第1話プロローグ 決意の時
開闢歴147年小国ラグナの辺境で瘴気溜まりから吸血鬼が産まれた。その吸血鬼はどうしようもない喉の渇きを満たす為に本能の赴くままに獲物を探し始めた。
―――――――――――――
空から茜色の光が霞み始め空を黒く染め始めたある山村にて……
「おい、あの人影はなんだ?何か様子がおかしいぞ?」
「確かに何か苦しそうな…」
グチャ
其の人影が突然顔を上げたかと思うと美しい
空を呑む様な黒髪を靡かせながら整ったを笑み歪に歪め、手を翳すとどこからともなく飛来してきた血の槍が門番の一人を殺した。
「ヴァンパイアだぁぁぁ!!戦えるやつ以外後ろから麓の街に逃げろぉぉ!!」
と村を囲む柵の上の櫓にて門番が叫ぶ。
すると少しして村に住む人々は慌ただしく避難し始めた。
子供と若い女性そして高齢者を優先に逃がし、戦えるもので応戦し逃げられるだけの時間を稼ぐ事にした。
だが、健闘虚しく戦える若者は血の海に沈む事となった。
「ハァッ...ハァッ...ハァッ...」
と息を切らしながら小さな足を懸命に動かし必死にあるモノから逃げる少女がいた。遠目には黒煙を猛々と上げながら燃え盛る生まれ育った村があった。
既に少女以外の村の者は死んでしまっていた。一緒に逃げていた母親が急速に枯れたように斃れたかと思うと隣には甚振る様に周りの人を傷つけている黒髪の少女がいた。
黒髪の少女は一人一人腕や足などを逆の方向に曲げて苦痛に歪められた顔を見遣り満足気に微笑んだ後、丁寧に項に牙を立て、血を吸っていた。
其の隙に少女は駆けた。無意識にここから逃れようとしていた。その根底には動物としての生存本能があった。ある程度走った後に、冒険者達がボロボロになった少女を保護した。
冒険者に保護された後、心身の状態が深刻ということで1日ほど休んだ後事情聴取となった。
少女が宿泊した宿の部屋で、逃げている時には気づかなかった。否、気づかないようにしてた“みんなを見捨てた”と云う事実が心を刺して来る。宿には少女の泣き声が夜中中に途切れる事が無かったという。そして、其の少女は、吸血鬼を滅ぼすと心に決め、死んでも強くなると誓った。其の少女の名前はヴィナ。史上2人目のランク8冒険者である。此れはヴィナの歩んだ軌跡を辿る物語。
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