第2話 魔力塊(まりょくかい)
転移した先は埼玉県の西側。県庁所在地であるさいたま市だ。
既に警報がワンワン鳴り響き、住民たちへの避難の呼びかけ、避難活動が始まっているもしくは終了していることだろう。
いま、俺の目の前には黒く禍々とした直系10メートル程の魔力の塊が渦のようになってただずんでいる。
え?目隠ししてるのに前見えるのかって?見えるんだな。これが。
――
と呼ばれるものだ。
一般的に、魔力塊とは、文字どおり魔力の塊であり、魔物が発生するゲートを開く鍵となる。として知られている。
これは間違いではないが少し情報が足りないだろう。
魔力塊には何種類かがかり、有名なうちの一つが〚自然魔力塊〛と呼ばれているものだ。これは地球が活動する中で使用される大気中の魔力の残り香だったりが集まって出来るもので山の中など、人工物が少ない時に発生する場合が多い。
逆に人工物が多く、人が多いとこに発生しやすいのが〚感情魔力塊〛と呼ばれるものだ。これは生物の感情。
喜びや悲しみ、怒りや嫉妬など、どんな種類のものでも受け入れ、混ざり合ったものであり、感情の値が強ければつよいほどそれによって発生するゲートに強い魔物が寄り付きやすいなどというふざけたような特徴がある。
今回の魔力塊は後者の感情魔力塊だ。
と言っても、その大きさからしてせいぜいC級くらいが妥当だろう。
控えめに言って今の俺にとっては雑魚だ。
しかし、新米や、経験の浅い者にとっては強敵となる。
まぁ、今回は俺が相手をするので一瞬で終わってしまうだろうが。
(おおっと、いろいろ思考してきたらもう開きそうだな)
『そうだね。いい?アウロラ。魔物を倒したら即座に離脱すること。毎回言っていることだけど、協会の娘達に来られたら大変なことになるからね』
協会所属のたちの悪さなどはこっちもよく理解している。全員が全員たちの悪さというわけではないが、大きな組織というものにはたくさんの人間が集まり。たくさんの人間が集まれば様々な感情のすれ違いが起きるものなのである。機能的に一部問題があるように見える協会にそうなった場合の対処ができるかも怪しいところなのだ。
問題を起こされる前に撤退すれば良いという考えなのだ。
(わかってるから。安心しとけ)
『君の安心しとけは信じちゃいけない気がするんだけど』
むむ?それは心外なのだが。というか失礼では?
(そんなことより来たぞ)
脳内で軽くやりとりをしていると魔力塊がまるで卵生の動物の卵が孵るときのようにひび割れていき、パラパラと破片と一部が消えて行く。
1メートル程の穴から光のようなものが漏れ始め、次の瞬間には魔力塊は消えてなくなっていた。
「ブモオォォォォォォォォォォォォ!!!」
現れたのは全長10メートルほどの人の体に牛の頭を持つ魔物。ミノタウロスと呼ばれている者だ。
大気を揺るがすほどの大きな咆哮をあげたミノタウロスは筋肉モリモリのボディービルダーのような人型の身体に牛の頭。さらに大斧を持っている。
その姿は並の人間なら腰が抜けて動けなくなっているか失禁ものだろう。
「汝に死の宣告を 終わりなき虚無の果てに 彼岸の花束を」
手を前にかざし、静かに詠唱する。
この詠唱に特に深い意味はない。
魔術の構築をしているだけなのだから、しかし詠唱を考えちゃうのは男の性なのかなんなのか。
ミノタウロスはこちらを睨んで突進してくる
「夜明けとともに訪れる 冥府の果てへの
けしてビビらない。慌てない。慌ててはいけない。ここでミスでもしたら詠唱はやり直しだ。
ほんとに、詠唱の単語に特に深い意味はないくせに詠唱画ないと発動できないのが魔術のめんどくさいとこなんだよなぁ………。
「輪廻に帰りし奇跡を その身に宿る 罪の……清算を」
構築は済んだ。敵は目の前。
可哀想に。人の感情から生まれてヒトの手によって葬られる。可哀想だ。本当に。
フフフっふふふふふ
…………だからこそ………壊しがいがあるってもんだよなぁ?
「
きっと口が裂けるほどの残虐な笑みを浮かべていたことだろう。
いや、口が裂けるほどの残虐な笑みを浮かべながら、俺は魔術を発動した。
ミノタウロスは何かに気がついたのか俺を見て、灰となって消えていった。
ミノタウロスがいた場所には白く煌めく玉のようなものが浮かんでいる。正直ミノタウロスレベルのものは要らないので歩み寄って握りつぶした。
風がなびく。視界の端には長くなった黒髪がチラチラと映って見える。
「やっと見つけたわよ。アウロラ。今日こそは………今日こそは殺してあげる」
俺の名前は
しがない魔法少女件ちょっと事情を抱えたごくご普通の男子高校生だ。
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