第41話 モンスター討伐企画―②
“ん? 何が起きた?”
“画面……松明しか映ってないけど……?”
俺はゴブリン討伐に夢中で、コメント欄の内容を全く読んでいなかった。
このスマホは、持ち主である俺がスキルの【追尾】をオンにしないと、被写体を追うことは出来ない。
それなのに、俺はゴブリンを目の前にしてあまりの緊張感で、そのことをすっかり忘れていた。
“さっきまでのゴブリンが映る画面と違う―”
“壁に設置された松明だけが、ゆらゆらと揺れていますが”
「やぁぁぁぁぁぁーーーですわ!!」
“マリアンの声が聞こえる。音声だけは生きているようだ”
“なぁ? 画面変じゃね?”
“何かがぶつかって、スマホが吹っ飛んだ?”
“布団のように?”
“え!? マリアン大丈夫かな!?”
“何も見えないぃぃぃぃぃい!!!!”
“音声を聞く限り、戦闘が始まったみたいだな”
“見事なまでのスルー……”
“状況は見えないが、戦闘音だけは生々しく届いてくる”
―ギャッギャッ、ギャッギャッ
―カン!
―キン!
“相手ゴブリンだよな?”
“この状態でマリアンに何かあったらどうするんだ?”
“どんな状態だろうと、配信アイテムでサポートするに決まってるだろ!”
「キャッ…!!」
“マリアンの短い悲鳴が聞こえた”
“もしかして、苦戦しているんじゃないか?”
“音だけ聞いていると……、ゴブリンの持つナイフで防がれてる……?”
“反撃されてるみたいだし、見えないのは心配すぎる!!!”
なんとなくコメント欄のコメントが、どんどん流れて行くのはわかっていた。
しかし、今の俺には内容まで読んでいる余裕などない。
“モブがいるとしても、俺らのサポートなくて人数不利だろ?”
“もしかしてヤバいか!?”
“くっそ! もう何でもいい! アイテム欄の物を投げまくれ!!!!”
そしてついに、アイテムが投げ込まれ始めた。
「あら!
リスナーからのアイテムで、マリアンは悲鳴を上げた。
“誰だ! ガッチガチの
“マリアンには軽装備だろ!!”
“危ないと思ってフルプレートのやつをつい…”
俺はゴブリンに向かって、懸命に剣を振っていた。
“マリアンの言葉を聞いて、どんな装備が送られたのか予測しながら相談するしかないな”
“了解! リスナー同士で相談しながら、どんどんアイテムを投げようぜ”
「キャッ!? この剣なんですの!? 剣……にしては刀身の幅が広…、重い……ですわ……!」
マリアンは、持っていた剣が大きく変換されて、動きが妨げられている。
華奢なマリアンに、野郎どもがゲームで使うような剣は無理だ。
と思ったら、剣の重みで勢いが付き、運よくゴブリンに命中したようだ。
―グェッ!
“おい、誰かバスターソード投げたろ?”
“なんでわかった!?”
“幅広い刀身でみんな知ってそうなのはそれしかねぇだろw”
“でも一体やれたんじゃね?”
“まぁ結果オーライだが、まじめにやれよw”
一体倒せたことで、マリアンは自信が出てきたようだ。
「
戦闘中だというのに、マリアンの呑気な一言。
“お願いだから、
その瞬間、ゴン! と鈍い音がした。
俺は気になって、マリアンの方を振り向いた。
すると、そこには潰されたゴブリンが一体倒れていた。
“今の音、絶対、
あとは、俺の周りのゴブリンさえやっつければ、なんとかなりそうだ。
終わりが見えて来たぞ。
その余裕が、画面を通して伝わったのかは知らないが、リスナーたちは、少し遊び心を加え始めた。
「この
何、何だって? マリアン、どんな
気になって戦いに集中できないじゃないか。
マリアンの
早く、こいつらを叩きのめさなきゃ。
てやあぁーーーー!
恥ずかしそうに叫んだマリアンの声に、
男性リスナーたちも口を揃えて叫んだ。
“(((……!? どんな!?)))”
こうして戦況が見えていないのにも関わらず。
マリアンの声や戦闘音を聞きながら、リスナーさんたちはアイテムを投げ続けているとは。
この時、俺たちはまだ知らなかった。
“見えない分、心配したけど”
“声や音を聞く限り、戦い方が安定してきたみたい”
アリアンは俺が思っていた以上に戦闘センスが良い。
リスナーが思っている以上に、戦い方の飲み込みが早かった。
“よかった。何とかなってるみたいだね”
“一時はどうなることかとww”
俺は一瞬、油断した。
俺の背後から、ゴブリンが飛びついてきた。
「彼を傷つけるのは、このわたくしが許さなくってよーーーー!!!」
マリアンは果敢にゴブリンに向かって攻撃を仕掛けた。
“いま、聞いたか? マリアンが叫んだぞ”
“リア充爆発しろぉ!”
“モブは爆ぜるべき!”
“爆裂魔法撃ち込みたい……”
“お前ら……普通に祝ってやれよww その爆裂魔法が祝砲なら許すw”
“マネージャーさんが、ピンチだったの? いやだ”
“あんたたち、わたしらマネージャー・ファンが黙っちゃいないからね”
“マネージャーを傷つけるのは、わたし達が許さなくってよ――!”
マリアンの一撃でゴブリンは倒れて消え、俺は命拾いをした。
「やった!! やりましたわ!!!」
“あっ終わったみたい”
“どうやら勝ったみたいだな”
“冷や冷やしたw”
“マネージャーさんも無事なのね”
“ところで露出多めの
“それな! 気になるわぁw”
“バスターソード的なのを投げたやつ誰だ? 貴様とはいい酒が飲めそうだ”
マリアンの、初めての勝利に興奮した声が響き渡った。
「皆さま見ていまして!? わたくし勝ちましたわ!! ……あら? スマホはいずこに?」
あれ? スマホが【追尾】していない。
あ、さっき一旦切ってから、マリアンの操作をまかせてしまい確認しなかった。
俺は、なんてミスをしでかしたんだぁ!
“ここだよー!”
“マリアーン! ケガとかしてないー!”
“マネージャーさんも生きてるー?”
当然、マリアンに聞こえるはずはない。
しかし、俺にはリスナーさん達の心配しているコメント欄は見えていた。
「あら、こんなところにスマホが……。これって、わたくしの戦いが映ってなかったってことかしら……?」
マリアンは心配そうにスマホを覗き込んだ。
ごめん、俺が一時配信を切ったせいだ。
“あ、マリアン! ようやく見つけてくれた!”
“何が起きたか見えなかったけど、心配してたんだ!”
“悲鳴が聞こえるたびに、ヤバいかと思ってアイテム送りまくったw”
“俺は聞こえなくても送りまくった! (ドヤァ)”
“くっっっそ迷惑で草”
リスナーたちは、いつもと同じような感じで、次々とコメントを送ってくれた。
“とりあえず無事でよかった!”
“やっと、マリアンの顔を見られて安心した!”
“戦闘は、全く映ってませんでしたw”
“音声だけでも、結構迫力はあったけどね?”
“でも、これってさ、マネージャーのミスじゃね?”
最後のコメントが核心をついていて、俺はドキッとした。
今更だが、俺は慌てて【追尾】をオンにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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「知って腰を抜かすなよ、マリアン。
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「あら、マリアンの部屋はフォローしなくてもよろしくって?」
「作品のフォローとマリアンのフォローは同じだから安心しろ」
「あらん」
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