妖精の缶詰。☆ 一千一夜物語 ☆

第3話：妖精プリモピアット。

「あ、薬を飲む前に・・・」

「いいものをやろう・・・さっきの腹痛の薬のお礼だ」

そう言うとおじさんは一個の缶詰を持って来て僕に手渡した。

「なんの缶詰ですか？ラベルもなにも貼ってないですけど？」

「その缶詰の中になにが入ってるかはこのさい教えん」

「向こうに帰ったら楽しみにその缶詰を開けてみれば分かるわい」

「なんですかそれ？怖いですね〜」

「これだけ言っておいてやる・・・向こうに帰ったら観葉植物をひと鉢買え」

「それから缶詰を開けろ」

「たぶん・・・もう友実（ともみ）は孤独じゃなくなるからな」

「女にモテない友実（ともみ）にわしからの細やかなプレセント・・・」

「缶詰開けたら、煙が黙々出てきて僕は年寄りになったりして・・・」

「な、わけなかろう・・・さ、これで準備よし・・・さあ薬を飲め」

僕は覚悟を決めてコップの中の臭い汁を一気に飲み干した。

「もう来るなよ・・・」

ってギモーヴさんの声が全部聞き取れないうちに僕は目の前が真っ暗になった。

で、気がついたその場所は・・・僕の屋敷の書斎だった。

「どうやら帰って来れたみたいだ・・・」

薬を飲み干したコップとギモーヴさんがプレゼントしてくれた缶詰を落とすこと

なくしっかり手に持っていた。

しばらく放心状態で、さっきまで自分に起こったことは夢だったんじゃないか

って思った。

でも間違いない、僕はさっきまで異世界にいたんだ。

で、僕は帰ったばかりのその足でギモーヴさんが言ったとおりホームセンターへ

観葉植物を買いに行った。

たくさんある中で一番育てやすい観葉植物のガジュマルを選んだ。

精霊キムジナーが宿っていて縁起がいいとされている植物。

まあ、現実精霊なんて宿ってないんだけどね・・・。

気根と呼ばれる根っこが特徴的でどのサイズでも個体差のあるビジュアルを

楽しむことができる・・・だから書斎の窓際に置いておけばいい癒しになって

くれるだろう・・・。

だから迷うわずガジュマルをひと鉢買って帰った。

館に着くと気になっていたギモーヴさんからもらった缶詰を開けてみることにした。

なにが入ってるのかワクワクする・・・そんなの開けずにはいられないだろ？

缶詰は最近の缶詰と同じで缶切りがいらないイージーオープンだった。

でさっそく僕は恐る恐る缶詰を開けた。

そしたら中に、丸まって、まるで母親のお腹の中の赤ちゃんみたいな？

ものが？・・・赤ちゃん？が横にくるまった形で入っていた。

「なんだ、これ？・・・あ、赤ちゃん？」

「こんなの、どうしたらいんだろう？・・・缶詰だからまさか食べろってわけ

じゃないだろ？」

「赤ちゃんだぞ・・・僕に育てろってこと？・・・まじで？」

そうしたら、缶詰の中の赤ちゃんらしき物体が動いた。

上半身を起こすと背伸びして大あくびをしてブルブルって武者震いをした。

そしてまわりを見渡してから、おもむろに僕の顔を見た。

「おはようございます・・・缶詰を開けたのは、あなた？・・・」

「そうですけど・・・」

「私、妖精のプリモピアット・・・それが私の名前です」

「プリモって呼んでください、おニイさん」

「プリモ？・・・え？妖精さん？」

「そうですよ・・・おニイさんは？」

「おニイさんはお名前、なんて言うんですか？」

ボブゴブリンさんのギモーヴさんから貰った缶詰の中身はなんと妖精だったのだ。

つづく。