第40話 モンスター討伐企画―①
いよいよマリアンとダンジョンに入り、ゴブリン討伐をする日がやってきた。
リスナーとスマホのアイテム実験はしたし、
姉妹で剣術の真剣勝負をしてマリアンの腕も上がった。
あとは、俺がうまくマリアンをサポートすれば、なんとかなるのではないかレベルまでなった。
ダンジョン入り口でスマホを開き、マネージャーとしてメッセージを入力。
配信スタートボタンを、タップした。
“【リスナーさんと一緒にモンスター討伐企画!】
マリアンは今、ダンジョンに到着ました。皆さま、応援よろしくお願いします”
スマホを空中に浮かべ、ビビアンを【追尾】できているのを確認して、コメント欄を空中に映し出す。
“おはこんばんにちわー”
“ビビアン、画面揺れてるけど、もしかして移動中?”
松明に照らされたマリアンの顔が揺れている。
「皆さまこんにちは、ビビアンの部屋へようこそ。ここは例のモンスターがいる洞窟ですの。モンスターを刺激してしまうので、あまり大きな声を出せなくてごめんなさいね」
俺たちの足音と水滴の落ちる音だけが、洞窟内に響いていた。
マリアンがリスナーに話しかけるたびに、声が反響する。
初心者用のダンジョンということもあり、道には親切なことに松明も設置されていた。
足元を照らすように、俺も松明を持っているが、それでもまだ薄暗い。
この暗さで、スマホは映像を捉えきれるのか。
若干、不安がよぎった。
“だいぶ薄暗いね……洞窟配信?”
“松明! おおお、ダンジョン探索って感じの雰囲気出てるわ!!”
リスナーさんは雰囲気だけでも大盛り上がりだ。
俺が元いた世界には、モンスターなど存在しないのだから、当然そうなるよな。
“初心者用の低級ダンジョンを見られる日が来るなんて……我が生涯に一片の悔いなし”
“お前の生涯が低級すぎて草”
“悔いなくなったなら、モブと一緒にビビアンの肉壁して来いやw”
“そうだ! モブもいるんでしょ? まさか一人で歩いてるんじゃないよね?”
“ちゃんといる?”
リスナーさんに聞かれ、マリアンは少し先を進む俺に視線を送った。
「彼は、わたくしの少し先を進んでいます。彼は顔出しNGですから。」
俺はそばにいるものの、マリアンは初めて暗い洞窟を歩き、少し不安そうな顔をしていた。
しかし、いつも通りに明るいリスナーさんたちのおかげで、俺もマリアンも気持ちが楽になってきた。
二人だけでは、こうはいかなかっただろう……
リスナーさんに改めて感謝だな。
「ところで道には松明がささっていますけど、最低限の灯りですわ。皆さまちゃんとわたくしが見えまして?」
配信画面に映るマリアンはいつもよりだいぶ暗く、かなり見えづらい。
“一応、ちゃんと見えるよー。大丈夫”
“今更だけどさ……初心者用の低級ダンジョンって何?w おしえて!えらいひと!ww”
“そんまんまだよ。駆け出し冒険者の練習場として整備されている場合もある”
マリアンの代わりにリスナーさんが答えてくれる。
本当に助かる。
「そうらしいですわ。でも最近は、ゴブリンが近隣の町の畑を荒らすという被害があって、討伐依頼が出ていましたの」
マリアンはリスナーさんの説明にクエスト内容を付け加える。
よし、完璧。
これで初見さんでも、内容が理解しやすい。
“それにしても薄暗いなぁ”
“マリアン? 転ばないように足元注意ね!w”
「わたくしそんなにドジじゃ……」
マリアンはその言葉を言い終わる前に、つまずいて体勢を崩した。
“ほら~~ww”
コメント欄が笑いに包まれる。
その時、聞いたこともない鳴き声が聞こえてきた。
——ギャッギャッギャッ……
そして、再び静寂が周りを包み込んだ。
マリアンの表情は緊張と恐怖でこわばっている。
これはまずい。
このままでは、ネガティブな方向に気持ちが持っていかれてしまう。
俺は、一旦スマホの配信を切ってから、マリアンが落ち着くように、抱き寄せて言った。
「落ち着け。深呼吸だ。大丈夫、大丈夫。俺が付いてる」
そういう俺も、緊張していた。
言っておくが、やむを得ず抱き寄せたんだからな。
「はい……モブさん? く、苦しいですわ」
「え、あ、そうか、すまない」
俺は素早くマリアンから離れた。
マリアンは、何を言えばいいのか戸惑っていたが、
「あ、スマホの配信。スタートボタンを押しておきますね」
俺の手からスマホを取って、配信をスタートさせた。
“あ、映った”
“一瞬、切れたよね。もうやられちゃったのかと思って心配したよ”
“なんだ、なんだ?”
