DM数:2件目 2人の自分
空き教室に入ると木の匂いが鼻に飛び込んできた。少し古臭い校舎。たまにぎしぎし音がするがまだ大丈夫なようだ。
そして辺りをみわたすとまだ彼は居なかった。
「……」
スマホを開き私はWというアプリを押した。
トントントン
文字を早々と打ち込む。
これはいわゆるSNSというやつだ。
その画面には、可愛いらしい女性のアイコンに
シャインというアカウント名があった。
そう。そのアカウントは吹雪のアカウントだ。
だがSNSの私、シャインと吹雪は全くの別人である。
投稿してあるものは、可愛いキャラのイラストをかいたノートの写真、好きな小説のファンアート
ここまではオタク全開の吹雪。だが、
友達と遊んでくるものやカフェに行くという、キラキラ女子を演じているものもある。根暗な私とは正反対のものだ。
でもまあ、オタク投稿に添えられている文字も
私別に誰とでも喋れますよ? というばかりの
明るい言葉ばかりなので吹雪とはほぼ遠い。
( こんなの、吹雪 じゃない?そんなのわかってるよ!)
シャインはネットでフォロワーが5万人いる
きらきら女子で大人気イラストレーターだ。
だけど吹雪はどうだ?髪はぼさぼさ地味で取り柄のない平凡な女の子だ。
ほかの女子の制服にはアレンジやキーホルダーが付いてたりする。だが吹雪には
女子力も可愛さもなにもない。
そんな子になんか皆興味ないでしょ?
だからSNS上だけでは、可愛いくてきらきらしているシャインを演じてるのである。
ネットだけが私の居場所。
それを守るには、
そうするしかないの。
《友達と空き教室でお話中♥
先生に見つからずに帰れるかなー?》
ポン
そして投稿した音が響きわたる。
どんどん観覧数が増える。
♪〜
1イイネ、2イイネという通知が来た。
それから上へとハートが伸びてゆく。
このときを私は生きがいにしている。
心が落ち着く。平和な時間。
そしてコメントもついた。
《やだ!わたしもシャインちゃんとお話してみたい〜》
最高に嬉しいし楽しい瞬間。
シャインとして生きると決めた吹雪にとって…
ひたひたと喜びに浸っていると
空き教室の扉が勢いよく開かれた
きっと彼 が来たのだ と思い体を扉の方角に向ける
「ごめん。待ったよな 委員会の仕事やってきたわー」
やはり彼だった。廊下を全力で走ってきたのか彼の息は荒かった。
「いやいや 大丈夫。そんなに待ってないよ?」
SNSをやっていたため、
空き教室に入ってから30分が経過していることに気づけなかったのである。なので体感10分。嘘は言っていない。
「そう。ならよかった。
実は、ちょっとこれについて聞きたくてさ…」
そう言って彼はスマホをとりだし
私がよくみたことのある画面を
私 に見せつけたのであった。
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