DM数:9件目 嘘つき
「川島 お粥作ったけど食べるか?」
悶々とする意識の中頷く
「…ん」
あ、え、と
いい匂い…
ん?待てよ??
山田くんは料理できるの?!
その驚きで目が覚めてしまった。
漫画とアニメなら黒いダークマターが
できていそうな人物だけど。
いつも阿呆そうな顔している
不思議な男だけれど???
クラスの人気者といえど、お調子者でわいわいうるさいあの山田くんが??
でてきたものは、
予想と裏腹に、
とても美味しそうで
よだれがたらんとでてきそうだ。
艶から匂いまで全てが美しい
お粥が机の上に置いてあった。
湯気は、たっていない。
きっと私に気づかって
わざわざさましてくれたのだろう。
私はどが付く程の猫舌なのだ。
「美味しそう…」
「だろー?俺の得意料理なのよ」
お粥が得意料理とは…
具合が悪い人が家にでもいるのだろうか?
と考えたときに妹さんのことを思い出した。
『その俺には病弱な妹がいて…』
妹…そういうことか…
愛してるんだな
妹さんのことを
「川島食べれるか?ほらっ」
そうして彼はスプーンを私に向けて
近ずけてくる
「いや、私一人でも食べれるわ」
「いやいいよ、病人は安静に」
どんどん近ずいてくる。
そのスプーンには
程よくとろとろな米に
色味だけでなく栄養も旨みも
全ていけますけど。
といわんばかりの卵がある
よだれがのどをごくっと滑ってゆく
でもこの年であーんしてもらうのは
さすがに変ではないか??
スプーンと口の距離あと1cmのところで
ぐるぐると心のなかで悩む。
そしてついに
羞恥を捨てて美味しいお粥を求めに
私の体は動いていた。
ぱくり
口の中で美味しさが広がる。
米の甘さ。卵のしょっぱみ。
丁度いいくらいまで冷まされた温度、
薄すぎず、濃すぎていない病人の私にぴったりな味のお粥だった。
「うま…」
思わず口からそんな言葉が溢れ出てしまった
いつも通り山田くんはけたっと
は、笑わなかった。
いつものように。
眩しい笑顔をこちらにみせつけてくると思っていたのに。
今日は何故か
うさぎやちいさい生物をみたようなときの
甘い甘い笑みをこちらにむけていた。
「ありがと。」
酸っぱそうに。でも表情は甘く、そう呟く
「あのさなんで家わかったの?
そしてなんで家にはいれたわけ???」
私はその笑みをなかったものとして
ずっと気になっていた疑問を口に出してみた。
「ぁぁ 。
先生にお前にプリントもってって
やれーって、
俺んちさ川島んち家の近くだったみたい」
え?
1回も近くで山田くんをみたことが…
いや1回だけあったかもしれない
幼稚園の頃近くの公園で遊んだ…
その考えを遮るように山田くんは続ける
「それで家に入れたのは
川島の兄ちゃんが」
『できれば、川島の面倒みてやってくれないかな?吹雪は僕のこと嫌いみたいで…』
「って言って部屋に上がらしてもらってキッチンも借りたわけですよ」
「え??お兄ちゃんが?」
「川島って兄ちゃんのこと嫌いなのか?」
山田くんはそういって何故か悲しそうな表情を浮かべ聞いてくる。
憎いし、ずるいと思うし、
お母さんお父さんをとってきた極悪人。
そして心の中で問いかける。
私はお兄ちゃんのことが嫌いなのか…?
違う。
私はお兄ちゃんが嫌いな訳では無い。
優秀な兄。
嫌いなのは優秀な兄を理由に努力をしない
自分
だ。
お兄ちゃんが努力しているからと
前々から頭では気づいていたのに。
家族が構ってくれないと心で納得する理由をつけて、
楽な方へと逃げて
その箱にSNSで蓋をしめた。
だからお兄ちゃんを
私が
勉強や物事を本気で行わない理由に
したてあげていたのだ。
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