話を片手に去って行く。
(目の前のカラスの死骸の存在よりも、黒電話を弄る方が大事なのか?)
(彼等は一体誰が死んだら、その御手手に握って居る黒電話を弄る事を止めて、正気に戻るのか?)
チト地球人読者の皆さんも一度、黒電話を持たずに地球上を闊歩して欲しい。視線を擦れ違う地球人達に焦点を合わせて。
恐らく殆どの地球人が、黒電話を弄りながら歩いて居る筈。
異常な光景。
宇宙店主。
このカラスを引き取って、地球の地面奥深くに埋めてあげよう、一瞬思った。
「ガ、止めた。」
(若しかしたら、このカラスの死骸を喰らいにやって来る、腹を空かせた飢えた小動物や、虫達が居るかも知れない..)
以前の宇宙店主で在れば、カラスを埋葬したと思う。
今は違う。
今回の決断が正しいのか?
正しく無いのか?は分からない。
「ガ然し、自分でも知らない深層世界の中で、何時の間にか、地球時間を掛けながら、自身の思想が緩やかに変化をして居る事に驚いた。」
昨地球日は其のカラスの死骸に教えられた、貴重な一地球日となった。
「アンガト、鴉。来世では友達になろうね。」
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