第二話 くやしいけど、ジャンクフードは美味い その五

「精密で……雑?」


 石動が首を傾げる。


「最近、俺の情報屋から聞いた話だが昨今はインターネットの普及とともに三次元立体コピー機……3Dプリンターが出回っている」


 ポーの言葉に好敵手の顔が険しくなる。



 過去に我が国の元首相が街中で白昼堂々と一般市民から銃撃されるという事件が起こった。


 その時、犯人が手にしたのは密輸入した拳銃ではなくインターネットで拾った情報で作った、材料自体はホームセンターでも売っているような粗末なものだった。



 石動はしばらく黙り、その間にポーは立ち上がり台所で食器代わりの鍋と箸を洗った。


 五分もしない。


「闇サイトの作成図をダウンロードして作られた拳銃……ということか?」


「ああ……しかし、雑だ。バリがあるし、素材自体の強度も問題がある……グロック系などは一部強化プラスチックが使われているが、銃身自体は弾丸の発生する熱と圧力で鉄で出来ている」


「……イキがっているガキの仕業……」


 石動の言葉にポーは笑った。


「そうだな……それも、子供の壁の落書きや自転車の自損じゃない……」


 石動は立ち上がった。


「こりゃ、ちょっとIT関係者としても許せんな……お灸をすえないと腹が立つ」


 その言葉をポーは待っていた。


「なら、その話。俺も乗る」


「風邪は、どうした?」


 ガウンの紐を解きながら言った。


「逆療治だ。平和ボケした体に一発活でもいれれば治る」

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