第二十九話 甘々からの急な展開
街で行き交う人たちの視線が気になって仕方がない。顔を一人ひとりちゃんと確認してるわけじゃないけど、笑われている気がする。破廉恥なやつだと軽蔑されているかもしれない。
でも、永久の手をほどきたくなんてない。何ならずっとこのまま、一緒に手を繋いでいたい。
人里から離れて、段々とのどかな川が見えてくると私たちは足を止める。
「ここが一番綺麗な川だと…思い…ま…すよ…。」
右近は振り返って私たちの手を見たまま硬直する。
ぱっと手を離すとお互いに三歩くらい距離を取ってしまう。
やっちゃったー…。右近は気まずさとかを通り越して目をくるくるしてしまってる。
「別に…良いと思いますよ!姫様と永久様が仲睦まじくしていらっしゃるのは素敵な
ことだと思います。別に馬鹿みたいな夫婦だなんて思ってませんよ!」
あぁ、行き交う恋人繋ぎをしているカップルたちを見てバカップルって言っていたときが懐かしい…。
だけど私なんか比にならないくらい真っ赤になってプルプル震えている人が隣りにいる。
「べ…別におかしなことじゃないよな…?寒いから…手を繋いだだけだし…。」
そうそう。寒いから手を繋いだだけであって…。ならもう一回手を繋いでも…良いよね?
私はもう一度手を伸ばす。右近に見られてても、そんなの関係ない。私は今永久を求めているんだ。俺を利用しろとか言ってたのはそっちだったはず。
「…穢れを落としてもこれでは新しくつきまくってるでしょうね…。」
失敬な。でもそれはそれとして私たちは川の近くにしゃがみ込む。
「じゃあさっき作った人形をこちらへ。」
右近がやったように永久と二人で人形を流す。すると二つの人形は水の流れに従って、そのままくっついて流れていく。
私たちも、あんなふうにずっと一緒にいれたらなぁ…。
そんなことを思いながら、見えなくなるまで人形を眺めていた。
そのまま家に帰って、私たちはそばを食べた。
この時代は紅白歌合戦なんてやってないからそのまますぐに寝る。だけど、なかなか寝付けそうになかった私は外に出て月を見ていた。
今夜の月は綺麗に照り映えているわけじゃなくて、少し雲に隠れてしまっている。それでも隠しきれない月明かりが少し不穏な空気を漂わせている。
そういえば、月隠れってこういうことを言うんだろうなぁ…。
怪しく光ってるけど、それがかえって美しさまで引き出している。こういう月のことを確か…。
私の体から一気に体温が抜けていく。
月隠れってそういうことだったのか?でも流石に…この時そんなことが出来る年齢じゃなかっただろう。
だけど、東宮が死んで、御息所を未亡人として実家に帰らせることで一番得するのはどこかなんて明確だ。
次の東宮の血筋である右大臣家に決まっている。
そして、もしこの時点で右大臣家が一の御子、すなわち後の朱雀帝に彼女を嫁がせることを考えていたとしたら…?
認めたくない気持ちが強いけど、ケチの付け所がない…。
私は月を睨みつける。雲に隠れて怪しく笑っているようにさえ見える朧月を。
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【お詫び】
今までの誤字を訂正いたしました
読みづらいところが多々ありましたこと誠に申し訳ございません
改めて読んでいただけると幸いです
改めて、この度は多数の誤字がございましたこと申し訳ございませんでした
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