第2話 ちゃんと栄養バランス考えた食事をしろよ、ミユキ。

「イラッシャイマセエ!あっ、ミユキさん。お早う御座います!」

「ホンット、何時も元気が良いよね、カズヤ君。お早う!」


 朝の出勤前のミユキは、大抵このコンビニエンスストアーで、其の宇宙日の朝食と昼食とを一緒に購入する。

 ミユキは絶対に自炊をしない。では料理はするのか?と聞かれると、しない。絶対にしない。

 偶に、御手製の手作り弁当を食べたい時が在るミユキ。そんな時は、カズヤのコンビニエンスストアーに行って、白米のパックと、種類が被らない、出来合いの惣菜を何点か購入。家に帰ってから弁当箱に詰める。

 手作り弁当の完成!

「明宇宙日は、コレを職場に持って行って自慢してやろう!」

 

 自宅から、勤務先の職業安定所に出勤する其の途中、何軒かの違う会社のコンビニエンスストアーや、お弁当屋さん、パン屋さんなども点在はして居るが、このカズヤが勤めて居るコンビニエンスストアーの利用率が断トツに高い。

 理由は簡潔で非常に合理的。

 今のミユキになってから、この仕事に採用され、住んで居る場所からの初宇宙日の通勤中、最初に入店した店がココなのだ。

 別に縁担ぎや義理で、足繁く通って居る訳では無い。ミユキはこの店を、第二の家の台所だと思って居る。

 コンビニエンスストアーと云えども、敷地面積はとても広大。店の玄関を入って、先ず四方の壁の全てが見えない。レジスター前のカズヤも、わざわざ拡張マイク経由でミユキと会話して居る程だ。其れを彼女はテレパシーで返す。テレパシーで返答する必要が在るのか?と聞かれれば、ナイ。そんな世界にミユキは生きて居る。


 ミユキの住んで居る世界には、そもそも競争と呼ばれる、資本主義を創る其の源となる、熱い情熱の様な感情もナイ。更々ナイ。

 ミユキが常連の此の店が、職種として、もし分類されるのでは在れば、“コンビニエンスストアー業界”に当て嵌まるだろう。

 当て嵌めたところで、競争相手となる他企業など存在しない。この惑星の連中、自分達もやってみたいと思えば、勝手に現存する会社の屋号を使って営業を初めてしまう。其の屋号とは『コンビニエンスストアー』。カズヤ君コンビニエンスストアーの屋号も、『コンビニエンスストアー』。この惑星全てのコンビニエンスストアーの屋号は『コンビニエンスストアー』。

 其れが一体何か問題でも?

 誰が一番最初にやり始めたかは定かでは無く、社長も居なければ、本社や支店なども無い。店によっては店員も居ない所も在る位だ。扱う商品にしても各店マチマチ、自分達が置きたい物を置く仕組み。何も置かない店も在る。

 この思想は資本主義の感覚では無い。然しそれでは、社会主義や共産主義の様な、この惑星に住んで居る者達、誰もが食いっぱぐれる事も無いか?と云えば、勿論無い。

 社会主義と共産主義の大義名分、 

『この星の更なる繁栄の為に、我々が一丸となって一生懸命に労働をしよう。そして、お互いが同じ分だけの利益をキッチリ均等に分け合おう。』

 其の様な胡散臭い感情も一切無い。惑星地球の過去の歴史の中で実際に、革命下で生まれた革命家経由からの、後の独裁者になった者も居ない。

 この惑星の事は、今はコレ位にしておこう。どうせ、後々にミユキが口頭で、皆さんにお教えする事だろう。

 

 ———ミユキの今宇宙日の朝は、透明味の透明オニギリが二個と、中身が入って居ない事が売りの新進気鋭牧場の牛乳パック。

 (お昼は又その時に考えよ。)

「カズヤ君、今日はこれでお願いッ。」

「アぁぁア、おッとおッ!ミユキさん。サッスガ見る目が良い!これ全部ウチの一押しの新製品にしようと思ってんですよねェ!」

「あら、それホント?嬉しい事言ってくれるジャン!やっぱワタシって凄い。キャハッ」

 一通りの会計を済まし、ミユキは店を出て、今宇宙日も快晴の淀んだ紫色の世界の中を、ユックリと職場に向けて浮遊して行く。遅刻上等。


「今宇宙日は何だか良い事が在りそうね。」


 

ミユキ

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