第七話 天然記念物への手紙の出し方
最近は慣れた午前三時起床もこんな形だと夢だと思いたくなる。
私は永久に首を絞められている…のではなく抱きしめられている。多分本人は何も意
識してないんだろうけどはっきり言って痛い。
こいつ普段ほかの女性にもこんな力でくっついてるのか…?
ん?他の女性?
永久の昨日の行動から女性関係を感じたか?
他の女性がいるにしては扱いに慣れてなかった…。多分そこら辺の高校生のほうがマ
シだ。
ということはこの人は…。
目の前にいる青年が何だか今日は純粋な少年に見える。
「ん…おはよう…。」
「おはよう…。」
やっと開放されて私はどうしようかと悩む。この平安時代に稀有な存在が目の前にい
る。何なら天然記念物並みだぞ。
「永久…今日のご飯ちょっと多く食べて良いよ。」
「?ありがとう。」
天然記念物にはいっぱい食べ物を与えないといけない。
「そういえばいつ頃から出仕になりそう?」
「できるだけ早くはするが…左大臣家の紹介なら明日からかもしれないからいつでも
行けるように準備していてくれ。」
「わかった。」
そう、忘れてはいけないのが私たちは利害一致の婚約であるということだ。
私たちは愛を必要としない分、成果を求めている。私の任務は六条の
入られてそのまま左大臣家頭中将と結婚させること。
くするということだ。とにかく反感をもたれないように、それを最優先にしよう。
永久が帰っていくと私は出仕の準備を始めた。
「姫様がいないとこの屋敷も寂しくなりますねぇ…。」
「そう?でもまぁすぐに帰ってくるかもよ?無能すぎて。」
「そしたらまた我が家は財政難です。」
「…頑張るわ。」
そのまま右近と出仕の準備をして気付いてしまった。我が家にはいろいろなものが欠
如しているということを。
「右近、あの重たい服どこ?」
「重い服…と言いますと
「もしかしてあれ?いま布団にしてる…。」
「まさかとは思いますが全部使っているわけじゃ…。」
「その…最近寒いから…ねぇ…。」
私が布団代わりに使っていた衣たちは物の見事にシワがついていた。
「どうしよう…。」
「永久様に…、左大臣家に服を用意していただくしか…。」
「だよねぇ…。」
でも今日来るとも限らない…というか多分来ないし…。
「手紙書くしか無いよねぇ…。」
「意外と初めてではないですか?永久様にお手紙を書くのは。」
「ほんとだ…。」
面倒だから私たちは通った後の手紙のやり取りをしてない。だから今回が記念すべき
一回目のお手紙となるわけだ。
なら情熱的にかつ
『服がありません。ください。』
そして簡潔に書こう。
十秒もしない内に書き上げて右近に渡すと即チェックが入る。
「…私が書き直します。姫様は何もせずにただ他の出仕の準備をなさっていてくださ
い。」
おかしいな。先生たちには夕顔のレポートは
だけど…。
私が出仕の準備をあらかた終わらせると右近が手紙を持って現れた。何だかとっても
ウキウキしながら帰ってきたんだけど嫌な予感しかしない。
「姫様、こちらの文でいかがでしょう!」
「うーん…、『
「嫌です。」
「…『私はあなたなしでは生きていけません』…ここあなたの財力なしではのほうが
良いと思うな。」
「ハイハイじゃあこれで出しますね。」
多分右近は変えるつもりはないからもう良いや。あの天然記念物には服さえもらえた
ら良いんだから。
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七話までご愛読いただきありがとうございます!
永久くんカッコつけてたけど女性関係ないんですね…。
まだまだ波乱の新婚生活お楽しみに!
また、ちょっとでも面白いと思ってくださったら星、ハートやコメントをいただけると嬉しいです!
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