蘇生

セシルはゆっくりと目を開ける。



彼女の目に映った光景は、死体、死体、死体ーー。



「ひぃ、うっそ......」



セシルは思わず、声をあげてしまう。



「死んでない?」




セシルは腹部に目を向ける。



異形どもに切り裂かれた腹が完全に塞がっていた。



セシルは辺りに視線を向ける。



壁の内側は、完全な廃墟となっていた。そして転がるのは無数の死体。


そして微かな異形生物バリアントの死体。




「なんで私は死んでない? どうして、どうして!?」



セシルはパニック状態になるが、壁の外側の光景を見て頭が真っ白になった。




何故なら、無数の異形生物バリアント群れが、国の奥深くに向かって隊列をなしていたからだ。




その先の方角はセシルの実家がある王都がある。


家族が危ないーーセシルはそれを理解する。



パニック状態でその考えに至ってしまった結果、セシルは城壁の上から飛び降りてしまう。



足からぐちゃりと落下する。


肉が崩れた足から白い骨が露出する。




「痛っ......くない?」



しかしセシルが痛みを感じることはなかった。



沸々と泡を立てて、傷口が塞がっていく。




「何これ?」



セシルは困惑の余り、急に冷静さを取り戻す。



ものの数秒程度で傷口は完全に塞がってしまった。



「ほんとに、なんなのこれっ!?」



セシルは未だに何が起こったのかすらわからない。


一体何が起こっているのだろうか。




それだけじゃない。



異形生物バリアント達は、セシルに目もくれず、王都の方に歩みを進めていた。



本来この怪物達は人間を知覚次第、狂ったかのように襲ってくる。



なのに、セシルには興味すら示さないのだ。



「本当になんなの、なんなのっ!!」



セシルは異形生物バリアント達を掻き分けて、王都の方へと駆け出した。

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腐敗の魔女〜終末世界の渡り旅 @coco8958

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