エピローグ 見合う二人 その三
「ごちそうさまでした」
二人は綺麗に食べ終え、片付け、食後のお茶と煙草を楽しんでいた。
秋水はピース、正行はマルボロを吸う。
「なあ、親父」
ガラスの灰皿に灰を落として正行は問うた。
「何?」
「石動さんから聞いたんだけど、親父と母さんは時々会っているの?」
その言葉を聞いた瞬間、秋水が飲んでいたお茶が逆流しそうになった。
--石動の野郎……
愛弟子であり親友であり、相棒がニヤニヤするのが容易に想像できた。
問題は何処まで知っているかだ。
まさか、『密会して性行為をしています』などと言おうものなら恋愛経験すらほぼゼロに等しい正行は混乱する。
正行自身は将来の進路や大学でのトラブルで母親に相談に乗ってもらっている。
母は企業の社長だし、そういう視点で色々アドバイスをする。
これはあくまで「親と子の関係」だ。
秋水と綾子の関係は複雑極まりない。
秋水は自分が裏社会で生きる人間である以上、周囲に不幸を撒き辛す人間だと思っている。
だが、綾子は「秋水が世界で一番好き」と公言する。
「……そりゃ、おめぇ。親だぜ、子供は心配じゃねぇか?」
そういいながら秋水は色々な言い訳を考える。
「ふうぅん……」
正行は一服する。
それ以上の追及はなかった。
たぶん、石動も確たる証拠はないのだろう。
女と男との微妙関係は当分正行には分からないだろう。
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