エピローグ 見合う二人 その四

 平野平親子が猪の肉で食事をして、その数時間後。



 大抵の人間が、布団やベットに入って夢の世界に入っている時間。



 星ノ宮市の地下にある秘密の部屋。


 大抵の人間なら見過ごすドアから入り迷路のような地下通路を抜け、特定の暗唱番号と指紋、虹彩認証を経て入れる特別な部屋。


 その先の部屋には狙撃場や本格的スポーツジムさながらのトレーニングマシーンを置いてある部屋、銃を整備するための工房、ガンロッカー……


 もちろん、シャワールームやコインランドリーなども併設してある。


 裏社会で生きる男たちに与えられた訓練の場であり、憩いの場所でもある。



 その中でも異彩を放つ部屋がある。


 ただ、コンクリートが打ちっぱなしの部屋。


 他に装飾類などはない。


 十六畳ほどの部屋だ。


 ただ、天井からぶら下がった裸電球が下を照らしている。



 そこに上半身裸の男が二人。


 一人はポー・スポークスマン。


 もう一人は石動肇。


 二人とも無駄のない引き締まった筋肉をしている。


 息は荒く、体にはいくつかの赤い線があるが、これは血ではなく手に持ったナイフ形のゴムの刃先につけた人畜無害のパウダーである。


 こすり落とすことはできないが、水を当てればすぐに流れ落ちる。


 ついさっきまで目にもとまらぬ攻防戦をしていたのか、荒い息をしているが、お互い、にんまりと笑った。

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