第三話 宇宙店主、今地球日のシバシバ。一〇月〇七日二〇二四年

 秘密がチト多めの宇宙店主、この事実は大っぴらに告白しても構わないだろう。

「行き先が一切不明、宛ての無い、ぶらぶらブラリンコ地球散歩が大好き。然も携帯電話は持たないで。」


 ついコノ間の事だ。

 ぶらぶらブラリンコして居る最中、アスファルトの中央ド真ん中、その舞台の上でケモノの死骸を見た。道路を横切る際、車に轢かれたのだろう。下敷きに再利用出来る位に、ペッチャンコだった。其の姿からすると、ドブネズミだろう。細長い尻尾が死骸に付いて居た。


 この宇宙店主。

 死者には必ず祈る。

 其の祈る対象は、地球上に生きた全ての生き物。極悪非道人で死刑宣告を受けて、亡くなった者も同様。自らの生命を差し出し、罪を清算した聖人。其れ等、全ての魂に対し、北の方角に向かっては手を合わせる。


 其のドブネズミの死骸の廻りの世界、忙しなく闊歩する地球人達、飼い犬と一緒に歩く地球人の姿もチラホラ。野生化した鳩も数多く生息して居る、宇宙店主が住む地球の某地域。

 違法麻薬でアタマを完全にヤラれた地球人の姿をして居る、獣以下の下等動物に成り下がった乞食達もワンサカ。

 彼等の現住所は地球の路上。彼等に手紙を送ったところで届く事などは決して無い。恐らく自分が産まれた住所でさえ、記憶の中から抹消されて居る事だろう。あそこまで脳味噌がイカれてしまうと、もう末期。救いようが無い。

 宇宙店主は、綺麗事が一切嫌いな強気な姿勢。

「あんな奴等は、トットと死んだ方が良い」

 発言すると、廻りの地球人達は煙たい表情を示す。意味が全く理解出来ない。道には乞食達が残した大便含めたゴミが散乱。小便臭い道も多い。とても不快。

 

 翌る日も、例の下敷きドブネズミの事が気になった。

 通常で在れば、毎日必ず、散歩をする道を変える主義の宇宙店主。過去の自分から学ぶ事など一つ無い。今日の自分は新しい自分。だが、チト例の道に行ってみた。

 (居た居た..)

 昨日に比べて、若干、形が変化して居る様に思えた。そして小蠅がチラホラと死骸の周辺を舞って居る。


 次の日、其の身体は現在進行形の様だ。沢山の四輪車のタイヤに潰されて、更に変化して居た。確実に身体の面積が小さくなって居る。

 

 動向がチト気になっては、毎日通った。最初の頃に見た小蝿達は、既に見事な大人の蠅に成長を遂げ、未だドブネズミの周辺を旋回中。顔見知りになった。

「お勤め、お疲れ様です。」


 其の日、やっと気が付いた。

 このドブネズミの死骸は、決して風化に向かって居る訳などでは無いのだ。何者かが、この宇宙店主が知らぬ間に、肉体を喰って居るのだ。

 最後には骨だけの神々しい姿に進化したドブネズミ。其の骨だって、喰えば骨を強くするカルシウムに変わる。

「だから喰ってやった。」


 自分が全く知らない所で、自分が全く知らない世界が動いている。


 合掌、

 ドブネズミ。

 来世は地球上の覇者、人間に生まれ変わったらイイね。

 

 アディオス。

 

 

 宇宙店主

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