第10話 「ナンカ、ミユキと一緒に居ると気が狂いそう。」

 今さあ、仕事場を出たところなんだけど、“熱い”。“暑い”の地球人語の方じゃ無くて、“熱い”の方。暑さが厚さを増して熱い、そんな感じの私の住んでる惑星。

 ワキの臭いがチト気になる私。

 

 私、アナタ達に、ザックリと此処の『第五職業安定所星』の風景を教えたと思うんだけど、覚えてる?

 覚えてたら教えて?私に。

「キャハッ、私、忘れちゃったァ!」

 

 フムフム..

『空がムラサキ色で地面がミドリ色』

 ってヤツね。アンガト!


 今宇宙日は、もうホンット熱っつくて、空のムラサキ色が熱で溶けて来て、ムラサキ色が地面に垂れて来てんの。そんでね、そのミドリ色の地面も、熱でグッチョグチョ!

 空もムラサキが溶けて剥がれてきちゃってさ、本来の宇宙の壁が見えちゃってるもん。



「ハイ!イラッシャイマ、あ、ミユキさん!今お仕事帰りですか?」

「ウンそう。もうクタクタよ。」

「駄目ですよォ、ミユキさん!そんなアンマ無理なんかしたら!」

「分かってんだけどね、多分これ性格なのね。ついつい張り切っちゃって..」

「ところでさ?カズヤ君。今宇宙日の出勤前に買った『透明味の透明おにぎり』。全然味が無くって、スっゴイ美味しかったよ!」

「ほらぁ、ミユキさん!だから僕言ったじゃ無いですかァ?!モトモト物体の無いオニギリを、美味しく食べれるのはミユキさんしか居ないって!ミユキさんの御目は高いっ!」

「ウン、まぁね。私、こう見えても舌には自信が在んの。」

「折角だから、又買っておこうかしら?アレ。未だ在んの?カズヤ君。」

「ハイッ、勿論!あの商品は永遠に売り切れませんよ。何せ、元々が存在して居ない商品ですから!」

「オッケー!じゃあ二つ頂戴。後さあ、さっき此処に来る迄に、同僚達とパンティストッキングの話題になってさ。なんか欲しくなっちゃった。何か良いの入ってる?」

「ええ!?ミユキさん、この前もココで買ったばかりじゃないですかあ?又必要なんですか?」

「別にそんなに今必要!って訳でも無いんだけどさ。パンティストッキング、何故か集めちゃうのよね。」

「何て云うかぁ、あのツヤ?テリ?スッゴイ惹かれるものがあんの。ブリの照り焼きみたいな感じ?ウウン、履かない。私個宇宙人では絶対に穿かない。だって蒸れんじゃん?」

「ヘぇ..成る程ォ..まあ宇宙人、皆んな価値観が其々ですからねえ。」

「..!」

「っあ、アレ!カズヤ君、あそこの壁に掛かってる、あの見えないパンティストッキング。アレって何!?新入荷?!」

「もぉミユキさあんッ!スゴイ!凄すぎですよおッ!アレって僕、たった今創造したばかりの新商品なんですよ?!もう見付けたんですか?超早いよミユキさん!」

「キャハッ、そんなに褒めないでよ!私ってズに簡単に乗っちゃう性格だからさァ!」


『🌞サウナ太陽 監修🌞 マグマ風呂を其の場でパンティストッキン、グウ! 限定版』


「カズヤ君?この“パンティストッキング”の“グウ”って、地球人民族が良く示す、あの例の“グウ”?」

「あはッ!そうですよミユキさん、あの“グウ”ですよ!“パンティストッキング”と“グウ”を掛けたんでしょうね。ウケますよね!」

「コレって..あの『サウナ太陽』?」

「ハイそうです!あそこと『ワコール』が共同で手掛けた、最新作のパンティストッキングみたいですよ。」

「アソコねぇ..あそこの『マグマ風呂』で私のお父さんが働いてんの。」

「エッ?そうなんですか?だったらモット早く僕に言って下さいよおッ!?僕、『サウナ太陽』の常連で結構通ってますよ。三億地球年に一度の頻度で。あの『マグマ風呂』、気持ち良いんですよねェ..」

「ウン!分かる分かる。溶けちゃう位にスッキリするわよね!」

「うちのお父さんもさぁ、初めて『サウナ太陽』に家族全員で行った時に、あの『マグマ風呂』にハマっちゃって、溶けちゃった。モノの見事に。中に。キャハッ、ウケる。」

「エっ!?溶けちゃったんですか?マグマ風呂の中に?」

「ウン。もうソロソロ宇宙時間だから、お母さんが“帰りましょう。”って言ったんだけど、お父さんね、“気に入ったから、もう少しココに居るから先に帰ってて。”なんて言った位。だからお父さんを置いて、私達で帰って来たの。」

「じゃあ、モウどの位、お父さんは『サウナ太陽』で働いて居るんですか?」

「ウぅぅンとねぇ..どん位だろ?数えた事無いけど、永遠?」

「アッ、永遠..。宇宙人が云う“永遠”って結構な永遠ですよね..其れはミユキさんのお父さん、カナリお気に入りだったんですね..」

「ウン。もうウチのお父さんって、一回決めたら絶対に引かないかんね。じゃあ、カズヤ君?折角だから、あのパンティストッキング、頂いてくわ。一緒にカゴに入れといて。」



 ミユキ

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