第36話 アイテム実験
配信マネージャーとして、メッセージを最初に貼った。
[今日の配信は、アイテムの実験をします。
リスナーの皆様と、ツンデレ令嬢のマリアンは、どんな意思疎通が出来たらアイテムを効果的に実物にできるのか。その実験です。
来るべき、ゴブリン討伐にむけてアイテムを最大限に活用しましょう。
たくさんの皆様の参加を希望します。
ただし、金銭的に無理はしないでくださいと、マリアンからのお願いです]
このメッセージは、途中から参加した人でも理解できるように、固定しておいた。
「では皆さま、今アイテム欄に何が表示されているか、教えてくださいますか?」
マリアンはスマホ画面にむかって、話しかける。
「今回の企画、【リスナーさんと一緒にモンスター討伐企画!】なのに、投げてもらえるアイテムが、食べ物や金タライだけではお話になりませんから」
ゴブリンに金タライはどうよって話だ。
「先日の一件を例に挙げると、お腹が空いたわたくしに必要な食べ物という分類で、ハンバーガースタンプが表示されましたね。それを押したリスナーさんが、月見バーガーを思い浮かべたから月見バーガーが送られてきた……
このことから、リスナーさんの考察によると、わたくしに今必要なものが、アイテム欄にスタンプで表示されるのではないかと。そして、現物化するのはそれを贈ったリスナーさんの想像力で、内容が変化するんじゃないか? ということでしたわね」
金タライはマリアンが希望した物ではないように思うが。
ロケット花火も然り。
希望していない。
あれはリスナーさんたちの独断で実行されたと思ったが。
“そうだねー”
“その後もハンバーグはチーズインとか、カレーはバターチキンとか”
“元の料理をアレンジした物になって送られてたしなぁ”
“可能性は全然あるよね! マリアンのお腹が空いてた時に話してた料理だったし!”
マリアンとリスナーは、少しずつ意見を出し合い、確認していた。
「確かアイテム自体は、配信が盛り上がってくると、投げられるのですよね?」
“まぁ、今までの感覚だと、入室者数、いいね、コメントが増えて、注目のランキングに載ったらかな”
“マリアンは普通にしていても、ランキング常連だからそこは大丈夫だとして”
“とりあえず、今のアイテムを見ると……ブランケット? 枕? お昼寝マット?
……マリアン、もしかして眠い?w”
「正解ですわ! アイテム欄について、わたくしに今必要な物に変わることを考えていたら、眠れなくなって夕べ遅くまで起きていましたの!」
アリアンは口元に手を当て、ふわぁ~と欠伸をした。
“わざわざww”
“お肌に悪いよ?w”
“配信のことになると、ひたむきに頑張るよねぇww”
どうやらマリアンに眠気があることで、アイテムは、眠るために必要なものに変化したようだ。
「でもこれで、わたくしに今必要な物に変わるという考察は、間違っていないことがわかりましたわ!!」
マリアンは口元を隠しながらもう一度大きな欠伸をした。
“いくら口元隠してるからって、伯爵令嬢が、人前でそんなに欠伸してww”
“まぁ、マリアンだからw”
“伯爵令嬢ってことを、鼻にかけないからこそ俺たちのマリアンだろ?”
“それはそうww”
リスナーさんは、素のままののマリアンを受け入れてくれている。
伯爵令嬢という肩書付きのマリアン・オラエノではなく
普通の女の子であるマリアン・オラエノとして。
それがマリアンにとって、頑張ってみんなに恩返ししたい! という気持ちにさせているのだろう。
いい意味でも、悪い意味でも。
“ん? マリアンどうかしたの?”
「なんでもないですわ!」
俺が思うに、
リスナーさんの気持ちが伝わり、マリアンは少しウルッとしてしまったのだろう。
マリアンは一瞬だけハッとしたが、気持ちを切り替えて話をすすめた。
「それでは次ですわね。リスナーさんの想像力で、アイテムを贈った時に変化するのか。これは、アイテムを投げてもらうことになりますが……お金がかかるのでしょう? 皆さまよろしいのですか?」
“何言ってるの! マリアンにだから投げたいんだよ!”
“そうよ? マリアンだから協力するの”
“わたしは、マネージャーさんのために協力するんだけど”
“それも、あり、あり!”
