第3話 スケルトンになった少女は進化する

 レイチェルが攻撃を仕掛けたモンスターはジャイアントバットである。

 攻撃を受けたジャイアントバットは驚き、すぐ様周囲を不規則に飛び回り始めた。


 そして、敵がレイチェル一人だと確信したのか、レイチェルに向けて攻撃を始める。


 ジャイアントバットの攻撃方法は超音波による攻撃であり、周囲を飛び回りながら超音波を浴びせ、相手が弱るのを待つスタイルだ。

 切り札として、吸血攻撃があり、血を吸う事で自らを回復する能力もある。

 更に、ジャイアントバットは毒を持っており、噛みつかれた相手は毒に侵される。


 周囲を素早く飛び回るジャイアントバットに、レイチェルは攻撃を当てられず、よく分からない不可視の攻撃によって傷ついていく。

 大したダメージでは無いが、それを非常に煩わしく思ったレイチェルは、苛立ちを覚え、何としてでもジャイアントバットを撃ち落してやろうと、手に持った武器で奮闘する。


 レイチェルが武器を振り回していると、何を思ったのか、ジャイアントバットはレイチェルに突進して、噛みつき攻撃を始める!


 これをチャンスだと思い、レイチェルはガッシリとジャイアントバットを両手で掴んで、自らの肋骨の間にジャイアントバットを押し込んだ。

 レイチェルも、両手でジャイアントバットを抑え込んでいる為、このままの状態では真面な攻撃手段はない。


 だが、攻撃する方法は一つある。

 スライムを倒して得た “消化液” の能力だ。

 レイチェルは “消化液” による攻撃を仕掛ける。


 骨の体から消化液が染み出してきて、肋骨の内側に拘束しているジャイアントバットが苦しみ始めた。

 脆弱な攻撃だとレイチェルは思っていたが、ジャイアントバットには有効な様で、ジャイアントバットが動かなくなるまでに、それ程時間は掛からなかった。


 ジャイアントバットを倒し、また新たな能力を得る。

 

 “毒攻撃” “超音波攻撃” “音波耐性” “飛行能力” “知覚能力向上” 


 レイチェルが超音波攻撃を使って見ると、不思議な事に喉の奥辺りから超音波を出す事が出来た。

 しかし、音を発する事は出来ても、声は出せない。

 そして、レイチェルは飛行能力も試してみる。


 背中から蝙蝠の翼が生え、それをパタパタ動かすと飛ぶことが出来る。

 しかし、かなり不器用に飛び回る事しか出来ず、ダンジョンの中ではすぐ壁にぶつかってしまう。

 “飛行能力” を使う事を止めると、生えていた翼は消滅した。


 レイチェルは更にダンジョンの奥へと進行していく。

 次に現れたモンスターはビッグマウスハウンド。

 既にレイチェルを補足し、低い唸り声をあげて威嚇する。


 レイチェルはいつもの様に突撃せず、武器を構えて後退する。

 そんなレイチェルに対して、ビッグマウスハウンドはどんどん距離を詰めてくる。

 たまらずレイチェルは体を反転させて、消化液を撒き散らしながら逃走を始める。


 撒き散らされた消化液を嫌ったビッグマウスハウンドは、レイチェルを追うのを止めた。

 消化液のお陰でレイチェルはなんとか逃げ切る事に成功する。

 レイチェルは人間だった頃、犬に嚙まれたり、追いかけまわされたりした事があるので、犬に対して恐怖心を抱いていた為、思わず逃げ出してしまった。


 しかし、レイチェルは冷静になって恐怖心を抱く必要はないのだと自分に言い聞かせ、次に出会った時の為に戦う覚悟を決めた。


 そして、再びダンジョンの奥へと進むと、今度はストーンゴーレムと出くわした。

 ストーンゴーレムの体は大きく、レイチェルと比べるとその差は歴然としている。

 具体的には直立した状態で、高さが二メートルあり、体は一般的な成人男性よりもかなり幅が大きい。


 そんな巨漢のモンスターに対して、レイチェルは物怖じする事なく突撃し、攻撃を仕掛ける。

 レイチェルは、直感的にこのモンスターへの有効な攻撃手段はないと悟っていたが、それでも攻撃を続ける。


 ストーンゴーレムがレイチェルに反撃すると、圧倒的な硬さと質量を前に、レイチェルはあっけなく壁に叩きつけられた。

 レイチェル自身もかなり固くなっているので、その一撃には耐える事が出来たが、あと数回殴られれば、また長い眠りについてしまうだろうと考えた。


 特に焦る理由もないレイチェルは、それでもいいと決意し、このストーンゴーレムに対して武器を捨て、最も攻撃力が高いであろう粉砕拳を使い攻撃を仕掛ける。


 度重なる戦いから、レイチェルの骨密度はかなり増しており、ストーンゴーレムの体を拳で打つ度に削り取っていく。

 ストーンゴーレムも踏みつけたり、腕を振って反撃をするが、知覚能力が向上したレイチェルが冷静な対処を始めると、ストーンゴーレムの動きは遅く、難なくその攻撃を躱される。


 レイチェルは固い拳で、ストーンゴーレムの体をどんどん削っていき、ついに片足を折る事に成功する。


 バランスを崩し、倒れてしまったストーンゴーレムの背後に回ったレイチェルは、そのまま後ろからストーンゴーレムに攻撃を仕掛け、数時間かけて動かなくなるまで殴り続けた。


 ストーンゴーレムを倒した事により、レイチェルは “身体強度向上” の能力を得て、更に骨密度が増す。


 骨密度が一定の値を上回った為、レイチェルの体に変化が起こる。

 全身の骨が金属光沢を持ち、今までよりも頑丈になり重たくなった。

 更に身体能力も大幅に向上し、重くなったにも関わらず以前よりも素早く動ける。


 レイチェルが喜び、歯を重ね合わせると、キンキンと金属を叩いた様な音が鳴った。


 そして、レイチェルの発した音を聞きつけて再び、ビッグマウスハウンドが目の前に現れた。

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