第3話

しかし、11時15分。

甘酒を貰うため列に並んでる時だった。



「あれ?義旭先輩?」


「……あぁ、都か」



見ず知らずの女子が義旭くんに話しかけた。



何か……、あれ?



「やっぱり、義旭先輩でしたか!」



あれ?何かおかしくないか?



「どうした?」


「甘酒を貰いに」


そして私を見て「こんばんは」と、挨拶する。


いやいやいやいや。


こんばんは、じゃないでしょう?!



「元気だったか?」


「はい、元気です。

それよりその方、先輩の彼女ですか?」


女の子が私を見て聞いた。



「あぁ、まあな」


「先輩にも彼女できたんですか!」



その後も二人で何やら盛り上がり始める。

……面白くない。


大変、面白くない。



と、いうか!この女、だれだっ?!




義旭くんはなぜか親しげに「みやこ」と呼んでいるし、そしてこの子も「義旭先輩」と名前呼びしてるし……。


列はどんどん進み私達は甘酒を貰ったが、義旭くんはズット「みやこ」って子と話している。



「義旭くん、私ちょっとトイレ行ってくる」


「あ、おい」



引き止められるのも無視して私は一人、トイレに向かった。



おかしなことになった。大変、まずい事態だ。


私にライバルが現れた。



「うー……。都って誰だー……」



義旭くんと親しくする女子に遭遇するのは付き合ってから初めてだった。



義旭くんに何されても基本的に堪えれるし、免疫もかなり出来上がったが、そっちに関してはまだ、経験がない。



そもそも義旭くんは女子とはあまり話さないし、例え話したとしてもあんなに親しげに名前で呼び合ったりしない。


学校の女子は義旭くんが私と付き合ってるって大抵、分かってるし。



まずいことになった。



打たれ強いと自負していたけれど、この分野に関しては滅法弱いらしい。



トイレの鏡に映る自分の姿を見ながら大きくため息をついた。



初めてだ。

義旭くんの元に戻りたくないと思うのは。



あと30分で年越しかぁ……。都もいるのかな。

私、二人で一緒に年越しするはずだったのにな。




「あれー?お姉ちゃん。一人でどうしたのー?」



トイレから出て、しばらく歩いていると若い男の集団に話しかけられた。


年越し30分前と言うのもあってトイレ近くの暗闇には殆ど人がいない。



……あ、やばいな。



『明日香、気をつけてね』



詩織の言葉が頭に浮かんだ。



「お姉ちゃん?どうしたのー?」


「いや、その……」



ナンパくらいなら交わせるが、こいつら多分相当ヤバい。



「彼氏が向こうで待ってるんで」



押し切ろうとしたが腕を掴まれた。



「君さぁー。

こんな夜遅くに一人でいたら、誘ってって言ってるようなもんだよ?」


「いや、本当に彼氏いるんですよ」



私の言葉に男の一人が「いないじゃーん」と笑って答えた。そして囲まれる。



「俺達と年越しって、楽しそうだと思わない?」


「だれかっ……!」


「抵抗きんしー」



笑いながら口を抑えられて喋れなくさせられた。両手首を掴まれる。


「本気で可愛いじゃん!ラッキーだなぁ、俺達」



ヤバい、マジで。

ナンパとかとはもう訳が違ってきた。



「泣いても無駄でーす。

余計気持ちが盛り上がりまーす」



そしてナイフで上着を切られた時だった。



「おいっ、何してる!」



神社を警備してた警察官が三人くらい、私達の所に走って来る。

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