火だるま
対岸の火事を望む私がいる。いわゆる妬みだ。
目の前でいちゃついてるこいつらが憎くてたまらない。モテないことへの物とはまた違う劣等感が募る。
遊園地にいるピエロの気分、カップルに風船を渡すためだけの存在。笑いもののピエロに恋をする客なんていない、彼はいつも蚊帳の外だ。
ピエロは面白く塗った顔の下で恨みのこもった真っ暗な目で彼ら、彼女らをみる。
そして、恨みの念を込めた風船を渡すのだ。この風船が彼らを苦しめるように、奴らを忘れないように、奴らに忘れられないように。
そしてピエロは、対岸に広がる大きな火事を望む。
燃えよ、絶えよ、貴様ら。手の届かぬ対岸で。
燃えた先で、俺達は灰と火の粉でボロボロに朽ちたお前を仲間として迎えよう。
冬の暖炉や子犬の温もりよりも、もっと暖かく、もっと熱く、
もっと厚く、顔に塗るのさ、ピエロの化粧を。
顔に塗られた、ピエロの化粧。そして―
「対岸の火事を望む私がいる。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます