第17話 実は第一話から今作までの間に、僕達『意識』の数地球人、死んでいます。ハナシが長すぎて。
「アア!ちょっと待って!待ってよお!後もう少しで、脱衣所がマッキーの黒で描き終わるからさ!もう少し位待てないの?『意識』のクセしてさぁ」
「?..あの、ミ..ユキさん?..」
「ン?なに?」
「あのお、さっきから、ずっとミユキさんが『無』のキャンバスに一心不乱に描いてるのって、シャワーヘッド。..ですよね?」
「そうよ、..だから、ナニ?」
「僕達の記憶が正しければ..確かコレからお母様が待っていらっしゃる茶の間の方で、今作は展開して行く..と思っていたのですが..。となれば、普通だったらミユキさんが描く背景画って、最低でも玄関口..なんじゃないんですか?すッ、スミマセンっ!若しも生意気にも出しゃばった様な事を言ってしまったら!」
「キャハッ!バレてた?」
「ウン、そう。さっきまではさ、そお思ってたの。けどね、私って女の子じゃん?仕事からお家に先ず帰って来たら、女の子って一体初めにナニする?」
「ア、..いいえ、チト分かりかねますが..。あのぉ、僕の其の時の地球人彼女の場合は、帰宅早々にパンティストッキングを脱いで、ソノ脱いだ後の自分の足の指の間を、腰を最大限に曲げて、只ひたすらにクンクン嗅いで居たのを今でも強烈に覚えてます。」
「ップ!」
「ちょっとソレっ、生々しい告白ね。ワタシ、予測全然して無かったから、今一体どうやって返して良いのか分からないけど。ウケる!」
「じゃあさ、ソコのさっきから全然喋んないアンタ。アンタの彼女は?」
「っへ?ボ、ボクですかぁ?キュ、急にミユキさんに振って来られても、何て言っていいのか..。あの..僕、ただコノ『意識』の集団の中で浮遊して居るだけでイイって、言われて来ただけで..」
「あっ、っそ。フゥゥん、サクラ、って云うヤツね。私そう云うの嫌いなのよねぇ..一本、こう、芯が通ってない感じがしてさ。」
「..は、はぁ..スミマセン。ツイツイ良い誘いに乗っかってしまいまして..」
「ナニ?なによ、イイ誘いって?」
「この『ミユキ、職安で働いています。』に出させてあげる、って声を掛けられて..。ナンカこう..こんな僕でも目立つ事が出来る..かな?って..」
「フぅン、そぉ」
「でさアンタ、私は女神(創造神)だから、宇宙世界で知らない事なんて無いの。自殺したんでしょアンタ?何で自殺なんてしたの?」
「は、ハイ。もう無性に寂しくて寂しくて..。生きて居る間は、誰からも気にして貰えた事が無くて..もしかして僕は人間だって思い込んでる、路肩の石ころなんじゃないか?って..」
「で、方法は?」
「アッはい!飛び込みですっ!電車の。あ、あの。地下の方ですけどッ!」
「アンタ、地味な感じにも拘らず、随分と大胆な事したんだねぇ?」
「ハハっ、多分。ですけど..チト、アタマがオカシカッタんだと思います。ずっと僕は石ころだ、只の石なんだ、って、ずうっと思ってましたから。だから如何しても試してみたくて..電車に飛び込んじゃいましたぁ!」
「ヤルぅ!」
「ですがねぇ..地球人人生の最後は、一体何を観て終わるんだろう?って思ってたら、地下鉄のプラットフォームのタイルの壁に、沢山の大きな写真広告が貼って在りますよね?」
「うぅぅん..ゴメン!ソレに関して云えば、この私でもチト分かんない。地球観光する時は『意識』で飛行するから、地球人の一般的な移動手段の乗り物には使った事無いの。ゴメン!」
「けどさ、あんな鉄の車輪や、ゴムのタイヤを付けて走ってる乗り物を活用してんのって、宇宙世界の中でも地球人類民族だけよ。」
「アッ、いえいえ!良いんです。こっちも何だか地球の低い文明の理解を、無理矢理ミユキさんに押し付けてしまったみたいで、御免なさいッ!」
「..プッ!」
「なんか..アンタ可愛いじゃん!名前、なんての?」
「..ミチオ、ミチオでした。何時も、“オイ”とか“虫”とかって言われて、誰からも名前を呼ばれた記憶、無いんですけど。ミユキさん?僕って本当にミチオですよね?」
「うん、アンタはミチオよ。オッケー!じゃあミチオ、続けて」
「ハイ! 線路に飛び込んで、地球人人生一番最後に僕が肉眼で観た光景が、“オヂサン”。だったんです。」
「オ、ヂサン..?」
「はい..あのオヂサンです、良くある」
「たまたま偶然、視界の中に入って来たのが、街金融の広告だったんです。其の広告の中に写って居た、広告塔のオヂサンと、終始目が合ってしまって..それが最後でした。」
「プッ!オッカシイ、その話!ウケる。」
「けどさぁ良かったジャン。自らの身を張ってさ、自分は実は“石”じゃなかったって分かったんだから」
「けど、其のオヂサンの話には、この私でもチョットだけ同情しちゃうかな」
「ミユキさん、何だかスミマセン、こんな暗いお話、ココでしちゃって..」
「うぅん、ミチオ。良いの。元々ね、この『ミユキ、職安で働いています。』の趣旨は毎回一話完結で、正義の宇宙人女史の私が、前世で悪い事一杯してきた地球人達を、来世どうしようも無い“モノ”に転生させて、地球人読者、皆一同でスッキリするって云う、痛快宇宙世界活劇の筈だったの」
「この宇宙空間に予定調和なんて無いのよ。覚えときな。」
「けど私、気に入った、ミチオ。アンタねぇ、この第十七話が終わったらさあ、その『意識』の集団から抜けて、私のブースの列に並んで浮遊して待ってな。悪い様にはしない、このミユキの名にかけて。」
「私の職安星は、この私ん家がある惑星でえ、ブースの番号が四六四九番。ヨロシクうッ!」
「ミユキさんっ!あっ、有り難う御座いますッ!うわあ、ヤリい!自殺してホンット良かったあ!」
ゴメンね、皆んな。
待ってるでしょ?
それは私も一緒。
今ね、約二五八〇地球字くらい喋ってる。
ホントはね、毎回八〇〇地球字位で、お茶を濁そうって思ってたんだけど、ダメねぇ私ったら。
やっぱ期待に応えて、モットもっと、ってなっちゃう。
ミユキ、これからマッキーの黒 極細 油性で、シャワーヘッドの水が出て来る穴を、テン、テン、テン、と叩いて描いていきます。
話しかけないでね。
「男性諸君、私の濡れ場、チト期待してるでしょ?」
ミユキ
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