チュートリアルからの脱出と裏ボス
「おい! なぜかわからないが急に動かなくなったぞ! いまだ、レイトやっちまえ!」
「はっはい!」
……なんだ?
朝っぱらからうるさいな。
喧嘩でもしてるのか?
やめてほしいな人が気持ちよく寝ているというのに。
俺は心の中で少し怒りながら目を開ける。
すると視界には
「……ウォッ!?(……はぁ!?)」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
剣を持って俺を斬ろうとしている少年がいた。
ちょっ、なんだよお前!
急に剣で斬りかかってきて!
俺は慌ててその場から逃げる。
……ん?
「なんだ!? 今度は急に動き出したぞ!」
今の逃げるもいう動作に違和感を覚えていたとき、別のところから男の声が聞こえた。
喋ってるのは剣持って追いかけてきてるこの少年じゃない。
……奥にいるあいつか!
「ウォッ……!?(なんで……!?)」
俺はなんでこんなことをするのかと理由を尋ねるため声を出した瞬間固まる。
俺の声じゃない!?
よく見たら周りも俺の部屋じゃなくて森の開けたところっぽいし……
なんなら追いかけてきてるこいつ『聖剣戦争』の主人公のレイトじゃないか!
なんでレイトが俺を斬ろうとしているんだ?
という疑問が浮かび出た瞬間、予想もしなかったことを男に言われた。
「くっそ! すばしっこいな魔狼め!」
は?
魔狼?
魔狼、それは聖剣戦争の序盤にに出てくる雑魚キャラである。
見た目は完全に狼で、自然にいる狼に攻撃力とスピードを増やしたくらいのものだ。
まだ魔法は碌に使えない。
自分の腕を見る。
それは綺麗な灰色をした獣の手だった。
そう、さっき避けた時の違和感。
視線が低かった。
そしてスピード。
特に運動が得意じゃない俺が出せるスピードじゃなかった。
さらにこの開けた場所。
魔狼のエンカウントは全て森の中でだ。
こんな開けた場所である戦闘はただ一つ。
ーーチュートリアルのボス戦のみだーー
いや、でもそんなことあり得るのか?
っていうかそもそもこれが現実ってわけじゃないしな。
そう周りのことを考え込んでいた時……
「隙ありっ!」
少年の剣が俺に迫っていた。
やべっ、考え込んでこいつのこと忘れてた!
「グォッ!!(痛ぇっ!!)」
は?
なんだよこれ。
くっそ痛い。
夢じゃないのかよ!
「よし! よくやったレイト! そのまま追撃だ!」
やばい!
いくらなんでもアレを何回も食らうのはまずい!
それにもし、もしもだ。
これが夢じゃなかったら。
これが本当にチュートリアルのボス戦だったのなら……
負け確定。
つまり……
死ぬ
「うぉっ、なんだこいつ、待ちやがれ!」
俺は気づいたら走っていた。
どこかを目指してるわけではない。
ただひたすらに逃げていた。
クソが!
こんなところで死んでたまるかよ!
とにかく逃げるんだ、アイツらが追ってこなくなるまで。
生きてればなんとかなるはずだ。
ここがもし、本当に聖剣戦争の世界なら。
俺のゲームの知識が通用するのなら。
俺だけがこの先を知っていることになる。
それを最大限使って何がなんでも生き延びてやる!
俺はそう堅く決意し、よし一層走るスピードを早めた。
どれくらい走っただろうか。
逃げるのに夢中で全くわからなかった。
だが、主人公たちの声はしばらく聞こえていない。
ならばここまで来ればひとまずチュートリアルから脱出することができたとみていいだろう。
さて、これからどうするか。
俺は森を歩きながら考える。
まずはここがどこなのかを知るべきか。
場所がわかれば近くに何があるかはわかるからな。
チュートリアルは主人公の村の近くの森で起きる。
そして主人公の村は聖剣戦争の舞台の国、「フラガルム王国」の領地ギリギリの辺境の地だ。
いくら俺のスピードが早くなったからと言ってもこの広大な王国の領地を駆け抜けられたとは思えない。
確か主人公の村から1番近くのそこそこ大きい街まで馬車で2週間はかかったはずだ。
馬車よりも速いスピードだったとはいえまだ走って数時間だ。
そこまではいけてない。
となると主人公の村周辺になるか。
そこになんかあったっけな。
欲しいものとしてはやっぱり安心して寝られる場所が欲しい。
それと食べ物とかだな。
ここら辺にはチュートリアル後のレベリングに最適な盗賊のアジトがたくさんあるが今の俺にそこを攻略できると思えない。
あとは住む場所だが……うん、ないな。
どこかに洞窟があるかもしれないがあるかどうかわからないものを探すのは不安だし。
やっぱ盗賊のアジトか?
そこなら食べ物も住む場所も両方手に入る。
……安全かはわからないが。
いや待てよ?
なんで倒すなんて考えてるんだ俺。
まだ仲間になるっててもあるじゃないか。
……いやでもダメか。
そもそも仲間になれるかわからんしな。
ワンチャンそのまま殺されて食われるかもしれん。
それにここら一体の盗賊は必ず主人公と敵対する。
いくらなんでも主人公に勝てる気がしない。
やっぱ都合のいいところはないか……あっ……
ある、一つだけ。
主人公と敵対せず、主人公の村周辺にあって食べ物と住む場所があるところ。
大丈夫だろうか。
そこは盗賊のアジトが遊園地に見えるレベルの危険な場所だ。
危険な場所、と言っても罠などといったものはない。
正確にいえばたった1人、それだけが危険なのだ。
この聖剣戦争のやり込み要素の中で最難関。
一部の猛者たちによるスコアアタックがされている場所。
そこにいくにはその存在に認知されればいい。
主人公は魔王を討伐したことで存在を認知され、向こうからやってきた。
アイツは興味を持ったやつにだけ姿を見せる異世界からの使者。
どうせ聞いているんだろう、この俺の心の声も。
そういう描写あったもんなぁ?
ゲームでも!
俺の周囲に紫色のモヤが現れる。
そしてそれは徐々に人の型を作っていく。
裏ボス、ストネス!
『ほう、ただの魔狼が私のことを知っているのか。おもしろい』
モヤが作った女性が、俺に向かってそう言った。
ーーーーーー
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