第2話

大晦日の日。

私の家に義旭くんが迎えに来てくれた。



「あすかー。義旭来たぞー」


お兄ちゃんに言われ急いで部屋から出る。


「私、変?!」


お兄ちゃんは一歩後ろに下がり私を見て笑いながら親指を立てる。


「良いんじゃね?

じゃ、義旭。明日香のことよろしく」


「はい。こちらこそ」



お兄ちゃんと義旭くんはなぜか仲良し。


理由は分からないけどお兄ちゃんいわくウマがあうらしい。



「あんまり遅くなりすぎんなよー」


お兄ちゃんの言葉に適当に頷き、私は義旭くんと近所の神社に向かった。


私達の家は同じ地域。


学区が違ったから中学は同じじゃないけど、家は割と近くにある。



「義旭くん、二年参りとか行ったことある?」


「あぁ。毎年、兄さんと弟と三人で行く」


義旭くんは三人兄弟の真ん中です。


「じゃあ今年も兄弟で行くはずだった?」


私の言葉に首を振る。



「いや。

弟も友達と行くらしいし、兄さんは四谷先輩の家で野上先輩と三人で過ごすらしい」



あぁ……。

義旭くんとこんなに会話が続くなんて……。


もちろん私達の間には1メートルくらい間隔があるけどね。



ここで私達の間の決まりを言っときます。



まず、『1メートル以上近付いてはいけない』


……いけないっていうか、私は何度も近付くことを試みたんだけど、統計結果から1メートルが限度だった。



あとは『時間を守る』

一回5分遅刻して先に帰られたこともある。



それから『邪魔をしない』

義旭くんは生徒会会長で仕事中に話しかけると「話しかけるな」ってハッキリ言われる。



それくらいかな……?

なんかこうやって言うと別に大して冷たくないでしょ?


常識だよね、人としての。



だって人前でベタベタしたら見てて嫌な気持ちになるし、時間を守るのは大切なことだし、人の仕事は邪魔したらいけないし。


義旭くんといると人として成長できます。



神社には人が沢山いた。



「あっ!義旭くん!甘酒、売ってるよ!」


私は前を歩く義旭くんに話しかけてる。


「あぁ、そうだな」


そして私を見て言った。



「欲しいのか?」



正直どっちでも良いけど。


「欲しいっ!飲みたいっ!」


義旭くんがそう言うなら貰わない訳にはいかないでしょう!



「じゃあ、行くか」



溢れる程人がいるのに、その中でも一番義旭くんが輝いてる。



「義旭くんは甘酒、好きなの?」


「嫌いではない」


列に並びながら白い息を吐き言った。


「義旭くんって好き嫌いないよね」


「好き嫌いなんて子供のすることだろ」


あなたの友人の秀は好き嫌いが多いことで有名ですよ。


「何でも食べる」



義旭くんは確かに私の作るお弁当も全部、食べてくれる。



最初の頃は「まずい」って捨てられたけど、今は全部食べてくれるようになった。

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