悪いな、リスナーさん達。
あのシーンは見られたくないから、わざと切ったのだ。
俺はもちろん、そのことは言わないし、マリアンもそのコメントは既読スルーした。
——ギャッギャッギャッ……
やっぱり、いる。
ゴブリンの声だ。
“なんか変な声した? 変なのが数匹おる?”
“今、確かに何か聞こえたなぁ? 例えるならドナルドダックみたいな声?”
“ドナルドダック影分身した?w”
“それはそれで怖い……というかうるさいww”
“マジレスすると、たぶんゴブリンだろうな”
俺もマリアンに向かって口元に人差し指をあてて合図した。
「皆さま聞こえまして? ようやく企画ができますわね!」
おいおい、俺の合図を見ていなかったのかよ!
だが、そこまで声が出るということは、マリアンは少し緊張を残しているなりにも、だいぶ心に余裕が出たということか。
“マリアン、嬉しそうにしてて余裕そうじゃん?”
“バトルジャンキーかよw イメージカラー的に……青の剣士?w”
“だいじょうぶかな?”
“なんだかこっちまでドキドキしてくるね”
“マジで僕まで緊張してきた。一瞬トイレいいですか?”
“バーロー! 始まる前に行っとけ!”
コメントを読みつつ
少し進んでいくと道が開け、広い空間に出た。
そこには三匹のゴブリンの姿。
“ゴブリンいた!”
“ドナルドダックじゃなかったw”
“ドナルドゴッブだったなww”
“ゴッブってなんだよw”
初めて見る本物のゴブリンに
リスナーさんはテンション高めな反応を示している。
俺だって、同じだ。
「いよいよこれから戦闘ですのね! では、スマホはその岩の上に置いておきますわね!」
マリアンは岩の上に石を持ってきて置き、スマホを立て掛けた。
そして、少し先にいるゴブリンが映るように角度を調整していた。
俺はゴブリンの登場に緊張していたから、それ以上の確認はしなかった。
“頑張って!!”
“サポートは任せろ!!”
“ケガしないようにね?”
“成功させようね!初企画!”
次々と応援コメントが寄せられる。
「ありがとうございます! いってまいりますわ! それでは【リスナーさんと一緒にモンスター討伐企画】スタート!!」
マリアンはスマホにそう言って駆け出した。
その声と同時に、開始のゴングかのようなカンッという音が響き渡った。
何の音かもわからないまま、俺たちはゴブリンに向かって行った。
俺たちが駆け出した後、スマホ側では大変なことが起きていた。
カンッという音と共に
画面がクルクルと回転し天井を向いていた。
“ん? 何が起きた?”
“おい画面……松明しか映ってないけど……?”
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いつもツンデレ令嬢を応援していただきありがとうございます。
配信マネージャーのモブからお知らせがございます。
カクヨムでは、12月26日から『積読消化キャンペーン』をやってます。」
「モブさん、『積読消化キャンペーン』って何ですの?」
「知って腰を抜かすなよ、マリアン。
フォローしている作品を、10エピソード以上読んだ方には、最大一万円分のアマギフが当たるという、カクヨム太っ腹キャンペーンだ。
ぜひこの機会に【ツンデレ令嬢を人気配信者にしたモブだけど、リスナーが協力的で助かってる】のフォローをしてください!」
「あら、マリアンの部屋はフォローしなくてもよろしくって?」
「作品のフォローとマリアンのフォローは同じだから安心しろ」
「あらん」
詳細はこちらです👉 https://kakuyomu.jp/info/entry/tsundokucampaign
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます