第2話 儚くも消え去る日常




「光莉、、、、落ち着いたか?」


「スズッ うん、一応は」


「なら、良いんだが」


あれから、俺は大きく声を上げて硬直してしまった。気付いたら椅子に座っていて、目の前には少し気まずそうな狼崎光夜が座っている。俺は1口、お茶を啜る。


「なぁ、母さん、何で俺が?」


「やって、お母さん達、転勤決まってしまったから、光夜も連れてこうって言ったのに」


「嫌や、って言ったから急いで預けたりする先とか探したり考えとったんやで」

「そんな時に、光莉君のご両親も転勤する事が決まったからら」


「なら、丁度ええなぁ〜、って事で2人で暮らすって事にしたんや」

「嫌なら、ええなんで?転勤先に連れてっても」


そうお2人の静かな圧と説得が効いたのか少し黙った後、了承した光夜先輩。


「、、、、はぁ、分かったよ。それで、その、兎月うづきだっけ?」


「はい、ぁ、光莉で良いですよ。ややこしいんで」


「ええんか?見ず知らずの男と一緒に暮らすの」


「、、、、別にそれは良いですよ。それに、見ず知らずって訳でも無いので、中学同じでしたし」


「!そう、ならええけど、ぁ、俺の事も光夜でええで、苗字で呼ばれるの慣れてへんし」


「分かりました!では、光夜先輩、よろしくお願いします」


「あぁ、よろしく」


そう2人で手を握り合う。お互いの第一印象は結構良い感じだろう。すると、微笑ましそうに見てくる4つの視線に気づく。


「、、、、何?」


「いや、何も、ぁ、光夜君の荷物っていつ届くのかしら?」


「明日には届くわよ、いや〜荷物の整理させといて良かったわ」


「なら、今日からもう一緒に暮らしたらどう?!私達も転勤は来週だから、なるべく早くしたらって思ってたし」


「そうね、そうしましょう!」


「母さん、何言って」


「光夜、迷惑かけないようにね!」


「ダメだ、この母親話聞かね」


「どこの親も同じですよね〜、」


「何か、すまない妻が」


「いや、こっちも妻が、、、、はぁ」


何て母親達の楽しそうな会話を息子、夫達は遠くから眺めているのであった。

この時に俺は光夜先輩と色んな意味で分かり合えた気がした。同じ苦労を背負った人間の顔をしていると気付いたからだ。





あれなら、光夜先輩達家族と夕飯を食べたら、光夜先輩以外のお2人は帰り、俺は光夜先輩が使う部屋に案内する。


「じゃ、この部屋使って下さい。1番上の兄が使ってた部屋ですけど、もう誰も使ってなくてベットと机とかが残ったままで、ぁ、でも布団とかはちゃんと洗濯したりしてるので」


「分かった。ありがとうな、」


「はい、先にお風呂入りますか?」


「ええの?、先に入りたいとか」


「いえ、先輩はまだこの家ではお客さんなので、それに両親2人もまだ入らなそうなので、お風呂入れたばかりですし、1番最初に入ってくれると助かります」


「そう言うんやったら、まぁ、入るわ」


「はい、ちょっと待ってて下さい」


俺はそう言って、自室に入ってタンスからタオルと新品の下着を取り出す。取ったらすぐに先輩の元に戻る。


「これ良かったら、使ってください。パンツは新品なので、差し上げるので」


「ほんま?助かるわ、有り難く使わせて貰うわ」

「じゃ、お風呂お先に貰うな」


「はい、ゆっくりしてくださいね」


俺は光夜先輩に一礼した後、自室に戻って自主勉を行う。音を遮断しようと、耳栓を付けて、スマホの通知も消し、少し離れたところに置く。

最初は数学から始める。20分ぐらいして少し微かに音がしたが気にせず作業をする。


それから30分ぐらい経ち歴史を少しやって、終わりにして耳栓を外してスマホを取ろうと後ろを振り返ると、、


クルッ

「、スマ、、《ホ》〜!!!???先輩!?!?」 ドデンッ

「な、何でここに」


後ろには何と光夜先輩が居て俺は驚きのあまり椅子から落ちてしまった。驚いている俺とは逆に笑っている先輩。


「えぇ、マジで気づかんかったん?暫く後ろにあったやで」


「全然気づかんかった、てか、驚かなさないでくださいよ。死ぬかとか思いましたよ」


「それはごめんな。いや、寝る前にちょと話したい事があってな」


「話したい事?」


少し冷静な口調になって俺は少し緊張しながらも先輩を座らせて俺も対面する様に座る。


「それで、話したい事とは?」


「これからの事や、明日から俺もこの家から学校に行くけど、時間をずらしていった方がええと思うし」

「あとは、2人で暮らすにあたってのルールとかも作っておいた方がええと思うんやけど、どう思う?」


「良い案だと思います。確かにもし学校の生徒に一緒に家を出てる所を見られて変に誤解されたりするものアレですし、それなりのルールもあった方が良いですね」


俺がそう言うと少し安心した顔をする先輩。先輩は早速、手に持っていたのか紙とペンをミニテーブルに置く。


「じゃ、今から俺らでルール作っていこう、これはこうして欲しいとか、この時はこーした方が良いとか」


「分かりました。やりましゃう」


そう同意しながら、俺達は夜遅くまでルール制作に力を入れたのである。寝るのが遅くなるまで、両親に注意されるぐらい考え込んでいた。






「あはよ〜」


「「「あはよ〜」」」


「昨日どうだった?何か良い事あった?」


「うん、良い事ちゃ〜良い事」


「ふ〜ん、どんな?」


「聞きた〜い!」


「それは後で」


教室に入って机にリュックを置く。今朝は俺が後に家を出た。

昨日作ったルールの1番最初に「一緒に住んでいると言う事を家族以外では信頼している友人以外に言ってはいけない」とルールを作った。

変だとは思うが、こーゆう方が分かりやすいし、良いと思ったから。

椅子に座ってから、3人を俺の周りに集めて、顔を合わせて3人に小声で伝える。


「簡潔に言うと、狼崎光夜おおざきこうや先輩と暮らす事になった」


「「「、、、、、、、、はぁぁぁ〜!!!?!?」」」


「ちょ、みんな声のトーン落とし 」


そう最後まで言おうとしたが既に時すでに遅しで、教室に居たクラスメイトは俺らの方をじっと見ていた。俺は気まずくなったが、3人は驚きもあってか気付いてない。


「《えっ!マジで!?マジで、あの先輩と暮らすのか!?》」


「《どんな経緯で暮らす事になってんのや!ぇ、まさか脅したとか、それとも脅された!?》」


「《何がどうなってんの!?でも光莉はいつかやる男やと、僕は知ってたで!》」


「凄い小声だけど迫力はあるわ。と言うか怒涛過ぎてちょと引いてる」


3人に引いていると、先生が教室に入ってきて、そこで話は終わった。


「「「昼休み、尋問するから!!」」」


「こんなところで声合わせないでよ」


何て思いながら、教科書とノート、筆箱を取り出す。





キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


ドンッ

「さっ、光莉詳しい経緯を教えて貰おうか」


「「貰おうか!」」


「分かってるって、早く座りなよ」


プルルルル プルルルル


みんなからの圧を感じながら、みんなが俺の席の周りに座り始める。尋問が始まろうとした瞬間、スマホが鳴った。スマホを見ると、相手は昨夜連絡先、電話番号を交換した光夜先輩からだった。


