月夜に輝く兎と狼の初恋物語〜ツンデレな君に溺愛されてます〜

橋本衣

第1話 平穏な生活を送りたいだけ!



月の光が照らすリビング、目の前の両親はいつになく真剣な面持ちで俺を見て、一息した後衝撃の言葉を発する。


光莉ひかり、父さん転勤が決まりました」


「3年間の転勤らしいので、お母さんも着いて行こうと思います」


「は?」


衝撃の言葉で俺はピシリと固まってしまった。俺は混乱した頭を瞬時に整えて、両親の顔をマジマジと見るが、その顔は嘘を付いている顔をしていない。


「、、、、マジ?」


「マジだ。それでどうする?一緒に行くか?」


朱莉あかり達2人にも頼りたいけど、朱莉は結婚したし、華莉ひなりは大学生で忙しいし、出来るなら光莉も一緒に転勤先に着いて来て欲しいんだけどね」


「嫌だ。高校入学したばかりでそれば酷でしょ」


「「そう言うと思った〜笑」」


何て、笑ってはいるが俺は笑い事ではない。絶対に行きたいと思ってた高校に入学したのに、パパの仕事の都合でこうなるのはマジで無理だ。


「はぁ、でも、この家は土地も買ってるから売らないけど、その間1人暮らしって言うのもね〜」


「だな、もしもの事があって光莉に怪我や事件に巻き込まれたりしたら」


「、、、、なら、俺が安心して暮らせれる様にすれば良いじゃん。そうすれば、俺はこの家で生活出来るんでしょ?」


「まぁ、そうだが」


「俺は絶対に転校もしたくない!だから、俺が納得出来る理由で連れて行くか、俺を安心させられる人や物を持ってくるんだな!」


「はぁ〜、分かったわ」


「そこは父さん達に任せろ」


「ん、じゃ、俺部屋戻る」


俺はそう言ってリビングから出て2階の自室に入る。入ってすぐにベットに脱力した様に倒れ込む。


「無理でしょ、絶対。友達と離れ離れになるとかマジで無理だし、てか、華莉姉は絶対に大丈夫でしょ!」

「それにもしこのままここで生活出来るんだったら、誰とでも一緒に暮らしてやっても良いし!」


何て枕に顔を当てながらそう大きな声で叫ぶ。気付けばストレスと疲れていたのか眠っていた。


次の日の夕方、とんでもない事が起きるなんて、まさかあの言葉が本当になるなんてこの眠っている俺は知る由もない。






キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


夕焼けが照らす教室の一角の机で俺は項垂れる。大きな溜息をすると、友人3人が俺の方に向かって話しかけて来た。


「はぁ〜、マジで無理」


「光莉、朝からずっとそれ言ってへん?今、放課後やで?」


凛華りんか〜、諦めな、今の光莉にその言葉は聞こえないから」


「うぅ、朝言ったでしょ、パパの転勤に着いて行きたくないって」

「みんなとせっかく同じクラスになったのに〜!」


「まぁ、光莉が俺らの事ちょー大好きなのは知ってるけどな」

「ほんと、どんだけ俺らの事好きなんだよ笑」


しゅう君、顔はニヤニヤしてる」


「そうだよ。秀我しゅうが、そう言ってる君も僕らの事大好きだからね」


「そうだ〜、そうだ〜!」


3人は小中からの友人達でとっても仲が良い。右から猫宮凛華ねこみやりんかは小柄な体格で顔立ちは完全な女顔で髪も少し長めだからか昔から良く女子に間違われていた。

その隣に居るのが虎野秀我とらのしゅうがは高身長で少し目がツリ目で短髪、少しツンデレだけど友人思いな良いやつ。

でその隣で、楽しくしてるのが公原星奈こうはらせいなも小柄な方だけど結構な大食いで良く食べる。秀我とは幼稚園からの幼馴染なんだ。

何て楽しく話していると、気付けば違う話題が上がっていた。


「ぁ、そう言えば、2年の光夜こうや先輩、また告白されたらしいよ。それも1年生!」


「マジ〜?あの人本当にモテるね。中学でもモテてたけど」


「、、、、あの先輩いずれ学園の女子達から告白されそう」


星奈せいな、そんな真顔で言わないで、されそうだから、マジで」


光夜先輩と言うのは俺が通う学校の2年生で、中学も同じだったのでそれなりに顔は知っているが、学年も違ったりしたし、生徒数も多いが学校だったから話した事は全くないがあの先輩は超が付くほどの有名だから、こちらが一方的に知っている状態。


