ロリニョル
@min_zaizai
第1話 はーるがきーたーはーるがきーたー
漸くここともおさらばね。
山中で100年程住んだ隙間風だらけの自作家屋を壊しながら清々しい気持ちが溢れてくる。
100年も住んでれば愛着の一つでも湧けよと誰かは思うかもしれないだろうから少し思い出に耽ってみるが。
「やっぱり何の思い入れないわね」
この100年程は食べて寝たりするだけだし、家も適当にその辺の木を引き抜いて作っただけだしね。
四隅にぶっ刺してある支柱と呼ぶには太すぎる木の一本を手で適当に千切っては粉々にして木屑になった物をそこら辺にばら撒く。
「ほんと小さい手って不便だわ」
ほんの少し自分の小さな身体に悪態を吐きつつ最後の一本を土中から引き抜き明後日の空へとぶん投げる。少し面倒臭くなったから。
仕上げに息を吸い込み木屑がある辺りに思いっきり息を吹きかけると勢いよく木々の間や空を駆ける様に散っていく。
「これで良しっと」
人が住んでいたであろう痕跡がなくなったところで
「そろそろ行こうかな」
少し縦に伸びをしてから跳躍し木へと飛び移りそのまま目星を付けておいた村へと続く道へと向かう為樹上を跳び進む。
山岳地帯を越えて少しの森を抜けると畦道にも似た手入れされてない砂利道が北から南へと伸びている。
ロリニョル @min_zaizai
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