俺のバイト先のちっこい先輩が謎すぎる

 今は、十二月。あと数日でクリスマスの日である。

 しかし、連続バイトの週であり、今回も無理かもしれない。


 今年は友人らと過ごす程度ではあったものの、残念そうに心の中で諦める事にしたのだ。


「お前、何ボーッとしてんだ?」

「す、すいません」

「品出しは終わったのか?」

「一応終わりました」

「そうか、ならいいんだが」


 今隣にいて話しかけてきたのは、りつ寄りも背丈の低い女の子の先輩バイト――茉優まひろだった。

 一個上なのに、気が強いのも相まって客観的にみると生意気な子供に見えなくもなかった。


「クリスマスの日は何か予定はあるのか?」

「俺、バイトなんですけど」

「そ、そうか」

「茉優先輩は?」

「私は……その日休みだけど……その、色々あってバイトする事にしたんだ」

「珍しいですね。茉優先輩がバイトを変わるなんて」

「別にいいだろ」


 先輩は不満そうにムスッとした顔をすると、ギロッと葎の方を見てくる。


「な、何でしょうか、先輩」


 葎はビクッとして後ずさる。


「その日……い、一緒に帰らないか」


 先輩は上目遣いで見つめてくるのだ。


「え?」

「だ、か、ら、その日、一緒に帰らないかってことだ。何度も言わせるな」


 先輩は不機嫌そうに腕組をしていた。


「その日……? クリスマスのバイトの日ですか?」

「そうだ、その夜は暇だろ?」


 ちっこい先輩はジーっと葎の様子を伺っていた。


「勝手に決めつけないでくださいよ。一応、暇ですけど」

「えっと……でしたら、その日一緒に帰りますか?」

「まあ、つまらん話はこれで終わり。仕事するぞ。お、お前もしっかりとやれよ」


 先輩は少し嬉しそうに口角を緩めた後、レジまでやって来たお客の接客をしていたのだった。

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