妖精の缶詰。☆ 一千一夜物語 ☆

第2話：魔法の薬。

「ところで、おニイさんどんなドジ踏んでこっちに来たの？」

そこで僕は、よせばいいのに僕の個人的情報となにが起こってここに来たのか

を、その怪しげなボブゴブリンさんに話して聞かせた。

「なるほどね、気の毒・・・事故も気の毒だけど・・・」

「女にモテないってのは男として致命的だな・・・人生半分以上損してるぞ」

「かっこ悪い話ですけど・・・モテたいっていつも思ってます」

「家にいるときは、ひとりなので話相手がいたらいいなって・・・」

「わしはひとりのほうが気楽でいいけどな」

「おニイさんが望むなら・・・あ・・・あ、あ」

「来た、来た、来た・・・」

「あ・・・ちょっと待った・・・あたたたた」

「う〜・・・・痛い・・・く、苦しい・・・・！！」

そう言ってボブゴブリンさんのギモーヴさんは、そこにうずくまってしまった。

「えっ？急にどうしたんですか？・・痛いって？どこか悪いんですか？」

「悪いね、今朝からなんとなく兆しはあったもんで・・・じゃから前もって

薬を作っておこうと思ってたんじゃが・・・もしかしたら食中毒かもしれん」

「食中毒？・・・え〜・・・」

「あ、そうだ俺のカバンの中に胃腸薬入ってるからそれ飲んでみます？」

「胃腸薬？・・・ってなんだ？」

「食中毒やお腹の調子が悪い時に飲めばよくなるんです」

「大丈夫ですから、僕もよくお腹が痛くなるから常備してるんです」

「カットバンや傷を負った時の塗り薬とかと一緒に・・・」

「薬の調合ならわしだって得意じゃ」

「その体じゃ調合するのは無理でしょ・・・それよりこの薬よく効きます飲んで

ください・・・」

ってことでギモーヴさんに胃腸薬を飲ませてあげた。

「悪いね・・・わしはこの山で幼い妖精たちを育てて暮らしてるんだ」

「その代わり妖精たちから少しづつ寿命を分けてもたっとるんじゃ」

「妖精なんているんですか？」

「いるよ・・・可愛い妖精がな・・・」

しばらくすると僕の薬のおかげかどうか分からないけどギモーヴはすっかり元気になった。

「今、飲んだ薬まだありますから、ここに置いておきますからね」

「もしまたお腹が痛くなったら飲んでください」

「いらんよ・・・さっきも言ったが薬ならわしも調合できるで・・・」

「でもおニイさんのおかげでウソみたいにすっきりしたよ、あんたのおかげだな」

「わしはちょっとした魔法が使えるで腹痛を治してくれたお礼にあんたが今一番

望んでること叶えてやるよ」

「そんなこと出来るんですか？」

「ああ、出来るよ？わしも多少の魔法使いでもあるからな」

「じゃ〜できたら僕は自分の世界に帰りたいです」

「ここいてもたぶん生きて行けそうにないんで・・・」

「そう言うと思ったよ」

「じゃ〜お望み通り帰してやるかな」

そう言うとおじさんはなにやらフラスコとか鍋とかいろいろ引っ張り出してきた。

ガスコンロみたいなものに火をつけると水を入れた鍋をかけて、草やら野菜やら見たことないものをバカスカ鍋に入れて煮始めた・・・闇鍋みたいだ。

「うん、これでよし・・・入れ忘れはないな・・・」

「なに作ってるんですか・・・・すごい臭いですけど・・・」

「魔法の薬じゃよ・・・友実（ともみ）・・・おまえをおまえの世界に帰すためのな・・・」

ギモーヴさんは煮え切った鍋の中の汁をすくい取るとこれまた汚いコップにその汁を

注いだ。

「熱いからな・・・ふ〜ふ〜して飲め・・・不味くても残すなよ」

そう言ってギモーヴは僕にコップを渡した。

「これ飲むんですか？」

「飲まんとおまえの世界には帰れんぞ」

つづく。