第三話 プロを馬鹿にして喧嘩を売るということ その五

 文字通り伝説レジェンドが目の前にいる。


『霧の巨人』に『暗闇の蝶』。


 ヤクザ連中から時々聞く仇名。


 本当の戦場を駆けまわり、生き延び、戦果を挙げる。



「お、俺……」


 開けた口に素早く銃口が突っ込まれた。


「お前。俺が大事にしている女性に怪我をさせただろ?」


 急に目の前の大男の目と声が怒りに震えた。


「俺たちを狙うのならば、まあ、いい。他の奴を狙っても知らんぷりはできる。でもな、あの女性ひとだけは違う」


 デザートイーグルの引き金に指がかけられる。


 世界最大級の威力を持つハンドガンだ。


 自分たちが3Dプリンターで作ったような玩具ではない。


「お前には、プロを馬鹿にした代価を支払ってもらう……」


--言い訳は許さない


 言葉にせずとも目が脅迫する。



 なぜ、こうなった?


 自分たちは楽しくサバイバルゲームをしていただけだ。


 何故?



 それを秋水たちは察した。


 ポーは一言言った。


「認識が甘い」



 涙目になる鷹森に秋水も続ける。


「日本で何故、人殺しが諸般国に比べて少ないか? それは、日本人のモラルの高さだ。もしも、法律が『殺しがOK』になればお前らボンボンなんぞ殺すことは訳ない。そういう現場を俺たちは見てきた」



 自分たちの愚かさに気が付いたとき、鷹森の意識は落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る