「あの人なんでモテるんだろうね?」


「そりゃあ、三白眼で少し塩顔で、クールな性格なのに関西弁が喋れて、成績優秀運動神経は良い方、常識人だけどちょと抜けてるってのが女子に刺さるんやろ?」


凛華りんか、詳しいね笑」


「そりゃあ、同じ関西弁喋るからって、女子達から関西弁講座開かれそうになった事何回あるんか、分からへんわ」


「御愁傷様」


「てか、今日どっか行く?小腹空いてるしどっかで食べるとか?」


「良いね〜、めっちゃ食べたいな〜」


「星奈、お前は食べ過ぎだから」


「秀君!酷い!」


そう話していると、スマホを見るといつの間にかママからLI○Eが届いていた。俺はすかさずにスマホを操作して内容を見る。


「『光莉に合った人を見つけた。今から家に来るから、光莉も授業が終わったらすぐに帰宅する様に』、、、、は?」

「『この条件が飲まなければ、すぐにでも転校させるからね』、、、、!ヤバ!」


ガタッ


「「「!!???」」」


俺は内容を見て、驚きを感じながらもすぐにリュックを片手に持って立ち上がる。


「ごめん!マジ今日は遊べないわ!」


「?、、、、!あぁ、分かったよ。行ってらっしゃい」


「ちゃんと報告しろよ〜」


「気を付けて帰るんだよ〜」


「はーい!」


俺はみんなに声をかけた後、駆け足で、教室から出て急いで家に帰る。途中転けそうになるぐらい走ったがなんとか無事に帰宅する事が出来た。



ガチャ


「ただいま!!」


そう大きな声を出して玄関の扉を開けて、急いで家に上がろうとした時に、視界の中に見知らぬ靴が2つあった。が、俺は急いでいたので特に気にせずに荷物を部屋に置かずにすぐにリビングに向かった。


ガチャ


「ぁ、光莉お帰りなさい」


「早かったな?まぁ、その方が説明しやすいし良いか」


「うん、そう、だね」


そう少し困惑しながらもリュックをリビングの片隅に置き椅子に座る。何故俺が困惑しているかと言うと、見知らぬ人が2人座っていたからだ。両親と同じぐらい40代後半ぐらいだけどイケメンで若々しい男性と、綺麗で良い意味で着飾らない、素で綺麗な女性が座っている。


「えっと、ママ、この人達は?」


「あら、覚えてない?昔良く会ってたのよ」


「お父さんとお母さんの幼馴染で夫婦なんだよ」


狼崎空介おおざきくうすけです。こっちが、」


狼崎渚沙おおざきなぎさよ。覚えてないわよね」


「はい、、、、何?まさか、この人達が俺と一緒暮らすとか?言うんじゃないよね?」


俺がそう疑問の目で両親に聞くと、両親は一瞬の沈黙の後、少し微笑んでから否定した。


「笑、違う違う!空介達はただ、一緒に暮らしてくれる子を紹介してくれただけ。光莉の1つ上だぞ」


「そうそう、渚沙達の2番目の子が丁度高校生で、同じ学校通ってるらしくて、それなら一緒に暮らしたらって」

「光莉も昔会った事あると思うから、まぁ、覚えてなさそうだけど」


「その子って?」


「あぁ、ちょっと待っててくれ、多分もう プルルルル プルルルル」

「ちょと、出てくるよ」


そう話していたら、空介さんのスマホが鳴った。空介さんはスマホを手に取り、椅子から立ち上がって席を外しリビングから出た。暫くすると、戻って来た。


「もう家の前に来るそうだ。渚沙、連れて来てくれ」


「分かったわ」


「あの、そこ子ってどんな子ですか?」


「そうね〜、良い子よ、小学校の6年間は関西に住んでたから関西弁喋るのよ」


「そうだね。でもあの子、ここ最近はちょとクールになって来たし、」


「へぇ〜、」

「良いんじゃない。歳近いって言うし、それに同じ男なら、俺は全然良いと思うけど」


「あら、それで納得して受け入れてくれるなんて、、、、ほんと、チョロ じゃなくて良い子だわ」


「ママ〜、半分は言ってるんだけど〜?」


「でも、納得して受け入れたんだから、絶対に会って無理って言うのはダメよ。無理って言ったら速攻で転校させるから」


「分かってるよ!」


何てツッコみながら、少し考え込む。


関西弁を喋る、高校2年生、クール、、、、、ぁ、苗字、、、、


何て考えていたら玄関の方から話し声が聞こえて、ドアが開く音が聞こえそちらに目を向けると、


ガチャ


確か、光夜先輩の苗字って、、、、、、、、


「光莉君、こちらが息子の“狼崎光夜おおざきこうや“です」


「こんにちは」


「、、、、はぁぁぁぁ!!?!?」



この日、俺が人生初の後悔をした。受け入れるなんて絶対に無理だと思ったからだ。











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