俺はアビリティ「死者蘇生」の真の使い方をまだ知らない。

あるふれい

プロローク

「おぬしのアビリティは、『死者蘇生』じゃ」


目の前にいる見知らぬ老夫がそう言うと、周りの大人たちがざわつき始める。



「えっ、『死者蘇生』?」


「聞いたことない、アビリティだな」


「もしかしてエトセトラアビリティじゃない?」


「数年に一人の逸材かもしれんな」


「あの子は絶対将来有望だわ、それに比べてうちの子は…」


「あの子は死んだ人を蘇らせれるのか?」


「どうせ使い物にならないでしょ。生きている人を蘇らせるとか。フフっ」



周りをキョロキョロ


入り口付近で

親を発見。


「あの、これから教会の本部の方に連絡しますので少々…ってあれ?」


ちょっと老夫の声が聞こえたがスルー

真っ先に親のところへ向かう


「父上、『死者蘇生』です。これってすごいですか?」


「うん、すごいアビリティだと思うよ!」


「今までの努力の結果だよ。ゼノおめでとう!」


とても満足、満足


この後老夫からアビリティの使い方説明があった。


帰り道

「よし、じゃあゼノを祝うために今日は高級ステーキにするか」


調子に乗る父


「いいわね!」


気分がよさそうな母


「やったー。今日はステーキ!」


俺は高々と腕をあげ、最高の1日を締め括った。

---

翌日


大通りで買い物中


「緊急、緊急です。この中で賢者はおらっしゃれませんか」

二人の大人が泣きながら叫んでいる。


「どうしたのかな?」


「何か事故でもあったのかも」


早速、俺の出番らしい


「ちょっと行ってくるね」


「ちょっとゼノ?」

「ゼノ?」



急いで近づくと、そこには血を流した少女がいた。


「賢者です」


その子の親は子供が賢者であることに驚いてそうだった。


「子供が馬にぶつかって、意識がないんです」


俺はすぐさまアビリティを発動させる。


(きのう、あの老夫から心でこの人を治したいと唱えればアビリティが発動すると習ったから)


俺は目をつぶり、その少女に向かって治したいと唱える。


「あの」


その子の親が俺に呼びかける。


「どうですか治りましたか?」


「いや、賢者ってことは嘘だったんですか?」


こころのなかで何かがなくなる。


「ちょっと、何してるのゼノ?」

「ちょっとこっちへ来なさい」



どうやら『死者蘇生』なんてないらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺はアビリティ「死者蘇生」の真の使い方をまだ知らない。 あるふれい @femy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画