第7話 更なる力の為に
ラウディーはレイチェルにチームのメンバーを紹介する。
メンバーはラウディーを除いて三人。
一人は大柄の男性で、盾役の戦士ブランドン。
もう一人は、小柄だが、若くして中級魔術師となったリーガル。
そして、最後にラウディーの幼馴染でもあるプリーストのテレシア。
三人ともレイチェルに対し、友好的な雰囲気で挨拶をする。
人と話す事が不慣れなレイチェルは、俯きながらも、小さな声で「宜しくお願いします」と言って、頭を下げた。
第四階層から、第一階層へと向かう途中、モンスターと戦いながらもサウザンドバーズの面々はレイチェルに気さくに声を掛けて来る。
レイチェルは、いつ不意をついて殺そうかと考えていたが、頻繁に声を掛けられるので、たじろいでパニックになり、行動に移せず、うんうんと頷いたり、首を振ったりする事しか出来なかった。
「しっかし、勿体ねーなー。 こんな綺麗な顔してるのに。 誰も助けてくれなか
ったのか?」
「ちょっとブランドンさん! 言い方が悪いですよ! レイチェルちゃんごめんなさい。 悪い人じゃないんですけど、ブランドンさんちょっと口が悪いんです」
「大丈夫。 私は持たざる者だったから…… 石ころとおんなじ。 目に入らないか、目に入っても気にしないか、気まぐれで蹴り飛ばされるかするだけ」
「酷い目にあってたんですね……。 私、レイチェルちゃんが安らかに眠れるよう、一生懸命お祈りしますね!」
レイチェルは「うん」と頷き、とうとう第二階層にまで来てしまった事に焦り始めてしまい、キョロキョロと周囲の様子を意味も無く探っていた。
この辺りのモンスターは第三階層と比べるとかなり弱くなるので、不意打ちをするのは困難になる。
「さっきからキョロキョロしてるけど、何かあるのか?」
レイチェルが首を横に振ると、問いかけてきたリーガルが「そうか?」と、腑に落ちない様子で返事をする。
そして、順調に進んでいき、第一階層への階段が見えてくる。
レイチェルは更に焦り始め、ピョンピョン飛び跳ねたり、そわそわしたりして、その落ち着かない様子は、誰の目から見ても分かった。
「レイチェル? 落ち着かないみたいだな。 もしかしてスケルトンが怖いのか? それなら心配いらないからな。 俺達は第四階層だとエースなんだ。 どんなモンスターが来てもすぐ倒してやるさ」
「……エース?」
「第四階層の常連の中では一番稼いでるって事だ。 勿論実力も一番なんだぜ!」
「一番強い?」
「そう! 一番強い!」
第四階層で一番強いと聞いて、レイチェルは考える。
あそこで最も強い冒険者と言うのであれば、ここで四人相手に戦って勝てればその分、能力を得られる。
戦ってみなければ実力は分からないけど、第一階層でなら殺されても大丈夫そう。
前衛が二人、魔術師とプリースト。
信仰系の魔法は私には効かないから、攻撃出来るのは魔術師のみ。
真正面から戦ってみるのも悪くないけど、先に一人殺すと楽になる。
狙うなら…… やっぱり……
「レイチェルちゃん!」
レイチェルが考え事をしている途中。
テレシアがいきなり大きな声を出したせいで、呼ばれたレイチェルの肩が小さく跳ねあがり、目を丸くしてテレシアを見つめる。
テレシアの顔は、少し悲しそうで、怒っている様にも見える。
そして、そのままテレシアはレイチェルに話しを始める。
「いきなり大きな声だしてごめんなさい。 でも…… レイチェルちゃん、今、何を考えていましたか?」
レイチェルは驚いてしまい、さっきまで何を考えていたのかを忘れてしまっていた。
あたふたしながらも、少し落ち着きを取り戻し、そういえば、誰から先に仕留めるかを考えていた事を思い出す。
それをそのまま伝えてしまうと、不意打ちが出来なくなる。
かといって、行動に移らなければ、このままダンジョンの外へと出て行ってしまう。
レイチェルは少し考えた後、これは丁度良いタイミングなのだと思い、ここでこのまま戦ってしまおうと決意を固めた。
レイチェルが、
そして、しばらくそうした後、テレシアに向かって、か細い声で先程の問いに答えた。
「ウフフ、誰から殺そうかと考えてた」
レイチェルがそう答えた瞬間、サウザンドバーズの全員が武器をレイチェルに向けて構える。
あれほど心配をしてくれていたラウディーも一緒に。
レイチェルはなんとなく、胸にチクリと棘が刺さった様な痛みを感じ、そして頭が冷たく冷えていく様に感じた。
レイチェルは飛んで距離を取り、杖をリーガルに向けてウォーターボールの魔法を放つ!
それをブランドンが、盾で弾きながら前へ出て来る。
ラウディーはブランドンのすぐ後ろからピッタリとくっつき、レイチェルの死角から攻撃を狙う。
レイチェルは霊体なので、物理攻撃は効果が無い。
その為、前衛の二人が迫って来ても特に気にせず、どうやって魔術師に魔法を当てようかと考えていた。
油断しているレイチェルに、前衛二人が飛び掛かる!
そして、リーガルがその二人に向けて “ミスティックエンハンス” の魔法を放った!
ミスティックエンハンスの魔法効果によって、二人の武器が怪しい光を宿した。
レイチェルもそれに気が付き、下級武器生成でもう一つ杖を作って両手に杖を装備した。
二人が懐に入り、レイチェルに攻撃を仕掛ける!
最初の一撃は杖で防ぐ事が出来た。
しかし、二人の攻撃はその一撃だけに留まらず、一切の容赦なく連続で斬りつけてきた。
レイチェルが霊体の体であるにも関わらず、ダメージを負っていく。
堪らず、レイチェルはブラストクエイクのスキルで自らを中心に爆発を引き起こし、その爆風で二人を下がらせる事に成功する。
そして、それぞれの杖を二人に向け、ストーンバレットの魔法を放つ!
二人はそのまま後方へと吹き飛んでいったが、着地と同時に立ち上がって剣を身構える。
「下級魔法なのになんて威力だよ…… テレシア、悪いがヒールをくれ。 ウォーターボールを弾いた腕もイカれちまってる」
「回復が済んだらすぐ距離を詰めるぞ。 時間を掛けるのはまずい」
「そいじゃ、一発お見舞いするよっと!」
身構えるラウディーとブランドンの間からリーガルが杖を構え、レイチェルに向けて “インフェルノフレイム” の魔法を放つ!
広範囲に燃え盛る火炎が渦を巻き、レイチェルに襲い掛かる。
レイチェルはすぐ様、両手の杖を構えて、ダークフレイムの魔法を使い対抗する。
二つの杖から出たダークフレイムの炎は、インフェルノフレイムの炎を飲み込みながら、固まっているサウザンドバーズ全員をダークフレイムの黒炎が包囲する。
容易くインフェルノフレイムを打ち破られた事で、リーガルの
そして、防御を固めている前衛二人に向けて、レイチェルはファイアーボールの魔法を放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます