あなたの想いを背負わせてほしい。
愛していた人、守るべきだった人、覚悟、プライド、人間性、希望。みんなずっと前に奪われた。その恨みや悪感情をありったけに込めて放った全力の攻撃でも、結局あいつを倒すことはできなかった。
この世界をまばたきくらいの一瞬、赤色に照らしただけだった。それで思い出した、怒りや恨みで倒せる相手なんていない。
でも、私には勇者の想い…そして私自身の、全てを許せる優しさがある。
地に顔を付けた私の目の前に転がっている幼い女の子の骸。そして、倒れた私を愚弄するように踏みつける紅く紅く、煌々と光る穢者。
「なぜ俺の邪魔をする、穢者のガキ」地を裂くような低く恐ろしげな声が響く。赤い穢者は怒りを宿して穢れに満ちた者だ。赤ければ赤いほど熱烈な怒りを宿した者だ。
彼は穢れに堕ちる前、どんな理不尽を浴びたのだろう。きっと辛くて、恐ろしかっただろう。だが、それは何の罪もない者を傷つける理由にはなってはいけない。自分が理不尽を受けた時こそ、二度とこのような悪事をしようなどと考えなくなるほどの幸せが訪れることを願うべきなのだ。彼はそれをできなかった。彼はもう後戻りができないほど、体を血で汚してしまったのだ。力のないこの私にできることは、彼を穢れごと殺し、死をもって罪から解放することだけ。私は、私の頭を踏みつける彼の脚を、今、私に残された一番大切な剣で切り裂くと、飛び起きて高らかに宣言した。
「あなたをここで止めます。あなたに何を奪われたとしても、絶対にです。
あの勇者から使命とともに受け継いだ勇者の剣を構え、何回も唱えた福音を再び唱える。私は穢者として、彼の痛みが理解できる。だからこそ、彼を止める必要がある。なぜなら、こんな殺戮は何も生まないのだから。なぜなら、それがあの気高き騎士が最後に私に託してくれた使命なのだから。
先ほどとは違う、七色の光が紅い穢者を包み込む。
そして、強大な力をもつ深紅の穢者は、勇者の魂と世界を包む優しさを持った穢者の少女によって虚無の彼方へ送られた。
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