第4話:少しづつ分かって行くプリモのこと。

妖精さんは缶詰から出て来て間なしだから大きさはまだ10センチくらい

かな?。


「おはようございます・・・缶詰を開けたのは、あなた?・・・」


「そうですけど・・・」


「私、妖精のプリモピアット・・・それが私の名前です」

「プリモって呼んでください、おニイさん」


「プリモ?・・・え?妖精さん?」


「そうですよ・・・おニイさんは?」

「おニイさんはお名前、なんて言うんですか?」


ボブゴブリンさんのギモーヴさんから貰った缶詰の中身はなんと妖精だったのだ。


「あ、僕の名前は「夢丸 友実たでまる ともみって言います」


「たでまる?・・・ともみ?さん」


「そうですよプリモさん」


「じゃ〜今日からトモミさん、ってお呼びしますね」


「はい、どうぞお好きに・・・」


改めて思った、妖精なんているところにはいるんだって。


ボブゴブリンさんのギモーヴさんは僕が家でひとりぼっちで話相手がいない

って言ったから、妖精を僕にプレゼントしてくれたみたいだ。

で、まずプリモさんはちゃんと日本語がしゃべれることに僕は驚いた。

彼女はきっとバイリンガルなんだろうね。


で、なんで観葉植物が必要なのかと言うと観葉植物はプリモさんの住処兼

寝床になるらしい。

普段、僕が大学にでかけてる時はプリモさんは観葉植物の中に入って眠るらしい。

また観葉植物から栄養も分けてもらっていてその代わりプリモさんは観葉植物に

精気を与えるって、お互いナイスな相互関係にあるらしい。

僕が買ってきたガジュマルとはすこぶる相性がいいらしい。

人間と違って性格の不一致なんてことはないみたいだ。


僕が大学から帰って来るとプリモさんは観葉植物から「お帰りなさいトモミさん」

って出てくる。

で、僕のそばにいて、いろいろおしゃべりをする。

大学が休みの日はプリモさんは朝から僕のそばにいて僕が朝食を食べるのを

プリモさんに見られながらおしゃべりをする。


僕のほうも妖精って不思議な生き物について知りたいことが多々ある。


「プリモさんってなんで缶詰になんか入ってたんですか?」


「そうですね、私って生まれる前は種だったんです・・植物の種と同じですね」

「で、缶詰の中にはたっぷりな栄養が入ってて、その栄養で私は今の人に近い

姿になって行くんです」

「だからトモミさんが缶詰を開けた時はちょうどいい私が熟した時期だったん

です」

「妖精を育てるお仕事はボブゴブリンのギモーヴさんのお役目なんです」


「そうなんですね・・・ギモーヴさんはプリモさんが成長した時期だって分かって

たから僕に缶詰をプレゼントしてくれたんですね」


「そうだと思います」


「どうやらギモーヴさんは、僕がひとぼっちでいて話し相手がいないから可哀想だ

って思ってプリモさんを僕の家に寄越したみたいですよ」


「トモミさんはひとちぼっちなんですか?」


「そうなんです、大学に行けば友人がいるので話もしますけど、家の帰るとね」

「僕以外誰もいませんからね・・・家の中はシーンと静まり返ってますし・・・」

「だから音がしたりするとびっくりしたりするんです」


「そうなんですね、もしかしたらお屋敷が古そうですからポルターガイスト

かもしれませんよ」


「プリモさん、怖いこと言わないでくださいよ」


「あはは、大丈夫ですよ・・・私が毎日トモミさんのお話相手になってさし

あげますから、もう寂しくないですよ」


「そうですね・・・これから毎日プリモさんと話ができますね」


「あの、ひとつ疑問なんですけど・・・」


「疑問?なんですか?」


「はい・・・プリモさんって、ずっとそのくらいの大きさなんですか?」


「小さいですか?」


「いや、もしかしてプリモさんがフローリングの上にいたりして僕がうっかり

プリモさんを踏んづけちゃったりしないか心配で・・・」


「そうですね、踏んづけられちゃうと困りますね」


「じゃ〜大きくなりましょうか?」


「え?なれるんですか?大きくなんか・・・」


「なれますよ・・・見ててくださいね」


そう言うとプリモさんは風船が膨らむみたいに僕と同じくらいまでスーッて

大きくなった。


「驚きました・・・でもそのほうがいいです」

「そのほうが等身大で話せますから・・・」


「はい・・・こうしてトモミさんと並ぶとまるでカップルみたいですね、私たち」


僕はいきなり自分に彼女ができたみたいな錯覚を覚えた。

プリモさんが大きくなったことでより妖精が僕に近い存在になった気がした。


つづく。

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妖精の缶詰。☆ 一千一夜物語 ☆ 猫野 尻尾 @amanotenshi

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