エピローグ 見合う二人 その二
秋水と正行はてきぱきと牡丹鍋の用意を始めた。
秋水が内心感心するのは、大抵の子供や女性、中には男性もいるが野生の害獣を駆除した肉を見て嫌悪感や罪悪感にかられるが、正行は「この肉を美味しく食べたい」と言って差し出してきた。
何でも射殺さえれたイノシシを前にアルバイトの学生、正行も含め、最初何も言えなかった。
その様子を見ながら、硝煙を上げる猟銃を下げた老人が言った。
「人間が作った作物の味を知った動物は、その美味さにどんなことをしても、時には死をかけてもやってくる。だが、俺たちは趣味で作物を食ってない。俺たちも生きるために命を賭けて作物を作る。人間の味を知った熊は人間を襲う……」
白いため息ともつかない息をついて老人は正行たちを見た。
「だから、殺す。そして、大事に食う」
もらった野菜なども切り、シンプルながら牡丹鍋が出来た。
割り下を使わない、関東のすき焼き風で食べる。
鉄板で焼いて醤油と砂糖で味をつけて、卵をほぐした小鉢に入れ、食べる。
--うめぇな
秋水は素直に思う。
正行は……嚙みしめるように咀嚼し、嚥下して、一言だけ言った。
「うめぇなぁ……」
そこから感情は読みとれない。
秋水と同じ感想なのか、それとも、罪悪感との格闘なのか……
二人は黙々と牡丹鍋を食べる。
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