第二話 くやしいけど、ジャンクフードは美味い その三

 風邪を引いて自室に籠っていたとはいえ、ポーは最低限の家事はしていたので家の中は綺麗だ。


「お茶はいいよ」


 石動が客間で腕に下げていたレジ袋から何かを投げてきた。


 反射的に受け取る。


「経口補水液?」


「風邪を引けば汗などで塩分などの電解質が出て、ミネラルや水分が不足する。お茶より効能はあるぜ」


 石動は遠慮なしに客用ソファーに座った。


 最近、石動肇も師匠に似てきた部分が多くなったとポーは思いつつ、これまた、感謝も伝えず開けて飲んでみた。


 正直、味としては好みではない。


 ただ、体は欲していたようで一気飲みをした。


 主人用ソファーに座ると、石動は察したように二本目を出した。


 これもすぐに飲み干す。


 水分などが染みるのが分かる。


 同時に活動を控えていた内臓たちが正常モードになる。


 お腹から、伸縮運動の音がした。


 今日は朝に食パンと水、薬しか胃に入れていない。


 この音にポーは恥ずかしくなった。


 事実、目の前の石動は爆笑した。


「……へえ、君も人間なんだな」


 柔らかい声で石動は言った。


「当たり前だ……要件を早く……」


 依頼を聞こうとして、逆に悪戯心に火が付いた。


「石動肇、お前の飯を食いたい」


 今度は石動が固まった。


「は? 飯?」


「作らなければ俺は依頼を受けない。冷蔵庫の中に多少なり材料があるから使え」

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