「ごめん、電話」


「、、、、終わったら尋問な」


「はいはい、、、、」


ポチ


「もしもし」


そう言って電話に出る。


『もししも、光莉、その俺と光の体操服が入れ替わってると思うんやけど?』


と、言われて俺は少し驚いたがすぐにリュックを椅子に置いて開ける。


「、、、、ぇ?、、、、ちょっと待って下さいね。今確認します」


開けると体操服が入った体操袋がある。それを持って良く見ると、名前の所に、、、、


「『狼崎光夜』、、、、先輩のがこっちにありますね」


『はぁ、だよなぁ。俺も5時間目に体育あるから食べる前に一応確認しようと見てみたら、光のやったから』

『多分、俺が朝のあの時に間違えて持って来たんやと思うわ』


「あぁ、あの時ですか」


朝のあの時とは、朝に光夜先輩のお母さんが早くに来て、光夜先輩の学校で使う物だけ急いで持って来てくれた。

それで朝食を食べていた時に、、、、


『光夜君、確か今日の5時間目に体育あるでしょ?だから、ここに置いておくから持って行ってね。ぁ、光莉も5時間目にあるから一緒に置いておくけど、間違えない様に!』


『はぁい、分かってるよ、ママ』


『ありがとうございます』


何で会話があったが、多分気付かずに俺達はお互いのを持って行ってたんだと昼になって今気付いたと言う事だ。


『それで何やけど、今光莉がおる3階に来るんやけど、クラスまでは行けへんし、何処か良いとこある?』


「へ?、、、、あぁ、なら空き教室が確かあるはずなんで、そこ開いてるんでそこで待ってて下さい。俺もすぐ行くんで」


『了解、じゃ、また後でな』


「はい、また後で」


ピッ


そう言って電話を切ったら、3つの熱い視線が注がれている事に気付いた。


「、、、、何?」


「いやぁ?何か、仲良さそうに離してたなぁ、何て思ったり思わんかったり?」


「何か、光莉も遠い存在になったなぁ、何て思ったり思わんかったり?」


「あの頃の光莉を返して欲しいなぁ、何て思ったり思わんかったり?」


「「「そんな馬鹿な事考えてないけどね〜」」」


「そんな所で仲良い所出さないでよ。、、、、俺、ちょと出てくるけどすぐに戻るから」


「「「早く戻って来てね〜/来いよ」」」


「はいはい」


そう言って光夜先輩の体操袋を手に俺は教室から出て、近くの空き教室に入る、そこには既に


「ぁ、光莉、」


「お待たせしました」


「全然待ってへんよ。ぁ、これ光莉の体操袋」


そう言いながら俺に体操袋を渡そうとする光夜先輩。俺は体操袋を受け取って、光夜先輩に体操袋を渡した。


「ありがとうございます」

「、、、、ぁ、あの」


「ん?何や?どうかした?」


「いや、その、昨日作ったルールで俺らの関係性、「一緒に住んでいると言う事を家族以外では信頼している友人以外に言ってはいけない」って作ったじゃないですか」


「そうやな。それが?」


「その、俺の幼馴染達に言ったんですけど、絶対にアイツら他の人には言わないんで、安心出来るんですけど、その、もし学校生活で幼馴染達が困ってたら、助けてあげたりして貰えませんか?」

「先輩有名人だから、色々助けになれると思いますし」


そう言った。何で、こんな事を言ったかと言うと、3人の事は大切だし、3人の性格だから多分だけど今まで以上に光夜先輩と無自覚に関わろうとしたりする。だから、これは予防線でも有り光夜先輩の友人も交えて仲良くなろうと言うお願いでもある。


「、、、、何や、そんな事?別にええけど、、、それに俺既に友人達に言ってるし、」


「本当ですか!ありがとうございます」


「全然えぇって、、でも、何やろな、俺らの関係性って普通は有り得んかった関係性で、何か普通の日常が消え去る様な前触れって感じするよな笑」


「確かに、、、、そうですね。じゃ、俺もう行きますね(俺からしたら、普通の日常が昨日で儚く消え去ったんだけどね)」


「あぁ、また家で」


何て頭の中で愚痴りながら、空き教室を出て教室に戻る。

戻ったらすぐに、3人に尋問をされながら、事情を全て喋った。因みに3人の反応は、、、、


「何、その漫画みたいな展開、ぇ、何、光莉って漫画の主人公なん?」


「少女漫画の主人公みたいな展開だね。多分、このまま溺愛ルートまっしぐら」


「あぁ、その前に光莉に言い寄る男が現れる展開だな」


「何なの、3人とも口裏合わせたりした??」


「「「いや、特には」」」


なんて言ってて本当にこの3人、仲が良すぎてたまに怖い時がある。まぁ、そんな3人と仲良い俺も大概なんだけどね。何て思いながら残りの授業を終えて、家に帰宅した。






















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月夜に輝く兎と狼の初恋物語〜ツンデレな君に溺愛されてます〜 橋本衣 @yuitakahasi

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