なんと、俺のためにアイテム実験に参加してくれるリスナーもいるのか。
ありがたい話だ。
俺も、実験に参加してみるか。
「また、そんな優しい言葉をくださる……」
“んー……今表示されている中だと、枕が一番わかりやすいかな?”
“じゃあ、私は大きめの抱き枕を想像するね!”
“俺は低反発のやつを。弾力とかも違う方がわかりやすいだろうし”
“私は何かキャラ物のビーズ枕!”
“そんじゃ、想像できた人から順番に投げていこかー”
“あいよー”
リスナーさんの間で話がまとまり、枕のアイテムが投げられた。
抱きつきやすい長めの枕や、薄い枕、手触りのいい黄色いクマの枕が、
マリアンの目の前にどんどん出現している。
「これは皆さまの想像通りの枕ですか?」
マリアンは枕をひとつひとつ画面に映し、リスナーの反応を伺う。
“そうそう!想像通り!!”
“まさかこんなに正確に、想像通り出てくるとはw”
“すごいな!”
どうやら実験は成功したようだ。
皆の考察は、間違っていなかったことが証明された。
「いろんな枕がありますわ。こんなにあったら迷ってしまいますわね……」
“マリアン、一番気に入った枕はどれ?”
“気に入った枕を送ったやつが、一番マリアンの気持ちや好みを理解しているってことか”
“ねぇ、ねぇ、一番気に入った枕はどれ”
マリアンは、たくさん現れた枕の中から、ひとつを選び出した。
「これかしら。真っ白で無地だけど、まわりにフリルがたくさん付いていて可愛い!」
“誰だ、マリアンの好みを理解して想像したやつは!”
“悔しいけど、俺じゃない”
“わたしも違うー”
すまん。俺だ。
俺は、そーーっと手を挙げた。
「プっ! 今、マネージャーが手を挙げてまーす」
“何? 爆ぜてしまえw”
“何気に参加しているやつ”
“それだけ、心配なんだろ。この企画が”
皆さま、すみません。
「ちょっと嬉しいです。ところで、状況を変えて、もう少し試したいのですが、お付き合いいただけますか?」
“もちろん!”
“マリアンのためなら朝までだって付き合うよ!”
“お前……この前寝落ちしてたやんww”
“……記憶にございません”
“wwwww”
その後も、いくつかの実験をした。
釣りの話になると釣りの道具が表示され、それを投げてもらうと、釣り竿は手元に。
釣り用のベストは着ている服と入れ替わるような形で、自動的に装備された。
「着せ替え人形になった気分ですわ」
マリアンが猫を撫でていると、猫の餌やブラシが表示された。
それを投げてもらうと、リスナーさんの想像通りに、ちうーる? という餌や、豚毛を使ったブラシが送られてくるという結果が出た。
これならクエストでもいけそうだ。
マリアンに必要な物が、リスナーさんから届く。
無事に考察は実証された。
「皆さま今日は、長い時間ご協力ありがとうございました。これで安心して、クエストに行けますわ」
“これくらいどうってことないよ!”
“まぁ俺が一番役に立ったな! ドヤッw”
“あら? 何を言ってるの? 一番は私よ?w”
“寝言は寝てから言ってくれ…諸君、おはよう”
“やめて!! 俺のために争わないで!!!”
“いや、お前のためではねぇよww”
“ひとり、寝起きの奴おったなぁww”
マリアンは、フフッとみんなのやり取りに笑顔になった。
マリアンの配信には、いつも笑顔が溢れて暖かな言葉が流れる。
いい友達を持ったな、マリアン。
あとは、初心者コースをワッパガーさんにお願いしておくか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いつもツンデレ令嬢を応援していただきありがとうございます。
配信マネージャーのモブからお知らせがございます。
カクヨムでは、12月26日から『積読消化キャンペーン』をやってます。」
「モブさん、『積読消化キャンペーン』って何ですの?」
「知って腰を抜かすなよ、マリアン。
フォローしている作品を、10エピソード以上読んだ方には、最大一万円分のアマギフが当たるという、カクヨム太っ腹キャンペーンだ。
ぜひこの機会に【ツンデレ令嬢を人気配信者にしたモブだけど、リスナーが協力的で助かってる】のフォローをしてください!」
「あら、マリアンの部屋はフォローしなくてもよろしくって?」
「作品のフォローとマリアンのフォローは同じだから安心しろ」
「あらん」
詳細はこちらです👉 https://kakuyomu.jp/info/entry/tsundokucampaign
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